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クリティカル・シンキングとは?意味や身に付ける方法について解説

現代の社会は、多様な情報があふれるデジタル時代とも言えます。

その中で、情報をただ受け取るだけでなく、自ら判断して分析する力、すなわちクリティカル・シンキング(批判的思考)が注目されています。しかし、「クリティカル・シンキング」の具体的な意味や身につける方法が明瞭ではない方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、必須とも言えるスキル「クリティカル・シンキング」について、詳細に解説していきます。

クリティカル・シンキングとは?

近年、ビジネス界ではクリティカル・シンキングが注目されています。クリティカル・シンキング(批判的思考)とは、“ネガティブな指摘”をするように思われがちですが、それは間違いです。「本当にこれが正しいのか?」を問い、物事を洞察する思考スキルを表しています。

ここで一例を挙げて考えてみましょう。

もし「顧客からの電話窓口への不満が増えており、このままでは顧客満足度が下がってしまう。だから、電話窓口担当者の教育が求められる」という意見が出た場合、一見それは合理的な考えに思えますよね。しかし、本当にその主張が適切なのでしょうか?

こんな疑問を投げかけることができます。「この意見が増えたというのは、どのほどの期間、どれくらいの数の意見を基にしているのか?過去と比較して本当に増えているのか?」

要するに、「クレームが増えている」と断定するための根拠は何か、增えているとは何を基にしていうのかといった点を批判的に見つめ、自身の結論を導き出す力こそが「クリティカル・シンキング」の正体です。

クリティカル・シンキングが必要な理由

クリティカル・シンキング(批判的思考)とは、私たちが情報に触れる時における判断力であり、これが欠けていると個々の価値が失われると言っても過言ではありません。

個々の経験や知識が豊富であるほど、その人は評価され、その情報にアクセスすることさえも容易ではありませんでした。時代の流れがゆっくりとしていたため、長い時間をかけて積み上げた経験や知識を活用して問題を解決すればよかったのです。

しかし現代は、予測が難しく状況が激しく変化する「VUCA時代」に生きています。これまで経験したことのない「未知の問題」が増え、経験や知識だけで対処できた「既知の問題」の存在が減少しています。

そうした「未知の問題」に対する対策として必要なのが、クリティカル・シンキングなのです。

ロジカル・シンキングとクリティカル・シンキングとの違い

ロジカル・シンキング(論理的思考)とクリティカル・シンキング(批判的思考)、2つの違いについて見ていきましょう。

「ロジカル・シンキング(論理的思考)」は、情報を整理し、その流れに論理性をもたせ、結論を導き出す力です。

ロジカル・シンキングでは結論の正しさよりも推論のプロセスや論理の一貫性が重要視され、それが根拠と結びついているか、どうやって情報が繋がっているのかをはっきりさせることが求められます。

ロジカルシンキングの思考法を駆使することで、他者を説得する力が上がると言われています。

一方、「クリティカルシンキング(批判的思考)」は、情報を批判的に評価し、解析するスキルです。

自分の意見や認識を客観的に見つめる力も求められ、それが妥当なものかどうかを判断します。情報に対して疑問を持つことで、より正確な判断を下すことができます。

クリティカル・シンキングを実践するメリット

クリティカルシンキング(批判的思考)を実践するメリットを5つご紹介します。

事実に基づいた判断がしやすい

情報過多の現代社会では、情報を適切に処理することが極めて重要となってきます。しかし、与えられる情報の一部には誤りや偏見が含まれていることがしばしばあります。

クリティカルシンキングを用いれば、多様な情報源から得たデータを横断的に比較し、事実と見解や主張を区別することができるようになります。

矛盾点の発見

現代社会では、膨大な情報が氾濫し、時と場所、解釈によってその真偽が揺れ動くことも珍しくありません。

一見矛盾しないように見える情報の中にも、深く掘り下げると見落とされがちな思想の歪みや事実と異なる描写を見つけ出すことが可能です。このようなクリティカルシンキングの力を身につけることで、矛盾した要素を発見し、真実を追求することができます。

また、会議や討論の場で発言する際にも有効です。他の人の意見や提案に隠された矛盾を見つけ出し、それを根拠に議論を進めることにより、より深い議論が行え、チーム全体の意思決定の質を高めることにつながります。

リスク回避

絶えず変動する各種の状況において、クリティカル・シンキングが高める適応能力は至って重要です。どの情報元が精確で信頼できるかを見抜くことで、危機を予測し、適切な手立てを講ずることが可能になります。

クリティカル・シンキングは組織全体のリスク管理能力の向上に対しても間接的に寄与します。全員が対面する問題だけではなく、全体の戦略や広い視野を持つことで、リスクを分散し、効果的に管理することが可能になります。

