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MECE(ミーシー)とは?概念や活用方法を詳しく解説

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どんな仕事でも、問題を明確に理解し、それを解決する策を立てるためには、情報を整理し、整理するスキルが不可欠です。その際に役立つメソッドが「MECE(ミーシー)」です。しかし、このMECEという概念は、一部のコンサルティング業界で主に使用されるため、一般的にはなじみが薄いかもしれません。

そこで今回は、このMECEという考え方に焦点を当て、その概念と活用方法を詳しく解説していきます。

MECE(ミーシー)とは

“MECE(ミーシー)”とは、”Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive”の頭文字から成るビジネス用語で、その主な概念は「モレなく、ダブりなく」です。

それぞれの頭文字が示す意味は次の通りです。

Mutually(お互いに)

Exclusive(重複を排除する)

Collectively(全体として)

Exhaustive(抜け漏れがない)

このアプローチは、全体像を把握しながら重複を排除し、抜け漏れのない情報を整理することで、問題解決に効果的なアプローチを見つけ出すための方法論として利用されます。

ロジカルシンキング(論理的思考)とは

ロジカルシンキングは、課題を解くためや判断を行う際に活用される合理的な思考法です。一見難しそうに感じるかもしれませんが、事実を理解し、それらを結びつけて理論的な結論を導き出す考え方の手法を指しています。普段の生活やビジネスシーンでの決断時にも役立ちます。

具体的にいうと、まず最初に問題の本質を把握することがスタートラインとなります。その後、問題解決に繋がる情報を集め、扱いやすい形にまとめます。そして、その情報に基づき、論理に則った最善の解を選びます。

ロジカルシンキングは、伝統的には経営者や専門家たちが自分の能力を高めるために必要とされてきました。その理由は、その思考法がもたらす高い問題解決能力にあります。しかし最近では、ビジネスパーソンや学生、教育現場を含むより広範な人々によってその価値が認識されています。

MECEは、ロジカルシンキングの基本的な枠組みであり、主張と根拠をピラミッド状に重ねていく思考法を包括しています。マッキンゼー出身者のコンサルティングノウハウが書籍化されたことによって、そのシステムを熟知した者には効果的な問題解決法として広く認識され、利用されています。

MECEの重要性とは

MECEの原則は、ビジネス戦略の練り込み時や市場分析、更には様々な業務で大いに役立ちます。抽象的な問題を具体的な行動計画へと導くこの手法は、ビジネスの世界で広く推奨されています。

商品の企画の段階や、プロジェクトの管理、あるいは各種調査の対象を決定する場面においても、「MECE」の考え方が役立ちます。新商品の企画段階では、商品という全体を機能や価格帯といった観点で細分化し、競合商品がない分野を優先的に扱うなどです。このような適切な整理により、新たなアイデアが生まれることも珍しくありません。

営業やマーケティングにおけるMECEの必要性とは

ビジネスの世界では常に多種多様な課題やプロジェクトに取り組んでいるのが通常であり、それらは一つひとつ複雑な構造を持っています。それらをそのまま取り扱うのは難しく、どこから手を付ければ良いか、項目間の重複や見落としがないかといった疑問が頭をよぎることも少なくありません。

そんな複雑さや大量の情報を整理し、豊かな視点で対応するためのアプローチとしてMECEという考え方が存在します。

一つの複雑な課題を小さな部分に細分化し、それぞれが他と重複することなく、もっとも必要な全体像を形成するというアプローチです。

これを活用することにより、営業やマーケティングの課題に対して、情報が乱雑に混在している状態から解放され、全体を客観的に把握することが可能になります。また、何を優先すべきか明確に判断し、重複した業務や見落とした課題へのアプローチも最小限に抑えることができ、効率的に業務を進めることが可能になります。

①アプローチ

MECEで整理する方法には2種類あり、トップダウンアプローチとボトムアップアプローチです。

トップダウンアプローチとは

トップダウンアプローチとは、大きな全体から始めて細部を洗い出す手段を表す言葉です。これは一般的に、システム開発やプロジェクト管理など、大規模かつ複雑な課題に対して利用されます。全体の概観を先に把握した上で、具体的な詳細や実施計画を進めていきます。

具体的な作業過程としては、全体像や大枠の設計を最初に立案し、その後に詳細な設計や実行段階に進むのが一般的です。管理レベルでの全体像の最適化や、問題解決のための優先順位たてもしやすくなるため、いろいろな業界で活用されています。

