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取締役会の役割とは?決議事項や報告事項などの基本を分かりやすく紹介

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ビジネスの世界には、組織体の運営を円滑に行うために存在する重要な役職や構造が数多くあります。中でも取締役会は、企業の舵を握る重大な役割を果たしています。しかし、「取締役会が何をするのか」、「決議事項や報告事項とは具体的に何か」など、理解するのは難しいかもしれません。そこで今回は、取締役会の役割と関連する決議事項や報告事項について、初心者でも理解できるように分かりやすく解説します。

取締役会とは?

取締役会というは、全ての取締役から構成される、会社の財務状況や方向性を決定する機関です。会社法に基づいて運営され、その決定内容は会社の業績、従業員の状況、そして事業の進行方向に大きな影響を与えます。

たとえば、新規投資案の検討や重要な人事変更の決議など、重要事項については定期的に開催される取締役会で議論されます。これらの決議は会社の将来に深く関係しており、法規制を遵守し、妥当な経営判断がなされているかが常に監視されています。

会社法の362条によると、取締役会の設置は基本的に各会社の自由とされていますが、公開会社や監査役会設置会社は取締役会を設立しなければなりません(会社法326条2項、327条1項)。そして、取締役会を設置する際には、3人以上の取締役が必要とされています(会社法331条5項)。

取締役会の招集は、通常は会社法や企業の定款(会社の規則書)に基づき、会社の社長や会長、取締役会事務局などが行います。招集に際しては、日時、場所、議題などが明示される招集通知が取締役会のメンバーに送られます。

取締役会の招集通知によって取締役会メンバーは会議に出席するための情報を得ることができ、会議が適切に進行される基盤が整います。取締役会を招集することは、会社経営に関する重要な意思決定が行われる場である取締役会を適切に運営することが可能となります。

株主総会との違い

株主総会は年に一度開催され、企業の最高経営意思決定体であるとされています。会社を保有する株主たちが集まり、経営層を選び、年度末の監査報告に同意し、取締役の報酬を設定します。

取締役会と株主総会、二つの共通点は、企業の方向性を定めるという役割があることですが、取締役会はより頻繁に開かれ、経営に日々関与するのに対して、株主総会は年に一度の大きな決定を下すのが役割です。

取締役会を設置するかどうかは会社の自由で、設置が義務付けられているのは一部の公開会社など特定のケースに限ります(会社法326条2項、327条)。取締役会を設置している会社を「取締役会設置会社」、設置していない会社を「取締役会非設置会社」と呼びます。これらの理解は、企業の経営システムを理解するうえで、欠かせない知識となるでしょう。

取締役会の決議

取締役会の中心的な役割は、経営方針の策定、戦略の組み立て、重要な事業計画の決定といった、会社の進行方向や運営に関わる決定事項の議論と定義です。「取締役会の決議」というのは、このような事項が記録されています。

取締役会の決議とは法的に見ても重要で、会社法369条1項では以下の2つの要素を満たすものとされています。

  1. 決議に参加することができる取締役の過半数の出席(定足数の要件)
  2. 出席した取締役の過半数の賛成(賛成数の要件)

もっと厳格な規定を設けるためには、設立章程によりこれらの基準を高く設定することも可能です(会社法369条1項かっこ書)。ただし、特別な利害関係を持つ取締役は、この決議から除外されます(会社法369条2項)。

これらの取締役会の決議は、会社のビジョンや戦略、事業方針を具体的に作り上げていく主幹プロジェクトとも言えます。また、企業のステークホルダー、特に株主への明確な経営方針を説明する一つの手段でもあります。

決議事項と報告事項の違い

取締役会における権限と役割は大別して、決議事項と報告事項から成り立ちます。

決議事項とは取締役会で総意を形成し決定を下すべき重要な項目を指します。中心的な企業方針の決定や事業活動における大きな投資、役員の任命・解任といった業務が含まれます。これらは個々の取締役が自身の判断で決定するものではなく、会社法の規定に基づき取締役会全体で議論し決奏する必要があります。