コミュニケーションの推進

クリティカルシンキングの一つの大きな利点は、コミュニケーションの水準に変革をもたらすことです。

クリティカル・シンキングにより、人々の言葉を自身の思考だけでなく、客観的・論理的に見る能力が鍛えられます。

その結果、誤解や意見のそり違いを効率的に避け、他人の視点をより深く理解することができます。

クリティカル・シンキングは自己表現力を向上させる助けでもあります。自身の視点をただ単に押し付けるのではなく、自分の意見を論理的に主張する力を身につけます。

これにより、討論に深みをもたらし、コミュニケーションにより広範で有意義な対話が生まれる可能性が高まります。

新たなアイデアが生まれる可能性

批判的思考、あるいはクリティカルシンキングを駆使すると、既存の視点を越えた全く新しい観点で考えることが可能となり、次々と新しいアイデアが生まれるきっかけをつかむことができます。こういった革新的な発想が誕生すると、新たなビジネス機会を開花させる可能性すら秘めています。

情報や事象について各々自己の判断で考え、評価し、それを理解する力を得ることができます。これが結果として、新たな思考法やアイデアの創出に結びつくのです。文書作成能力やコミュニケーションスキルの向上、そして多角的な視野を持つことが可能となり、これは個々の成長にも貢献します。

クリティカル・シンキングの習得方法

ここでは、クリティカルシンキングを身につける方法を解説します。

第三者視線の意識

第三者視点を意識することは、クリティカルシンキングを養う上で極めて重要です。これにより新たな学びや理解が得られ、合理的な意思決定力が養われます。

例えば、自分が作った資料を第三者視点で見直すと、主観的な視点で見ていた時と比較して、見方に違いが出ることがあります。「これは上手く作れた」と自分自身で評価していたものが、「実はもっと改良できるのでは」と見える時があります。

これを習慣化すれば、先入観を疑い、クリティカルシンキングを習得しやすくなります。

事実を基に発言する

情報と接触したとき、その情報が真実かどうかをまず確認するのが重要です。新聞や書籍、インターネットなど、多岐にわたる情報源から得た情報を、批判的な眼差しで見つつ、事実かどうかの判断を自分自身で行うのです。

この事実を基に自身の意見を形成します。意見を持つことは大切ですが、その裏付けが事実に基づいていなければ、他人が理解するのは困難であり、自己の意見を他者に伝える場合でも事実を明かすことで説得力を増すことができます。

正しい情報を集める習慣をつける

情報は、インターネットや書籍など、私たちの周囲に溢れています。しかしそれら全てが真実であるわけでは無いので、裏書きやニューズとして提供される情報が本当に信ぴょう性があるのかを見極める力が必要です。

情報源が信頼可能なものであるかを確認し、それを理解・解釈するリテラシー力を養うことは重要です。また情報を一方的な視点ではなく、多面的に理解することで自身の認識を深めることができます。

研修の実施

スキルの習得方法の1つが、特定の研修を導入することです。研修は、実際の事例を用いて論理的な思考や問題解決、意思決定の技術を系統立てて習うためのもので、議論の形式を取ったワークショップを通じて自分の観点を表現し、他の人の意見を考察する事で相互理解を進めます。

無論、このスキルは一回で完全に身につくようなものではありません。研修で得たスキルを実際の仕事や日常生活、学習に応用し、絶えず手入れをしていく事が求められます。

クリティカル・シンキングの実践方法

ここでは、クリティカルシンキングを実践するための方法をご紹介します。

①目的の決定

目標が明確でないと、どの情報が必要でどの情報を切り離すべきか決められません。目的が具体的で実現可能性が証明されたものであれば、その後の情報の分析はより明確で効果的になります。

たとえば、新しいビジネスプランを立案する際、目的が「売上の向上」だったら、その実現のための具体的な戦略や手段に関する情報を積極的に集めます。反対に、目的が「新規市場開拓」なら、まだ開けられていないマーケットや新たな技術に関する情報を探します。

②前提条件が本当に正しいのか分析する

クリティカルシンキングの実践方法の一つは、設定されている前提条件が本当に正しいかを分析することです。これにより、誤った前提条件に基づく判断や意思決定を防ぐことができます。

MECE(相互に排他的で網羅的な)の原則の適用:情報や前提条件を「MECE」の原則に基づいて整理します。この原則は、情報の漏れや重複を防ぎ、論理的な整合性を保つのに役立ちます。MECEの考え方を適用することで、前提条件に矛盾や不足がないかを確認できます。

ロジックツリーの作成:前提条件を明示的に記録し、それらがどのように結びついているかを示すロジックツリーを作成します。ロジックツリーは、前提条件とその間の関連性を視覚的に表現する手法で、どこでエラーや不明確な点が生じているかを特定するのに役立ちます。

