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ティール組織とは?次世代組織の特徴や必要な要素

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現代の瞬く間に進化するビジネス環境では、従来の組織体制だけでは対応しきれない問題が顕在化してきています。その中でも、これからの組織運営の在り方を示す一つの新たな形として、”ティール組織”という考え方が確固たる地位を築きつつあります。

その特徴とは一体何か、また次世代組織としてのティール組織で必要となる要素は何か。この記事ではティール組織に焦点を当てることで、その本質を解き明かし、未来の組織運営を見据える手引きとしたいと思います。

ティール組織とは

ティール組織とは、フレデリック・ラルー著「未来の組織」で提唱された概念で、従来の階層型、中心周観型の組織スタイルとは異なる形態を提案しています。この組織形態は、一つの生命体として組織を理解し、全員がリーダーの立場で自らの直感や感情に基づいて自己決定をすることを特徴としています。固定の役割や職位といったコンセプトは存在せず、その代わりに全体が一緒になって進化する目的を実現することに焦点を合わせます。

ティール組織は、その柔軟性から多くのビジネスリーダーに注目され、特に変化の早い市場環境に対応するための新たな組織形態として考えられています。情報の透明性と部署の枠組みのなさが創造性を引き出し、組織全体の能力を引き上げると言われています。

だからと言って、これは容易に導入できるものではありません。ヒエラルキーによる上下関係がないため、個々の意識と能力が大きく問われます。また、持続的な運営には全員が共通の価値観を持つことが必要となり、高い意識が求められます。

特に新興企業やIT技術を活用する企業で導入が試みられているものの、本格的な実現には組織文化の大規模な変革が求められます。しかし、挑戦し、その可能性について実感する組織は増えつつあります。ティール組織は確かに挑戦は大きいものの、その報酬も大きい可能性を秘めています。

ティール組織の概念が生まれたきっかけとは

フレデリック・ラルーによる卓越した著書「ティール組織(原題:Reinventing Organizations)」の出版により、「ティール組織」の概念が大衆化されました。長らくビジネス界の主流であった伝統的な階層型組織や目標達成型組織を超越し、ティール組織は自己組織化と進化的目的を追求した組織形態として提示されています。ラルーのこの画期的な概念は、各種組織の生産性、創造性、継続性への問い直しから生まれました。

マッキンゼーで10年以上にわたり組織変革プロジェクトに従事した経験を持つラルーは、世界中の巧みで独特な組織モデルを探求した結果、「ティール組織」の概念を紹介しました。ここで言及する「ティール組織」は、トップダウン型の指導原則を放棄し、自己組織化されたチームを組織全体の意思決定プロセスに参加させる新たな組織の形態を描いています。従来組織管理法の弱点であるコミュニケーションの不足や、個々人の能力活用の問題を解決する新しい次元の組織理論として脚光を浴びました。「ティール組織」は、現代の組織が求められる進化への挑戦となり得るでしょう。

ティール組織の特徴とは

「進化」を意味するティール組織とは、伝統的な上意下達型の管理体制に依存せずに、全員が自発的に進化を続けていく組織のことです。

この組織では、特定の権威が存在せず、メンバー個々が自身の役割と環境の規則を理解し、状況に応じて意思決定を行うことが重んじられます。それは、ティール組織が提示する現代の企業環境での組織運営の新たなモデルの一環といえるでしょう。

急激に進歩するIT技術やグローバル化により、ビジネス環境は素早い変遷を続けています。従来の硬直的な組織ベースのモデルでは対処できない問題も出てきました。階層型のコミュニケーションや一方向性のプロセス、定期的なミーティング、そして上意下達型の管理方式への依存から解放され、より効率的、迅速に動ける組織形態が求められています。

ティール組織は、このような時代背景から生まれた新しい組織運営の理念であり、顧客ニーズに応じて即座に反応し進化可能な供給体制を提供することができます。

ティール組織とホラクラシーの関係とは

「ティール組織」と「ホラクラシー」は、従来の経済社会の組織運営法とは趣を異にし、新たな働き方を模索する、先進的な組織理論の二つの象徴といえます。

「ティール組織」はフレデリック・ラルーという経済学者の提唱により誕生した組織の形態で、「分権化された権力」や「本能に基づく活動」を重視しています。具体的な補足をすると、階層型の組織構造を動きにくいと捉え、職場を活性化するために自己組織化チームが整備され、難題を共同で解決していく作りになっています。

