種類株式とは?意味やメリット・デメリットについて解説
「種類株式」とは、株主に異なる権利を与える2つ以上の株式のことを指します。通常の株式とは異なる権利が存在し、これには配当、残余財産の分配、議決権、株式の売買制限などが含まれます。
一般的に、普通株式は同一の権利が付与されますが、種類株式はそれぞれの株式が異なる特典や制限を持つため、企業や株主にとって重要な意味を持つ概念となります。種類株式は、投資家や企業経営者にとって、株主間の権利や経済的な影響に関する深い理解が求められる分野です。
本記事では、「種類株式」が一体何なのかを徹底解説し、その意味やメリット・デメリットについても詳しくみていきましょう。
種類株式とは
種類株式は、特定の権利または条件に基づいて区分された株式の総称で、通常の株式とは異なる配当や議決権などを含むことが特徴です。これは一般的に「株式」と呼ぶ時に指す普通株式とは異なり、普通株式は全ての株式が等しく一致した権利を持つ一方、種類株式は特別な優先権や制限が付与されています。
種類株式には、仮に特殊な議決権を有するものや無議決権株式などのように、議決権を全く有しないものまで、様々なタイプがあります。企業はこのような種類株式を上手く用いることで、必要に応じて投資家との関係を調整することが可能となります。
種類株式を活用することで、企業は自身の経営戦略に合わせて投資家のリスク許容度を考慮した資本政策をたてることができます。そのため、さまざまなビジネス環境で種類株式は重要な道具となっています。しかし、種類株式設定は企業の価値を大きく左右する部分でもあるため、投資家は投資前に十分に各種の権利を確認し理解することが求められます。
具体的には、種類株式は会社法に基づいて、配当や残余財産の分配、議決権の制限、譲渡制限、取得請求権、取得条項、全部取得条項、拒否権、役員選任権といった9つの特性に分類されます。それぞれが異なる権利を持ち、複数の権利が対象になる場合、または一部が制限または剥奪される場合もあります。
会社法とは、企業の組織や運営に関する規則を定めた法律です。会社法において、株式会社が株式を発行する際、株主間の権利や条件を定めるため、種類株式という概念が認められています。この種類株式は、普通株とは異なる権利を保有することを許容しており、株主間で権利の内容が異なる株式を発行することを可能にしています。会社法により、特定の種類の株式に特権や制限を設けることが認められているのです。
種類株式の目的とは
種類株式の目的について解説します。
投資のハードルを下げる
取得請求権付種類株式は、株式投資を始める際のハードルを下げるだけでなく、投資家自身が自分のポートフォリオを主導する機会を提供します。株主として、所有する取得請求権で該当の種類株式を獲得するように企業に対して請求できるという特性は、初心者のリスク軽減策として活用され、多くの投資家の関心を集めています。
投資の魅力向上
種類株式の目的と投資の魅力向上は深い関連性を持ち、その存在が投資市場の多様性、透明性、公平性の向上に寄与しています。例えば、優先配当や優先残余分配が可能な種類株式は、投資家にとって普通株式と比較して経済的メリットが増すため、投資魅力が増します。また、拒否権や役員選任権を持つ種類株式は、投資家が企業統治に関与できる権利を提供し、その魅力を一層高めます。
経営への影響力維持
一例としては株主総会の議決権が一株一票ではなくある比率で特権が与えられる形を取ることで、経営へ影響を及ぼす可能性のある条件を抑える行為があります。種類株式を活用することで、経営者が戦略的な経営を追求し、それと同時に企業がM&Aという危機からも守られる機会が作られます。
種類株式は主に、特別な議決権や配当利益、残余資産の分配権により経営の影響力を保つ目的で利用されることがあります。
なぜなら、増資すると経営者の持ち分比率が下がります。そして第三者割当増資を行い、議決権を過半数渡した場合には、経営権が奪われる可能性が出てきます。
そこで、経営影響力を保つためには、剰余金の配当や残余財産の分配などの特権を付けた種類株式を発行することが有効だと思われます。