一方で、報告事項は取締役が取締役会に提供する情報のことを示します。これには企業の財務状況、業績予想の見通し、リスク管理における問題点等が含まれ、これらは次の会議のための参考資料や議論の土台となります。

報告事項は主に代表取締役や業務執行取締役が担当します。報告が行われない場合、損害賠償責任を問われる可能性もあります。また、取締役会も3ヶ月に1回以上開催することが定められています。

決議と承認の違い

取締役会において、決議と承認は異なる意味を持ちます。

決議は取締役会が独自で行うことができる判断や決定を指します。取締役会のメンバーが集まり、議論の上で決定を下し、企業の戦略や重要な事項に関する決定を行います。

一方で、承認は取締役会が決定した事項を株主総会に提示し、株主総会がそれを評価・認可するプロセスを指します。取締役会が決定した事項は、株主総会による承認がなければ正式な決定とはなりません。株主総会は企業の株主が集まり、経営陣の提案や決定に対する承認や意見交換を行います。

取締役会の権限とは

取締役会の存在により、決定権が異なります。取締役会を設けていない会社では、株主総会や取締役、または代表取締役が全ての意思決定を行います。

しかし、取締役会が存在する場合、株主総会の承認を要さない重要事項の意思決定権も取締役会が有します。取締役会は経営戦略の策定、業務運営の監督、そして役員の任命もしくは解任等の広範囲な決定を担当します。例としては、大規模な事業投資や新たな事業展開など、会社の行く末を左右する重大決定が挙げられ、これらは取締役会の許可を得ることが必要です。

また、取締役が自身の決議によりリスクを犯すような事項(例:取締役の給与)や、法律遵守を確保する取り決め等も重要な課題です。

取締役会には役員の任期があり、任期を通じて経営の責任を全うする役目もあります。しかし、中途で経営不振が明らかになった場合などには、取締役会により解任の手続きが行われます。

最後に、取締役会の権限には制約が存在します。これらには法規制が含まれ、会社の運営を確実にする企業統治や各種法規制があります。適正な会社運営のためには、これらの制約や規則を遵守することが求められます。

一般法定決議事項とは

一般法定決議事項は、企業経営における重要かつ基本的な事項について、株主総会において議決が必要とされる項目を指します。具体的には、以下のような要件がこれに該当します。

  1. 業務執行の決定(1号)
  2. 取締役の職務執行の監督(2号)
  3. 代表取締役の選定および解職(3号)

これらの議題は、株主利益の保護や事業透明性の確保に欠かせない要素であり、企業の運営方針や経営管理体制の形成において基盤となる決議事項です。

株主総会における一般法定決議事項の承認は、基本的に出席した株主の多数決によるものとなっています。ただし、特別決議事項と比較すると、そのために必要とされる賛同票はより少ない数に設定されています。また、企業の規模や構造により、一般法定決議事項の具体的な内容は異なります。

重要な財産の処分および譲受け

一般法定決議事項のひとつに「重要な財産の処分および譲受」があります。これは企業の存続そのものに直結する極めて大切な課題であり、会社法により厳密に規定されています。

「重要な財産」とは、会社を支える無形・有形の資産を指します。不動産や設備、そして特許や商標といった知的財産全般を含んでいます。

また、「処分」や「譲受」についても決して狭い意味では捉えられません。売却だけでなく賃貸や取り壊しなどの形での処分、受け入れに際しては不動産や知的財産権の取得だけでなく、賃借や技術導入なども可能です。

多額の借財

「一般法定決議事項」は、会社の特別決議を除く、あらゆる決議事項を含みます。その中には、会社が大きな借入れを行う際も含まれ、株主や出資者たちの同意を必要とします。

このような多額の借金は、会社の財政状態に大きな影響を及ぼすことが一般的に認識されています。

多額の借入れは、会社が予期せぬ経済的難問に見舞われるリスクを増強します。したがって、大きな借入れをするときは、それが会社の持続可能性や利益性にどのように影響するのかを正しく理解し、株主にきちんと説明する必要があります。