それと対を為す「ホラクラシー」は、組織心理学者の説に基づき、旧来のピラミッド構造を否定し、権利と義務を明確に分級して、全員が自立して操作できる体制を推奨しています。表面的には無秩序に映るかもしれませんが、論理的なルールや職責範囲が確立されているため、誰がどこで何を担っているのかを把握しやすいエコシステムが築かれています。

その意味で、「ティール組織」も「ホラクラシー」も、自己組織化に方向を転換する組織理論と言えます。規範的な監督と統制から逃れ、前進的な働き方を提供することに注力しているのです。したがって、「ティール組織=ホラクラシー」であると断じることは適切ではなく、ホラクラシーはティール組織を具体化した一形態と位置づけられます。

ティール組織と他の組織とは

ティール組織は、そのモデルを進化過程ごとに区別しています。ティール組織とその他の組織をご紹介します。

レッド(衝動型)の組織とは

赤の組織は組織モデルの中で最も原始的な形態と言えます。一つの強力な指導者が支配者となり、組織のメンバーを力と心理的な恐怖で結びつけています。

この組織は主に即座の利益を重視しており、中長期的な目標に向けて計画的に行動するよりも、短絡的で衝動的な行動によって即座の利益を求める傾向があります。

アンバー(順応型)の組織とは

「アンバー(順応型)組織」は、階層型の組織構造を有する組織で、「アンバー」は琥珀色を表す言葉です。これは、この組織が安定して価値を保持し、変化しづらい様子を象徴しています。この型の組織では、体系的な階級や規則が設けられ、上下関係に厳格さが求められます。そのため、メンバーは自己の所属する地位と役割に沿った活動を最優先とします。

上位者からの明瞭な命令に従い、よく定められた規則に基づいて行動することで、組織全体が安定して運用されます。この型の組織には軍隊や宗教集団、伝統的大企業が該当します。

しかしながら、順序立てられた枠組みが強調されるため、新規の意見や提案を採り入れ難い一面があり、時代の流れや激しい競争状況に対する適応性に欠けることもあります。

オレンジ(達成型)の組織とは

「オレンジ(達成型)の組織」とは、目指す目標を最優先する組織を指すとされますが、この組織本体の特性とは何でしょうか。

まず、オレンジ(達成型)の組織の特性としては、目標追求の不断のエネルギーが生命に直接つながります。それは売り上げ目標の充足、新商品の創出、イノベーションなビジネスモデルの設計など、業績向上や成長に寄与する目標集中です。これらの目標実現に向けた全員一丸となる活動が求められます。

また、効率性はオレンジ(達成型)の組織の特性ともいえます。目標を追求するのに重要なのは、方法と結果のバランスであり、達成すべき目標に対して最適な手段を分析し、判断し、そして迅速に決定する能力が求められます。

さらに、各メンバーの自己啓発意識が高いのも特性といえます。成果やパフォーマンスに基づく評価制度があり、それに連動したインセンティブ制度が設けられています。これにより、メンバー各々が自己スキル向上を目指し、組織全体の成長を牽引しています。

しかし、一方でその組織の文化には、無駄の排除と極限までの効率性追求により高負荷の職場や競争激化など、労働問題を引き起こす可能性も共存しています。

グリーン(多元型)の組織とは

グリーン(多元型)の組織は、伝統的な利益追求を優先する企業体制から一歩進み、社会利益との調和を築く先進的な組織形態を指します。

この組織では、社会や環境に対する企業活動の影響を深く認識し、その活動が人間と自然が元気に共生する社会へとつながるよう探求します。従って、「多元型」という名前が示す通り、多角的な観点から企業活動を行います。

この組織の特徴は、短期的な利益追求を超越して、地球全体を視野に入れた持続可能なビジネスを遂行することです。

そして、その中心には、事業そのものが社会に対して何らかの価値をもたらし、未来への持続性に貢献するという思想があります。

ティール(進化型)の組織とは

ティール組織とは、職場全体が平等であることを特徴とします。その名の通り、碧色のように安定と進化を併せ持つ新しい組織形態として評価されています。

従来の青組織が結果や効率を追求したのに対して、ティール組織では、従業員一人ひとりの自己追求と組織の目指す方向への貢献、その両方をバランスよく叶えようとする考え方です。

ティール組織とは、簡潔に言えば’自立、協同、進化’の三つを主要な特性とする、新しい仕組みの組織です。

最大の特徴は、働く場において従業員個々が自らの意義感を深め、それによって仕事に取り組む状態を促進し、同時に伝統的な上下関係や権限による秩序ではなく、必要にたいして適応的なロール(役割)による制度を導入している点です。