個別の股票価値を提高し、発行株式数を制限するため、優先配当権や優先残余財産分配権などの経済的利益を付与します。
また、議決権の制限が投資家から見て魅力を低下させるため、これと引き換えに「優先配当権」や「優先残余財産分配権」などの経済的利益を付与することが有効とされています。
不本意な株主への対応
株式会社は通常、株主からの助言や相談を求められるとともに、自社の業績や経営方針について説明する責任もあります。しかし、全ての株主が会社の未来に同じ考えを持つわけではありません。特定の株主が短期的な利益を追求し、それに対して経営者が長期的な価値向上を狙う場合、その視点は必ずしも一致しません。
このような不本意な株主に対応するためには種類株式が機能します。たとえば、種類株式では、株式による議決権に差を設け、経営者の立場を強化することが可能です。また、分配権についても差を設けることで、会社の経営方針に沿った株主に利益をより大きく享受させることも可能です。
9つの種類株式とは
この章では、9つの種類株式について詳しく解説します。
剰余金の配当
株主に支払われる配当財産(株式会社が剰余金の配当を行う場合における支払われる財産)の価値を決める方法や、配当支払いの条件、そして配当に関する地位の優劣などが定められているものです。
これにより、他の株式に比べて配当の支払いにおいて優越的な地位が与えられる株式が「優先株式」、通常の地位にある株式が「普通株式」、そして劣後的な地位にある株式が「劣後株式」として知られています。
残余財産の分配
残余財産は会社が清算されたときに株主に分配される財産のことを指します。
普通株式は、優先株式の次に残余財産の分配を受ける資格があります。これにより、企業がうまくいった場合、大きな利益を得る見込みがあります。しかし反面、それはリスクも大きく、たとえば会社の破産といった最悪の状況が発生すると、投資家は出資したすべての金額を失う可能性があるということを意味します。
「普通株式に対して優先して残余財産を分配する」といった規定を設けることで、株主にとって元本回収の可能性を高める利点があります。
議決権の制限
議決権制限株式は、株主総会において、特定の決議への参加を制限するものです。これは、”経営には興味がなく、利益のみを重視したい”という投資家・株主に提供されることがあります。
このような状況では、株主は議決権を放棄する代わりに、高い配当を要求する傾向があります。このため、剰余金の配当優先株式と併せて発行されることが多いです。
無議決権株式も選択肢として存在しますが、その場合でも当該株主は種類株主総会で議決権を行使できます。
公開会社では、議決権制限株式が全株式の半数を超えると、即座に全株式数を半分以下にする措置を取らなければなりません。一方、非公開会社では、このような制限が存在せず、1株の議決権があれば、他の株式はすべて無議決権株式とすることができます。
譲渡制限
譲渡制限株式とは、その名の通り、株主が自由に株式を他者へ移譲することが一定の制限が加えられた株式を指します。その目的は、会社の経営権を確保し、内部の株取引による経営の混乱を避けるためです。ケースによりますが、株主総会や取締役会、代表取締役の許可がなければ、譲渡が認められない方式もあります。
譲渡制限付株式のもう一つの特徴として、一定期間保有した後に制限が解除されるケースが見られます。しかし、その期間や条件は注意深く配慮する必要があります。
譲渡制限付株式は投資の選択肢としては注意が必要ですが、会社が乗っ取りを防げるため、会社にとっては有利な点もあります。全体の理解を深めるためには、必要な知識となるでしょう。このように、各種の株式を理解することで、より洗練された投資戦略を練ることが可能となります。
取得請求権
「取得請求権」は、投資家が株式発行者に対して株式の取得を要求する権利を指す言葉です。
この権利は、通常、IPO(新規公開企業)の時点や増資の瞬間に特殊な株式と共に明らかにされることが一般的です。
取得請求権は、新たな投資を引き付けるための貴重な手段として投資家によって利用されます。
逆に、会社側から見るとこれは新たな資金調達手段となる一方で、それによって会社は株の取引を拒否することなく、定められた対価(普通株式、社債、新株予約権、その他のタイプの種類株式など)を株主に提供しなければなりません。