トップダウンアプローチのメリット・デメリットとは

トップダウンアプローチを活用するメリットとして、まず全体像をはっきりさせることで目指すべき結果を明示しやすくなる点が挙げられます。全体像をもとに部分を細かく分割していく方法は、全体の進行を見失うことなく、各要素が全体にどのように影響するのかを把握しやすくします。加えて、全体を把握することで、問題の発生時にも速やかに対処が可能となります。

しかしながら、デメリットも存在します。全体像の設定に誤りがあった場合、プロジェクトが目的から外れた方向に進むリスクがあります。さらに、全体の流れを優先するあまり、細部への注目が難しくなることがあります。これらはリソースや時間の浪費を引き起こす可能性が存在します。

ボトムアップアプローチとは

ボトムアップアプローチは、細かい部分から全体像を形成するための漸進的な解決策作り方です。困難な問題や複雑なプロジェクトに対する解決策を、小さいパートに細分化し、そのパートごとに取り組むというアプローチ方法です。

ボトムアップアプローチのメリット・デメリットとは

ボトムアップアプローチは、局所的な詳細から全体像を構築する手法です。現場レベルでのアイデアや専門知識を積極的に活用することができ、これにより製品の品質向上や業務の効率化が可能となります。また、スタッフたちは自身の考えが形となり実現する様子を直接目の当たりにすることで、共感や達成感を覚え、働く意欲を高めます。

しかし、このアプローチは全体感を見失いやすい側面も持っています。詳細から全体へと向かうため、各要素が同一の方向を見ているとは限らず、全体の最適化が困難になるケースがあります。全体像が不明瞭になると、各部署間の調整や協力を調節するのが難しくなる可能性もあります。ボトムアップアプローチを適切に運用するには、細かな部分と全体を同時に視野に入れ、必要な時に適切な調整を行う経営力が不可欠となります。

②切り口

MECEにはポイントとなる切り口が4つあります。

要素分解

MECEの主要な理論は「要素の分解」です。これは、一つの大きな問題を各々の小さな部分やタスクに分け、各個別の項目を具体的に検討し解決することで、全体の理解と解決を図る理念です。

MECEの指針の鍵となる特徴は二つあります。一つ目は、各要素間に重複が存在しないこと、すなわち「相互排他性」を保つことです。二つ目は、全体を網羅すること、つまり「集合的に網羅」であることです。これにより問題漏れを避け、全体像を一目で掴むことができます。

このフレームワークにより、各要素を注視し分析したり、解決策を掘り下げることができます。これは「積み上げ型」や「足し算型」とも呼ばれています。

時系列・ステップ分け

プロジェクトの進行状況を管理したいと思ったとき、このMECEの手法を活用してみましょう。プロジェクト全体を時系列に区分することから始めることができます。しかし、それだけでは各時期にどのような作業が必要なのかが不明確なままです。そこで、時系列と同時にステップ分けを取り入れてみてください。これにより、どのタスクをどの順序で遂行すべきかがはっきりと示されます。これこそが、MECEの原則を適用することで得られる効果です。

対照概念

事柄を理解するための手法で、相反する対照的な概念を挙げ、それを分析する方法です。たとえば、「質⇔量」「メリット⇔デメリット」「固定⇔変動」など、反対の概念を利用して、事象を掘り下げて考察します。

因数分解

対象を数式で表現し、それを要素に分解する手法です。例えば、売り上げを「顧客数×顧客単価」などの数式で示し、その要素を個別に考察することを指します。「掛け算型」方法とも呼ばれます。

MECEを使いこなすには

MECEの仕組みを理解し適用するためには、調査の対象を大局的に見て、全体を網羅する戦略に立つことが不可欠です。次に、大枠から取り出された要素を重複しないように定義します。肝となるのは、一つ一つの項目が他に重ならず、全体を包括する形に分割することです。

一つの事例として、市場調査をしてみてください。「市場サイズ」、「顧客の特性」、「ライバル企業の動き」をまずは大きな視点から考察します。それから、要素を細分化し、「顧客の特性」については「年齢」、「性別」、「使用頻度」など、相互に重複することなく指標を立てることが、MECEの有効な使い方です。

このMECEは現在では幅広い業界、企業規模を問わず活用されています。なぜなら、MECEによって効率的に精緻に問題を捉えることで、分析能力が向上し、より良い結論を導き出すことができるからです。しかし、MECEを重視し過ぎると視野を失い、重要な要素を見落とす可能性があるので、その点には注意が必要です。

MECEを活用するフレームワークとは

MECEを活用するフレームワークについて、具体的に確認しておきましょう。

5フォース分析

5フォース分析は、競争者間の競争、供給者の力、顧客の力、新規業者の参入可能性、そして代替商品の存在という5つの視点から業界を分析します。これら5つの項目をMECEフレームワークと組み合わせて分解・分析することにより、重複する項目を排除し、ビジネスを包括的に理解します。