また、大きな借金をする具体的な理由、そしてそれがどのように会社の価値を増すのかを明確にすることも重要です。会社の借入れは、その先の繁栄への投資の可能性もあるため、その方針と全体的な戦略を株主に理解してもらうことが重要です。

支配人その他の重要な使用人の選任および解任

「一般法定決議事項」の要素として、「支配人及びそれ以外の重要な使用人の選任及び解任」が挙げられます。

具体的には、「支配人」は会社の運営における重要な職務を担当し、事業活動に対し業務管理及び職務執行に関する大きな影響力を有します。その役割は幅広く、企業の運営全体に影響を与えるため、その選任や解任については株主の判断で行われます。

さらに、「重要な使用人」の表現は、「支配人」以外の主要な部門の管理者や役員などの社員を指し、重要な役職につく役員の選定から、大きな政策を決定する高級役員の人事までを含みます。

これらの人事決定は、事業運営に大きな影響を及ぼす会社経営の重要な構成要素であり、全体の株主の意思決定が求められます。

支店その他の重要な組織の設置・変更・廃止

新しい事業の立ち上げや事業方針の方向性の転換、または事業赤字化や経済の後退等の外部環境の変動に対応するために、会社は新たに支店を開設したり、既存の組織体制を変えたり、あるいはもはや必要性のない支店や組織を解体する必要が出てきます。これらの決定は、会社の財務状況、業界環境や資源配置の最適化に深く影響し、そのため関係各方面からの意見が重視され、多様な視点からの議論が積み重ねられることが望まれます。そこで、株主総会や取締役会といった組織が、これらの重要な議題について詳しく審議し、最終決定を下すことが求められます。これが「一般法定決議事項」の本質です。

この「重要な組織」とは、支店と同様に重要とされる部署(例えば事業部門)や議会(例えば経営層の会議)などを指します。

募集社債に関する重要事な事項

募集社債は企業が集資の一つの途として活用するもので、設定された金利で長期的に借金を組む形になります。この社債の発行や金利設定は重大な経営判断であり、企業の財政状況、信用性へ大きな影響を及ぼします。そのため、社債発行には通常、取締役会や株主総会の承認が必要となります。

企業の経営陣や株主、ステークホルダーにとってそれらの事項に対する透明性は最も重要な考慮事項になります。

具体的には、会社法施行規則99条1項により、以下の詳細が定められています。

  • 2以上の募集にかかる募集事項を取締役に委任する際は、その旨(1号)
  • 総額の上限(2号)
  • 利率の上限、利率に関する事項の要綱(3号)
  • 払込金額の総額の最低金額、払込金額に関する事項の要綱(4号)

内部統制システムの整備に関する事項

一般法定決議事項の一部として内部統制システムの整備が挙げられます。これは会社法362条4項6号により、「内部統制システム」と定義され、会社の業務が法令に即して適正に行われることを確保するための基本フレームワークとなっています。

内部統制システムの整備は、企業の健全な運営を維持し続けるための必須項目であり、企業の業績向上や信用度向上にも直結します。このため、取締役会の重要な決議事項とされ、会社法施行規則100条1項に基づいて明確に規定されています。

具体的には、情報の保存・管理体制、損失の危険管理体制、業務の効率化を確保する体制、法令及び定款に基づく働き手の業務実施体制、グループ全体の業務適正化体制などが含まれます。さらに、監査役の有無に応じて、報告体制や監査効果確保体制も配置されます。

定款の定めに基づく役員などの責任免除

一般法定決議事項には、役職者の選任や監査役の任命など、企業の運営に不可欠な事項を含みます。また、「定款で定められた役員等の任務怠慢責任の(一部)免除」も、一般法定決議事項の一部として位置づけられています(会社法362条4項7号)。

役員等が定款や法律に逆らった行為を行った場合、その行為に対する法的な責任を免除することができます。その理由としては、役員が企業を最善の確信で運営していたにもかかわらず、後にその判断が誤りであったとされ法的な責任を問われてしまった場合、企業の自由な経営が制約され、結果的に企業の発展を阻害することとなるからです。