取得請求権を持つ株式は、不適切な投資家から自社の株式が渡るのを防ぐ一方で、もし株主が株式を放出したいと考えた場合でも、企業が株式の買い取りを保証できる効果があります。
これにより、投資者が投資の門戸を堅く閉ざすこれまでの問題を解決し、活動的な株式市場を形成することが期待できます。
取得条項
特定の条件が発生した場合、例えば株式を公開したとか、株主が死亡したなど、会社が株式を強制的に買い取ることができる規定がある株式です。
この取引は、株主の同意を得る必要はありませんが、会社は株式を買い戻す際に株主に対して対価を支払わなければなりません。
全部取得条項
株主総会の特別決議によって、会社が株主の保有する全ての株式を取得可能な規定があります。会社は、株主に対し、対価として金銭や株式を提供することもあります(または対価なしで取得することも可能です)。
全部取得条項付株式は、少数株主の排除や100%減資、敵対的買収からの防御などに使われる手法の一つです。
拒否権
「拒否権」は非常に強力な権力を持つため、「黄金株」などとも称されることがあります。
拒否権は、名前からも分かるように、特定の事項を否決できる権限を意味します。これが関連するのは、株主総会や取締役会での意思決定時で、極端な場合この権利を預かる株主は、一株でも持っていれば大きな影響力を発揮できます。
主に、株式の譲渡や企業の方向性に関する決定等を拒否することも可能で、これにより、株主の意見が企業経営に反映されます。また敵対的な買収を防ぐ役割を果たしたり、経営者が退任した後も影響力を維持することも可能になります。
役員選任権
役員選任権は所定数以上の株式を保有する株主が企業の経営に直に関与できるという特権です。これにより、役員選任や退任など主要な経営決定に関する投票が可能となり、その結果企業の方向性や戦術について、直接影響を及ぼすことが可能となります。
このように、役員選任権付きの種類株式は、企業経営の根本的な部分に直接触れたい投資家や、彼ら自身のビジネス戦略を大きく左右させたい経営者たちにとって、とても魅力的です。
しかしながら、役員選任権付き株式の発行は公開会社や委員会を設けている企業では許可されていません。なぜなら、こうした権限がある訳ですから、広範囲の投資家が利益を得られる公開会社でこれを設けてしまうと、全体の株主が不利益を被りかねないからです。そのため、この特殊な株式は非公開であり委員会の設置がない企業だけが、発行できる制限があります。
種類株式のメリットとは
ここでは種類株式を発行することによるメリットを確認しましょう。
資金調達のしやすさ
株式の増資を通じて新規出資を募る際、投資家や既存株主による資金供給は必ずしも順調に進行するわけではありません。そのような状況において、資金調達の困難さを克服できる重要な手段として、種類株式を活用することが注目されています。
種類株式はその名称が示すように、異なる「種類」の株式を指し、その利用は企業にとって大きな利点をもたらします。一例として、普通株式よりも優先的に利益配当を受け取れるような権利を設けた種類株式の存在は、出資者にとって大きな経済的魅力を与えることができます。
さらに、重大な企業判断への投票権や役員選出の権限を含む種類株式を発行することにより、出資者は企業の経営に直接参画できる機会を得ることが可能です。
経営の自由度の確保
種類株式を活用することで、各種類の株式に独特の権利を設けることが可能になります。これにより、投資家の様々な要求に対する対応が容易になるとともに、強い意思を持つ株主へ特別な措置を与えつつも、経営の主導権を保持する助けとなります。
特に、事業拡大による資本調達が必要な企業や、株式公開(IPO)準備中の企業にとって、種類株式は大きな助けとなるでしょう。主な投資者に特別な権利を付与することで、経営への影響力を妥協せずに必要な資金を得ることが可能となります。
また、種類株式は、株価の変動による経営安定性の問題や、株主間での意見の対立を防ぐ手段となることで、経営の自由序を保つ重要なキーとなります。
種類株式のデメリットとは