例えば、「新規参入の脅威」をMECEフレームワークで分析すると、参入障壁となる投資規模や顧客ロイヤリティの観点が浮かび上がります。これにより、各要素が他の要素と重なることなく、また全体観を把握することができます。

3C分析

3Cは、”Company(自社)”、”Customer(市場)”、”Competition(競合)”のそれぞれの頭文字を代表しています。このフレームワーク内で、各要素を独立してお互いに重複しないように、かつ最終的に全体が包括されている状態で調査・分析を行います。その結果、自社の資源や施策、競合状況の把握、市場ニーズの理解が可能になります。

自分たちの企業がどう評価されるべきか(Company)、市場が何を必要としているのか(Customer)、競合他社がどのような戦略を取っているのか(Competition)を整理し、企業全体の状況を深く理解することで、問題解決や意思決定を行う際の方向性を見つけることが可能になります。

この3Cに”Channel(流通ルート)”を加えて4C分析として利用する場合もあります。

4P分析

4Pとは「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販売促進)」を指しており、これが各々は、品質やオプション、返品可能性、定価や値引き、支払い条件、流通経路や配送、広告や人的販売など、マーケティング戦略を立案する上で実効性のある要素となります。

新たな製品のマーケティング戦略を立てるにあたっては、この4Pの観点から製品の性格や価格設定、販売場所、製品の宣伝方法などを客観的に捉え、計画を進めます。

この4P分析は、あらゆる面を網羅し、重複を排除するMECEフレームワークを活用した明瞭で実践的な例であり、ビジネスの視野を広げる上で重宝します。業界では「マーケティングミックス」とも称されています。

SWOT分析

SWOT分析とは、事業成功への道を描く重要なフレームワークです。

SWOTは、Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)それぞれの頭文字から命名されました。それぞれの視点は、組織またはプロジェクトの内部と外部、プラス面とマイナス面を網羅的かつ排他的にリストアップすることを目指しています。

初めに、持ち前の強みと見逃しがちな弱みを広範かつ厳密にリストアップします。そこから自組織の価値と課題が見えてきます。これが戦略的な取り組みの出発点となります。

次に、外部から観察した機会と脅威を同じくMECEの視点から整理します。ビジネス環境は絶えず変わり、新しいチャンスや脅威が起こることもあります。そこで、未来への展望と共にリスク管理の視点も重視します。

7S分析

「7S分析」は組織の戦略分析フレームワークです。その名称は、「戦略(Strategy)、組織構造(Structure)、システム(Systems)、スキル(Skills)、人材(Staff)、経営スタイル(Style)、共有価値(Shared Value)」の頭文字をとったものです。

利用時は、「ソフトの4S」(スキル、スタッフ、スタイル、共有価値)と「ハードの3S」(戦略、構造、システム)に分けて考えます。これらの要素が互いに調和していることが、組織の機能性を保つ上で重要とされています。

以上の2つの手法を組み合わせることで、組織の課題を全面的に把握し、市場や人事など多角的な視点から最善の解決策を導き出すことができます。これは両手法がともに要素分解型(足し算型、積み上げ型)のフレームワークであるため、一つ一つの要素を細かく分析し、最適な結論に到達します。

PDCA

PDCAは計画から実行、評価、さらに改善への取り組みを一連のサイクルとして捉えるフレームワークで、これを通じて行われる活動の質を高めていきます。対してMECEは、問題の分析や解決のアプローチを分類し、要素間の重複を排除しつつ、全体として欠落がないようにする方法です。

一方で、PDCAとMECEは単独で活用するだけでなく、互いに連携して効果を発揮することができます。すなわち、PDCAの各段階においてMECEの考えを取り入れることで、計画の策定から問題の解決、そしてその評価と改善の過程がより効率的かつ有効に進行します。また、MECEに基づいて情報を整理し分析する作業もPDCAのフレーズを通じて適切に行うことで、その効果を最大限に活かすことができます。

バリューチェーン

バリューチェーンとは、製品やサービスが消費者に届くまでの各ステップを一つの連続した流れとして捉えたもので、これにMECEの原則を用いることで、各ステップを明確に定義し、それぞれの関連性と影響力を理解することが容易となります。

具体的には、バリューチェーンは設計、調達、生産、販売、アフターサービスという5つの主活動に細分化できます。これらはお互いに独立した要素でありながら、製品やサービスの提供において全て網羅されるべき活動です。

