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中小企業のDX推進とは?メリットや進め方を解説

デジタル化が急速に進展する現代社会において、企業経営においても革新的な変化が求められています。特に、中小企業は大企業と比べリソースが限られているため、効率的かつ有効なITソリューションを利用して事業展開することが求められます。その鍵となるのが「DX(Digital Transformation)」です。

この記事では、中小企業がDX推進することのメリットや進め方について詳しく解説していきます。技術革新の波についていくための一歩として、ぜひご参考にしていただけますと幸いです。

DX戦略とは

デジタル・トランスフォーメーション(DX)は、企業のビジネスを新たなステージへと進化させる戦略の一つです。これはデジタル技術の活用を通じて、業務効率の向上や経営戦略の高速化を達成し、企業の競争優位性を構築します。しかし、DX戦略の実装は、単に新技術の導入だけでなく、新たな文化や思考方式の創造、組織体制や商習慣の改革など、全体的な見直しを必要とします。

経済産業省の「DXレポート2」によれば、「デジタイゼーション」、「デジタライゼーション」、「デジタルトランスフォーメーション」の3つの段階がDXの進行に存在し、効果的なDXはこれらすべてを包含するべきとされています。ただし、それらの段階は必ずしも順序立てて検討するものではないと説明されています。

デジタイゼーションとデジタライゼーションのプロセス無しに、最上位段階であるデジタルトランスフォーメーション、すなわちビジネスモデルの進化や競争力強化の実現は極めて困難です。したがって、アナログ情報がまだ混在している企業にとっては、この二つのプロセスを最優先の課題として取り組むべきであり、その対応がDX戦略の成功につながります。

中小企業にDX戦略が必要な理由とは

中小企業のDXの取り組みが必要な理由とは何でしょうか。詳しく解説します。

制度改正への対応

デジタルトランスフォーメーション(DX)が世界各地で活発化し、中小企業にもその波は押し寄せている現在、DXに遅れを取ることは時代から取り残され、ビジネスの競争力失墜を招く可能性があります。

これに加えて、政府による法制度の改訂もDXを推進する要因となっています。電子帳簿保存法等の改正は、業務のデジタル化を後ろ盾に持ち、こうした変革への対応策を立てることが中小企業に求められています。

新型コロナウイルスの影響によりテレワークやリモートワークが常態化し、働き方も大きく変動してきた今日、業績を維持し、成長を持続させるためにはIT技術やデジタルツールを用いたDXが必要となっています。

あらゆる理由から中小企業もDXは切り離せません。初めての試みに迷いを感じるかもしれませんが、時流に従い、DXに取り組むことで新たなビジネスの道が開けるでしょう。

たとえば、改正電帳法が定める電子データ保存への義務化では、保存方法の見直しとともに、ビジネスプロセスそのものの見直しが必要となり、そうしなければ生産性低下の危険が伴います。また、2023年から導入される「デジタルインボイス」制度では、全ての取引を電子化し、手間やミスを削減するための一例です。

デジタル変革に逆らうと、ビジネスのコンプライアンス上のリスクが増える可能性があります。そのため、電子データ保管が2024年に義務化される前に、企業はビジネスプロセスのデジタル化に取り組むべきです。

人材不足対策

日本の企業が抱える問題として急速に深刻化しつつあるのが、人材不足です。少子高齢化が進む我が国では、2025年には団塊世代が後期高齢者となり、少なくない数の人材が市場から抜けることで、企業の人材不足は今まで以上に深刻化します。

この問題に対しては、「手持ちの人材をどう活用するか、どう生産性を高めるか」を模索する時期です。有能な人材の確保が絶えず困難であり、求職者がテレワーク可能ないしデジタル化が進んだオフィス環境を求めている現状も人材確保の大きな課題となっています。

ここで、中小企業が目を向けるべき手法がDX戦略です。DX戦略は、企業全体の業務をデジタル化し、自動化や最適化を図ることで、指定の人材でも成果を上げる能力を可能にします。さらに、新たなビジネスモデルの構築にもつながる可能性があります。

DX戦略のメリットとは

DX戦略を進めるメリットは以下の点が考えられます。

業務効率化・生産性向上

ひとつは、業務効率化と生産性向上の実現です。

紙ベースや手動の作業をデジタル化することで情報のアクセシビリティが向上し、管理と分析が簡便化されます。また、AIやRPAの活用により、ローティンワークや面倒な事務作業の自動化が可能となり、人間がそれ以上の創造的な業務に注力できます。

その上、DXはデータ分析を通じた意思決定の強化も実現します。ビッグデータを用いた詳細な解析を行うことで、既存の戦略では得られなかった新たな視野と洞察を得ることが可能となり、より洗練された戦略策定や迅速な意思決定が可能となります。