そして、もう一つの視点として’組織は生きている’という考え方から来ています。組織に参画する全員が、組織が求めている方向性を察知し、それに対して自ら積極的に行動するのが理想です。

これにより、働きがいの増加、創造力の発展、そして組織が持続的に成長することを目指しています。このような先進的な組織形態を持つティール組織は、今後ますます注目されていくでしょう。

ティール組織の3つの要素とは

ティール組織の3つの要素についてご紹介します。

エボリューショナリーパーパス

これは「存在理由」として表現されます。組織全体の目的や存在理由をメンバーが共有し、理解し、追求することが重要です。なお、ティール組織においては、存在理由は環境の変化に適応して進化する傾向があります。

ホールネス

ティール組織の核心となる概念である’ホールネス’は、全体性という意味を持っています。これは、単に個々の要素としてではなく、全体の一部として各人の役割を捉えるという新たな視点を提供しています。

各メンバーは、自分らしさを尊重され、自己の能力や才能をフラットな関係の中で活かすことが求められます。

この組織では、個々のメンバーが安心して自己の存在感を示せ、才能が公正に評価される環境が保たれていると認識することが肝要です。この認識は、多様性を認め、否定することなく心理的安全性を確保することで生まれます。

こうした環境は、組織の目標とメンバー自身の自己実現が一致する可能性を高めます。

これこそが、持続可能で創造的な組織を築く上で重要な鍵とされ、同時にメンバーが自己成長を追求しつつ、組織全体の発展を促進する行動を選択し続ける理由となります。

セルフマネジメント

セルフマネジメントとは、従来の階層的な指導体系を取り除き、全員がひとりのリーダーとして振る舞う理念です。全員が決定権を持ち、各自が自己の仕事を自己管理することにより、組織全体の有効性が向上し、各個人の創造力と責任感を引き出すこと可能にします。

ここでは、従来のトップダウン型の指示性から離れ、ボトムアップのアプローチを採用します。それは組織全体に自律性をもたらし、自発的な選択と行動を促します。大人数の組織には困難を伴うかもしれませんが、そのポテンシャルは無限大です。

自分自身を適切に管理できるメンバーが集まる自主経営は、組織が直面する複雑な問題に対する多様で柔軟な解決策を見つけるための鍵となります。

ティール組織は、この理論を円熟させ、一人一人が自分の役割を理解し、自己組織化させることで、組織全体の生産力と満足度を引き上げることを目指しています。

経営者と各メンバーは相互に信頼関係を確立し、それぞれが自主性をもとに考えることで革新を促進します。

日本企業とティール組織の関係性とは

ラルー氏が提唱したティール組織の概念は、日本国内でも注目を浴びています。これには、多くの日本企業が直面している組織課題も関わっています。

オレンジ組織中心の日本社会とは

特に日本のIT業界を中心に、従来の上下関係が厳格で一方通行の指示が主流のピラミッド型組織に対する代替案として、オレンジ組織は急速に注目を集めています。

その理由は、従業員からの活発なフィードバックを許容し、より前向きな組織風土を生み出す努力が求められているからです。

オレンジ組織は、従業員の自主性を尊重し、あらゆるレベルの従業員に対して組織の成長に貢献するための機会を提供します。

これは、組織の全体的な生産性を向上させると同時に、従業員の満足度向上にもつながるとされています。このオレンジ組織の採用とその役割は、現代社会の瞬時に変化するニーズにおいて、日本企業に新たな展開の可能性を提示しています。

それにもかかわらず、このオレンジ組織の取り組みは、従業員の過重労働や人間らしさの喪失の問題、働き方への対応が求められている現在のビジネス環境では、新しいアイデアの不足につながるとも指摘されています。さらに、「働き方改革」の波が高まる中で、オレンジ組織モデルの限界を感じ始める企業も出始めています。

日本国内においても、従業員の自由度と創造性を重視する「ティール組織」への関心が高まっています。

ティール組織への関心の旺盛さは、その多面性と柔軟性からくる新たな組織モデルへの可能性を探求する日本企業の現状を反映しています。

ティール組織の事例とは

ティール組織となった具体的な事例について確認しておきましょう。

オズビジョン社

次に紹介するのは、「ハピタス」を提供する株式会社オズビジョン。彼らの組織は、自己組織化と平等な関係性を根本に据えた新しい形の「ティール組織」と呼ばれ、その一環で「ホールネス」を追求しています。この試みは『ティール組織』という書籍にも取り上げられるほど注目を集めています。