また、これらの主活動はさらに細部に分けることが可能で、たとえば設計は「コンセプト設計」と「詳細設計」、調達は「供給者選定」と「購入」などに細分化できます。これらを明確に分類することで、各フェーズの役割や必要性を深く理解し、問題の特定や解決、さらなる改善点や強化が必要な点の識別に役立てることができます。MECEとバリューチェーンの組み合わせ手法は、ビジネスの現状分析や戦略策定にも有用となります。

製品ライフサイクル

製品ライフサイクルは、市場調査から開始し、製品開発、生産、販売、アフターサービス、そして最終的な廃棄に至るまでの段階を、相互排他的で全体網羅的な流れとして捉えることができます。

開始から終了までの各ステージで具体的に何が生じているかが明確に理解できるため、その各段階に対する最良の戦略を立てることが可能となります。

MECEという考え方を導入した製品ライフサイクルフレームワークは、製品にまつわる理解をより深めるだけでなく、的確な決断を行うのを助け、製品戦略の整理や最適化、そして製品開発の効率化にも大いに寄与する力強いツールなのです。

AIDMA(アイドマ)

AIDMAは顧客が購入行動に至るまでの過程を明確化するフレームワークです。これは次の要素を含みます:Attention(注意)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)。このフレームワークは、顧客が商品やサービスに注目し、関心を持ち、欲望を感じ、それを記憶にとどめ、そして行動するというプロセスを示しています。

MECEとAIDMAを統合して利用することで、購買行動を独立的かつ全体的に理解し、解析することが可能になります。MECEによる効率的な問題解決とAIDMAによる顧客の行動モデル理解がシームレスに連携し、それによりビジネスの可能性を広く深く見つめる視点を手に入れることができます。これらはマーケティング戦略の構築、新商品の開発、顧客サービスの改善等、ビジネスの各場面で有効活用できるのです。

ロジックツリー

ロジックツリーは文字通り、木の形状をしています。大きな問題が「根元」で、それが小さな課題に「枝分かれ」していく形をイメージすると分かりやすいでしょう。各「枝」が相互に排他的である一方、全体としては問題を完全に網羅する形になります。

この分析法により、問題が具体的な形に分割され、各分解した課題への解決策が明確に見えてくるでしょう。

また、全体的な視野で問題を見ることにより、それぞれがどのように関係しているのか、全体としてどのような影響を及ぼすのかを理解しやすくなります。

ロジックツリーは業務の効率化、新たなビジネスモデルの構築、問題解決など、さまざまなシーンで力を発揮します。

MECE原則に基づいて情報を整理し、体系的な分析を行うことで、明確な洞察につながるでしょう。

具体例として、「ダイエット」を考えてみましょう。

体重が落ちないという問題を解明するため、その原因、それぞれの要因をロジックツリーに分解し、さらに詳細に可視化することで具体的な解決策が見えてきます。

まとめ

MECEは問題解決のための論理的思考法で、”Mutually Exclusive”(相互に排他的)と”Collectively Exhaustive”(全体として網羅的)の頭文字を取ったものです。

この方法を用いることで情報を整理し、明確な解決策を導き出すことが可能となります。

よくある質問

MECEはどんな時に使う?

MECEは、物事を整理し、重複や抜け漏れがないように区分け・分類する考え方です。

ビジネスにおいてアイデアを提示したり、問題の解決策を考えたりする場面でよく用いられます。

MECEは、重複による説得力の低下や抜け漏れによる効率の低下を防ぐ役割を果たします。

MECEとは何ですか?

MECEは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略で、直訳すると「相互に排他的で集合的に網羅的」な意味です。

これはビジネスやコンサルティング分野で用いられる論理的思考の手法であり、通常「ミーシー」または「ミッシー」と読まれます。

マッキンゼーなどのコンサルティング企業が考案しました。

MECEに整理する意味は?

MECEの目的は、「漏れや重複を避けた整理だけが目的にならないようにすること」です。MECEは物事を整理する際の考え方であり、単に情報を整理するだけでなく、その後の解決策や行動計画の立案を容易にするための手法です。

MECEを使用して情報を整理した後に、次のステップへ進むことが真の目的です。

MECEのメリット・デメリットは?

MECEの利点は、適切な分類方法が未知の場合でも思考を始めることができることです。しかし、全体像が不明瞭なため、抜けや漏れが生じやすくなることがデメリットです。

MECEの身近な例は?

MECEの具体例として次のようなものがあります。

・雇用形態ごとに分類する

・日本の国民を分類する:年齢と性別に分けることで、漏れやダブりなく全体を網羅できます。

・地方ごとに日本を分類する

・20代以上の人を所属ごとに分類する

・就業形態を分類する