顧客満足度を上げるという観点からもDXはその力を発揮します。進展するオンライン化やデジタル化により、顧客のニーズを直に捉え、それぞれの顧客に最適化されたサービスを提供することができるようになります。

データ収集

経営の現場では、厳しくなる市場競争を勝ち抜く鍵となるのが、素早く正確な現状認識です。しかし、手動でのデータ収集や分析は、時間や手間を消耗し、全くミスがないとは言えません。

デジタル変革(DX)戦略が進行することで、業務全体の情報が自動的に蓄積・一元管理されるようになり、データの迅速な確認や分析が可能となります。手作業では困難だった多角的な観点からの分析も楽に行えるようになり、より即時性と精度の高い経営判断が可能となります。

クラウドやAI、IoTといった技術を活用することにより、大量のデータをリアルタイムで集め、精度を高めて管理することが可能となります。

このようなデータは、製品開発からマーケティング、顧客サービスに至るまで、ビジネスのあらゆるフェーズで活用することが期待できます。

改正法対応の課題を解決

今、企業が直面している様々な問題は、まさに山積しています。改訂される電子記録法、インボイス制度の導入、働き方改革といった法令の改正が引き起こす必須の対応は、どんなに厳しくても進める必要があります。一方で、テレワーク化や無紙化への対応など「いつでもスタートできる」課題は先延ばしになり易い状況です。さらには、実施したメジャーが「浸透しない」「形骸化」などの問題をもたらし、最終的には解決策にたどり着かない事態も頻発しています。

ここで登場するのがDX戦略です。ビジネスプロセスの見直しを含むこの戦略では、法令改正への対応だけでなく、これまで手がつけられなかったペーパーレス化や働き方改革も同時に達成することが可能となります。

人材確保・採用力強化

DX戦略を積極的に推進することにより、業界の専門知識やスキルを持った人材が企業に引き寄せられる効果が期待できます。テクノロジーは日進月歩で進化し続けており、すべての更新を自社だけで管理することは困難です。そのため、最新のテクノロジー情報をキャッチアップできる専門家が不可欠となります。

さらに、DXを主要戦略として掲げている企業は、変革への熱意を持つ優秀な人材から注目を浴びやすくなります。新しいテクノロジーを使用したビジネスモデル構築に熱心な人材からすれば、DXを先導する企業は非常に魅力的な場所となるでしょう。

DXの導入は企業の働き方を変え、業務やコミュニケーションの効率化につながります。これにより、離職率の低下や従業員の満足度向上を実現し、企業の採用力を維持・強化することが可能となります。

高付加価値のビジネスモデル創出がしやすい

DX戦略に取り組むことで、事業者は、ビジネスに即座に取り入れられる形で、各種データを効率的に活用できます。消費者の求めるニーズを素早く把握し、それに対応した商品やサービスを作り上げることが可能になります。そうしたことが一貫して行われれば、業績は向上し、事業は長期にわたり安定します。

DX戦略は、IT技術の進化を背景に、「より価値の高いビジネスモデル」をつくることを可能にします。例えば、Eコマースを活用して、消費者との接点をデジタル上で持つことで、これまでにない質の高いユーザエクスペリエンスを提供し、それにより新たな価値を創造することが可能になります。それは結果として、競争優位性を保つ、または拡大する一助となります。

DX戦略を導入するためには、新しく進展する技術への理解や組織体制の変革、人材の育成など、さまざまな課題を解決しなければなりません。企業はDX戦略を成功させるために、これらの課題を解決する戦略を練り、それを支える組織力を強化しなければなりません。

BCP対策・事業継承

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、情報技術を活用しビジネス運営を革新する戦略であり、日本という災害が頻繁に発生する国では、企業の事業継続計画(BCP)を強化するという重要な役割を担っています。

DXの進行により、ビジネスデータはクラウドに保存され、インターネットの存在によりどこからでも業務を実行することができます。これは自然災害など非常事態が発生しても、社員が安全な位置から業務を持続することを可能にし、企業の生命線であるコア業務が停止するリスクを軽減します。

デジタル化は新たなビジネスモデルの導入や事業の継続を可能にし、経営者の課題である「企業の存続」に対する解決策を提示します。

DXの導入は業務の効率化、人材の確保、そして迅速な経営判断を可能にし、中小企業の生存率を高める一助となります。

DX戦略の進め方とは

DX戦略の進め方については、経済産業省による 「中堅・中小企業向け デジタルガバナンス・コード実戦の手引き」が参考になります。

①自社の課題・ビジョンの明確化

DX戦略の構築を真剣に考えるには、まず自社の課題とビジョンを洗い出すことが不可欠です。その理由は、これらが戦略作りの基石となり、どの方向に進むべきか具体的な道筋を示してくれるからです。