ただし、全ての違反行為に対してこの責任免除が適用されるわけではありません。重大な腐敗や故意による非法行為に対しては、原則として責任免除を認めないことがほとんどです。この措置は、役員の権限の悪用を防止し、株主の利益を保護するためのものです。

その他の重要な業務執行

一般法定決議事項の中には「その他の重要な業務執行」という部分も存在しています。これは、会社運営において重要であると認識されるものの、特定の法的規定が存在しない項目を指します。具体的には、大規模な投資や事業再編など、会社の財政やビジネスモデルへ大きなインパクトを与える決定が該当します。

「その他の重要な業務執行」の有用性は、企業経営の透明性と信頼性の維持によります。全ての関係者が適切な情報に基づいた決定を下すことで、企業の健全な発展を支援します。ビジネス運営ではたとえ小さな決定でも大きな結果を生み出す可能性があるため、慎重かつ確実な意思決定が必要とされます。そして、「その他の重要な業務執行」はそのための基本的な仕組みの一つとなります。

取締役会を設置するメリット・デメリット

取締役会を設置するメリット・デメリットについて見ていきます。

メリット

取締役会を設置することが及ぼす利点は幅広いものがあります。第一に、株主総会を開く必要なく会社運営に関する決定ができる点が挙げられます。これは、取締役が企業ガバナンスを通じて会社の監督と指導を行うという役割をになっている結果です。これにより、経営者の私的利益を抑えつつ、企業の価値向上を可能とします。

加えて、意思決定の迅速化と効率化も主な利点です。取締役会は会社の経営方針や大きな決定を行う場であり、全役員が集まって意見を出し合うことで、多面的な視点から事態を考察し、素早い意思決定を可能にします。

更に、取締役会の存在は投資家やビジネスパートナー間での信頼を生むことに貢献します。取締役会の存在は、企業の透明性を高め、内部制御体制を強化します。これは、中小企業や同族が株の50%以上を保有する同族会社でも有効で、社外からの信頼を得られます。

デメリット

取締役会の設ける経営体制は一見、公平で組織的な印象を外部に与えますが、全てが利益だけではありません。デメリットについて考察してみましょう。

まず一つとして、運用面での課題が考えられます。取締役会は数人の役員によって構成されており、企業の決定事項は全員の合意を必要とします。その結果、意思決定に時間を要する場合があり、ビジネスの現場で求められるスピーディな判断とは相いれないかもしれません。

次に、費用面のデメリットが挙げられます。取締役にはその役職に見合った報酬が支払われ、これは企業の費用となります。さらに定期的な取締役会の開催には会議運営費も需要となり、一部の企業にとっては重要なコストでもあります。

最後に、企業の秘密が漏えいするリスクも存在します。役員間の情報共有が多くなればなるほど、情報の管理が難しくなります。

取締役会では議事録の作成も必要であり、その運用には労力と時間が必要です。更に定時株主総会の開催に際しては、監査報告書などの必要な計算書類の作成も求められます。

まとめ

取締役会は組織の舵取り役であり、会社運営の根幹を担います。その具体的な職務は、企業の方向性を示す決議事項の設定や、運営状況を明示する報告事項の提出です。これらによって組織の透明性が保たれ、スムーズな事業運営が実現されます。

よくある質問

取締役会 決議事項とは?

取締役会が決議する内容とは、会社の運営や経営に関わる多岐にわたる事柄を指します。取締役会においては、株主総会で決定する事項以外の全ての企業活動について決定(決議)することが可能です(会社法295条2項・3項に基づく)。

取締役会の決議要件は?

取締役会における決議のための基本的なルールは、過半数の議決権を持つ役員が出席して投票が行われ、その出席した役員の過半数が賛成することで決議が成立するというものです。これらのルールは、企業法により定義され、会社の適切な運営及び従業員の権利を守ります。

取締役会を設置している企業が6人以上の取締役を有し、その中に少なくとも1人の社外取締役がいる場合、特別取締役の任命が可能となります。