種類株式の取扱いにおける課題点について詳しく取り扱います。この株式は、その権利が特定の投資家に限定されているものを指します。
最初の問題点はその流動性に乏しいことです。一般的に、種類株式は公に取引されることが少なく、市場では手に入れ難い存在となっています。この事から、これらの株式を売買しようとすると、取引自体が成り立つのが困難であり、必要な時に素早く流通させるのが一筋縄ではいかないのです。
二番目に挙げられる課題としては、発行者による株式の取扱いにより投資家が不利益を被る可能性があることです。ここでは、投資家にとって条件が不利益となるような状況が設定され得る事を意味しています。
最後に、種類株式には投票権が与えられないものも存在します。これは、会社の重要な意思決定に対して投資家が意見を述べることができず、マネージメントに対する影響力が弱まり、会社の方向性に問題を感じても改善を要求することが難しいという問題を示しています。
このように、種類株式は特権を得られる一方で、一定のリスクも伴います。投資に際しては、以上の課題を確認し、慎重な決定を下すことが肝要です。
種類株式の発行手続きとは
種類株式の発行には、会社の定款の変更が不可欠です。この変更は株主総会の特別決議が必要で、出席株主の3分の2以上の賛成が求められます。
定款には、種類株式の内容や発行可能な種類株式の総数を定める必要があります。株主総会での特別決議後は、内容を法務局に登録するための変更登記を行います。
普通株式から種類株式への変更には、種類株式に関する適切な手続きが必要です。変更の際は、事前に内容を確認し、手続きを進めることが重要です。
まとめ
種類株式は、企業が特定の目的や条件を設定し発行する株式です。投資家に対し、特別な権利を与えることで企業の資金調達や企業政策の遂行を目指します。メリットとしては、割安で投資できるケースがありますが、デメリットとしては複雑な構造やリスクを理解しなければならない点が挙げられます。
よくある質問
種類株式とは?
種類株式は、株主が保有する株式の権利内容が異なる複数の種類の株式を指します。 通常、株主は保有する株式数に応じて同じ権利を持ちますが、会社法には特定の条件や範囲内で、権利の内容が異なる複数の種類の株式を発行することを認めている例外規定があります。
種類株式と普通株式の違いは何ですか?
普通株式とは一般的に「株式」として知られ、各株式の権利内容が同等で均一に設定されています。これに対して、種類株式は配当、残余財産の分配、議決権、譲渡などにおいて特典(優先権)または制限が設定されている点が普通株式と異なります。
種類株式の具体例は?
種類株式は、普通株式とは異なる権利を持つ株式のことです。例えば、剰余金の配当が優先される株式や、株主総会における議決権が制限される株式などが種類株式の一例です。これらの株式は、その特定の権利に基づいて異なる扱いを受けることがありますが、同じ種類の株主間では平等に取り扱われることが原則です。
種類株を発行するメリットは?
種類株を発行することによる利点は、資金調達が容易になる点です。優先株式の場合、優先権を保持することができるため、特定の投資家からの人気が高く、その結果として株価が上昇します。そのため、優先株式を発行することで、株式の発行数を少なく抑えつつも、多くの資金を調達できる利点があります。
種類株式 どこに書いてある?
種類株式の内容は、企業の登記簿に記録されています。具体的には、「発行可能な種類株式総数」と「各種類の株式の内容」が詳細に記載されています。
種類株式の導入方法は?
種類株式を発行するには、まず企業の定款を変更しなければなりません。この変更は株主総会の特別決議が不可欠です。特別決議を成立させるには、出席した株主の3分の2以上が賛成する必要があります。また、定款には種類株式の内容と発行可能な総数を具体的に記載することが必要です。
種類株式は平等ですか?
種類株式は株主平等の原則から逸脱する特例であり、法律上は同じ種類の株式の中で異なる取り扱いを設定することが可能です。ただし、同じ種類の株式内で個別に別の条件を設けることはできません。つまり、種類株式は株主平等の原則から外れた例外として扱われます。