まず初めにすべきことは自社の問題点を特定することです。業績成長が停滞している理由、業界全体で直面している課題、顧客からの要請など、詳細に分析しましょう。現段階では、洞察力を養うために、社内外の情報を最大限に利用することが推奨されます。

次に、自社のビジョンを具体化します。将来の姿や目指すべき地点を描き出し、その達成に必要な要素を検討します。ビジョンが明確なほど、DX戦略の進行方向が鮮明になり、職員の意欲も高まります。

②人材の確保・ツール選定

DXを進めるためには「人材の確保」と「ツールの選定」という2つの要素が欠かせません。中小企業のDX推進においては、第2ステップとしてこれらの要素に取り組むことが重要です。まずは、ITスキルを持つDX人材を採用します。そして、彼らの力を借りて、既に特定した課題を解決するためのツールを選びましょう。

「DX人材の採用に自信がない」「フルタイムの雇用は難しい」という企業にとっては、DXコンサルタントや支援サービスの利用も効果的な手段です。人材を確保した後は、彼らの専門知識と経験を完全に活用し、社内での連携と情報共有を実現することが重要です。

多くのITツールがDXに関与するため、適切なツールの選定は極めて重大な課題です。ツールは、企業のビジョンや目標に適合し、効率的に動作し、ユーザーフレンドリーであるべきです。さらに、異なる部署間やプロジェクト間でツールが適切に統合され、協力的に働くことが必要です。

③データ収集

次に、データ収集の手段を決定します。企業内の構造化データや外部の非構造化データなど、活用できるデータはたくさんあります。その中から、ビジネスにとって最も有意義なデータを選択し、有効に活用することが求められます。

これらのデータは収集後、整理と分析を経てビジネスに役立つ情報へと糖化します。そのプロセスはDX戦略の核心で、複雑に思えるかもしれませんが、着実な進行こそが企業価値向上の鍵となります。

データを収集し、現実に即した利用法を確立するのがこの戦略の第三段階です。収集したデータが現実の状況と一致しているか検証し、従業員の意見を尊重しながら使いやすい運用ルールを決定します。これらのステップを経ることで、デジタルと現実とが一致し、DX戦略は成功することでしょう。

④業務プロセス変更

DXを推進する戦略の中心に立つのが、「業務プロセスの変更」です。DXの核心とは、全ての業務プロセスをデジタル化し、最高の成果を目指して変化を続けることに他なりません。

一つの具体例としては、紙を使って管理していた業務文書をクラウド化し、遠隔地からでも情報が共有できるようにする取り組みを挙げることができます。このような取り組みにより、オフィスに在席しなくても仕事が可能となり、効率と柔軟性が大幅にアップします。

しかし、業務をデジタル化するだけではDXの推進は不十分です。労働スタイル、思考態度、そして企業の文化を変えていくことが必須となります。これには、細かい教育とトレーニングやデータ分析スキルを身につけるための学習、新しい価値観を創造するためのリーダーシップが必要となってきます。

さらに、業務プロセスの改革には企業全体での共有理解と協働が重要となります。このフローが適切に稼働するためには、コミュニケーション能力が最も重要となります。異なる業種、部署、役職に属する全員がDXの目的と目標を把握し、一緒に取り組むことが必要です。

⑤顧客体験の向上

DX戦略において最も重視すべきは顧客体験の向上であり、これは全ての経営者が追求すべき最高の目標です。どのような先進技術を導入しても、それが顧客満足度の上昇に結びつかなければ、DXの真実の目的を達成できないのです。

この目指すべき方向性を見つけ出すためには、まず、手持ちの顧客データを詳細に分析し、顧客の求めているもの、問題点、要望などを明確に理解することです。その理解を基礎として、デジタル化の最適な進行方向を策定しましょう。例えば、モバイルやウェブサイトのユーザーインターフェイスを改良したり、推奨アルゴリズムを最適化したり、チャットボットでの支援を提供したりなどが挙げられます。

続いては、これらの施策が実際に効果を上げているかをフィードバックや分析を通じて確認し、継続的な改善を図っていくことが大切です。そのためにも、CX(Customer Experience:顧客体験)管理ツールなどを活用することをおすすめします。

まとめ

中小企業におけるDX推進に向けた取り組みは、限られたリソースを有効に活用し事業成長を実現する効率的手法です。

情報共有の効率化、業費削減、競争力強化が可能であり、経営者のビジョン明確化、適切な戦略策定、社員教育等、仕組みづくりから始めることが推進の鍵となります。

よくある質問

中小企業DXとは?

中小企業のDXとは、デジタル技術を活用して業務やビジネスモデルを効率化し、変革させる取り組みを指します。

現状では、中小企業の過半数がDXに積極的に取り組んでいないという状況があります。DXは日本全体で進展していますが、中小企業における動きは比較的鈍い傾向にあります。