オズビジョンの基本信念は「幸福を追求するため、個々が自己実現する集団でありたい」というもの。その考えに基づくのが代表取締役の鈴木氏の哲学で、企業はただの利潤を追求するだけでなく、個々の「働く目的」を実現する場所であるべきという点に重きを置いています。

そのため、彼らの組織形成の取り組みは、従業員が自己意識を重視した考え方をすること、そして、皆が自己成長や自己実現を追求する環境を作り出すことに力を注いでいます。

これはマズローの欲求5段階説に大きな影響を受けています。人が生物的な欲求を満たした後、安全性や社会的承認、そして自己実現といったさらなる欲求を追い求めていくとする理論です。

現代社会では、より多くの人々が「自己実現を求める」という欲求を持っていることから、オズビジョン社はそれを達成する手段として、全員がオープンに自身を表し、自由に活動できる組織づくりに注力しているのです。

ザ・モーニング・スター・カンパニー

ザ・モーニング・スター・カンパニーは、カリフォルニア州に本社を構えるトマト加工の世界最大手企業で、全米におけるケチャップやトマトソースのマーケットシェアを30%以上確保しています。その成功の裏には、ティール組織による独特なマネジメント体系が存在しています。

一般的な企業とは異なり、ザ・モーニング・スター・カンパニーでは全ての従業員が自身の職務を自律的に行い、それぞれがマネージャーの役割を果たしています。肩書きや昇進制度はなく、全員が決裁権をもち、給与や報酬は個々の労働者自身が決定します。また、会社全体で合意した文書は全員が共有し、各スタッフの報酬は他のスタッフによって評価されるという独自の体系を持っています。

従業員一人ひとりが自主的に経営を行い、企業の資金を自由に運用できるこの組織では、各人の意思決定プロセスには助言が必要とされ、セルフマネジメントが推奨されています。その結果として、パフォーマンスの向上と従業員満足度の向上を両立しており、業績は業界平均の2倍以上に到達し、また従業員の離職率も極めて低いという報告もあります。

まとめ

ティール組織は自己組織化であり、インスピレーションに基づく決定、エンパワーメントされた役割とタスク分担、そして全員がリーダーとなる体制が特徴。これにより、持続可能かつ革新的な組織運営を可能とし、次世代組織の一翼を担うでしょう。

よくある質問

ティール組織とはどういう組織ですか?

ティール組織は、上意下達型の指示系統や厳格なマネジメントがなくても、目的に向かって自律的に進化し続ける組織の形態です。 この組織形態では権力者が存在せず、従業員は自身の役割や環境のルールを理解し、状況に応じて柔軟かつ独自に意思決定ができることが大きな特徴とされています。

ティール組織の特徴は?

ティール組織の最終段階では、「組織を一つの生命体」として捉え、組織全体を社長や株主の所有物ではなく、生命体として従業員が共有し、目的を実現するために協力し合って進化することが特徴です。 従業員は独自のルールに基づいて組織を共同で運営し、目的の達成に向けて相互に関わり合っています。

ティール組織の欠点は何ですか?

ティール組織の欠点としては、業務フローの大半が従業員個人に委ねられるため、マネジメントが難しいという点が挙げられます。このデメリットを克服するためには、一定の間隔でコミュニケーションの機会を設け、進捗管理の仕組みを確立することが重要です。

オレンジ組織とティール組織の違いは何ですか?

オレンジ組織とティール組織の主な違いは2つあります。まず、ティール組織には社長や上司からの指示系統が存在しない一方、オレンジ組織では結果を出した上司からの指示系統が存在します。そして、ティール組織では結果の有無に関わらず、社員の主体性を尊重する「ホールネス」の考え方が根底にあります。

ティール組織は難しいですか?

ティール組織には、組織の進むべき方向や具体的な目標を確立することが難しいという課題が存在します。この難しさは、ティール組織が従業員が自己組織化されているため、経営者やマネージャーが指示や命令を発する機会が減ることに起因しています。その結果、組織全体で方針に一貫性が欠ける可能性があるとされています。

ティール組織には役職はありますか?

ティール組織では、上司と部下の関係が存在せず、自律分散型の組織です。役職や会議が存在せず、メンバーは助言を得ることはできますが、最終的な意思決定は各自が行います。

ティール組織のメリット・デメリットは?

ティール組織の長所と短所 ティール組織は、従業員のエンゲージメントや生産性向上といった利点がありますが、一方で意思決定に時間がかかり、組織の一体感が不足するといった弱点も存在します。