また、前提条件を分析する際には以下の2つのポイントに意識を向けることが重要です。

自己認識と偏りの排除:前提条件の分析を行う際、自身の偏りや先入観に気づくことが重要です。客観的かつ公平な分析を行うために、自己認識と偏りを排除する努力を怠らないようにしましょう。

情報の信頼性の確認:前提条件に含まれる情報の信頼性を確認します。信頼性の低い情報や未確認の情報を避け、信頼性の高い情報を使用することが、正確な分析の基本です。

③課題や矛盾点の洗い出し

問題や矛盾点の洗い出しは、まず、全体のコンテクストを理解するために膨大な情報を収集し、その中から相関性を持つキーワードや異なる視点が示されている部分を取り出すことから始まります。得られた情報の各要素が事実であるかを検証し、それらを比較し整理することで差異や矛盾を見つけ出します。

洗い出された問題点や矛盾点は、課題そのものであり、それに対する解答を模索するための新たな視野を提供します。

④問題解決のための行動決定

問題解決に取り組む際に、PDCAサイクル(Plan, Do, Check, Action)を活用すると効果的です。このサイクルでは、計画を立てて実行し、評価とフィードバックを行い、改善に向けた行動を繰り返します。特に、「Check」の段階では情報の評価と他者の意見を考慮し、サイクルを進めることが重要です。

クリティカル・シンキングを鍛えるポイント

クリティカル・シンキングををどのように鍛えるのか、具体的にご紹介します。

前提を疑う力を鍛える

クリティカルシンキングのスキルを磨くために重視すべきは、「前提を問い詰める」能力です。

一見、信憑性がありそうに見える新聞記事やSNSで見掛ける情報がユーザーに鵜呑みにされやすい形に加工されていることがしばしばあります。しかし、真実を見極めるためには、その情報がどう形成され、どう伝えられたのかを理解し、自らが考えて結論を出すことが求められます。

情報を単に受け取るだけでなく、「不明瞭な言葉」を見つけ出し、それが調整されたものであることを認識することが重要です。

不明瞭な言葉とは、「方向性」「強化」など主観性によって定義が変わる言葉や、「多い/少ない」「多忙/閑暇」等の抽象的な程度を示す言葉のことです。このような言葉が含まれている主張や見解を見極める訓練を行うことで、「前提を疑う力」が養われます。

思考の偏りを意識

自分の触れる範囲や思考を広げ、異なる視点から考える人々のアイデアを取り入れることが、深い理解につながるでしょう。

まず自分が持つ先入観や思考の癖、偏りを認識し、その克服を意識的に行なうことが求められます。その試みとして、自分の主張を客観的に試験し、他者との会話を通じて新たな視点を引き入れることが大切です。違った視点と向き合う時、それを否定するのではなく、理解し、受け入れることが大切です。

事実か意見かの見極め

情報を受け取るとき、最初に確認すべきはそのエビデンスと、信頼できる情報源から来ているか否かです。事実とは、検証可能で証拠に基づいている情報を指すのに対し、意見は個々の視点や主観的な解釈を指し、証明するためのデータが必ずしも存在するわけではありません。

例えば、「電車の乗客が昨日より多い」という発言があったとします。もし「昨日に比べて乗客数が〇〇人増えた」というデータを元にした発言なら、それは事実と言えます。しかし、「電車が混んでいる感じがした」という経験を基にした発言であれば、それは意見となります。

それぞれの見分けがつけられるかどうかが、情報が真の知識となるべきものか、それとも偏見や誤情報を適切にフィルタリングするべきものかを判断するために、大変重要となります。

まとめ

「クリティカル・シンキング」は、情報の真偽や価値を自己の判断で判別し、論理的かつ明確に意見を述べる能力のことです。

身に付けるには、情報への深い理解、多角的な視点、周到な分析、粘り強い疑問心が求められます。これらを経験し培っていくことにより、「クリティカル・シンキング」は鍛えられます。「クリティカル・シンキング」は、情報過多の今、自分自身の意見を育てる力として重要なスキルとなります。

よくある質問

クリティカルシンキングを日本語で何といいますか?

クリティカルシンキング(批判的思考)とは、否定的な意図を含むものではなく、「物事の本質を見極め、論理的に思考する」スキルです。このスキルは、情報や意見を受け、取るだけでなく自己の分析、理解、評価に基づいて行動する能力を指します。

クリティカルシンキングの欠点は何ですか?

「クリティカルシンキング(批判的思考)」は重要なスキルである一方、不完全な状況理解、他人の意見を排除するリスクなどの欠点も抱えています。これは時間とエネルギーを必要とし、議論を遅らせる可能性があります。また、過剰なクリティカルシンキングは他人の意見を無視するリスクを伴います。