
SWIRセンサー導入事例10選|製造業から医療まで活用実績を解説
SWIR(短波長赤外線)センサーは、人間の目には見えない波長域での撮影を可能にする革新的な技術です。可視光カメラでは検出困難な異物発見や、衣服を透過した内部検査、水分含有量の測定など、従来の赤外線カメラを超える性能を発揮します。本記事では、食品製造業での品質検査から医薬品の非破壊検査、半導体製造での欠陥検出まで、SWIRセンサーの具体的な導入事例10選を詳しく解説します。
目次
SWIRセンサーとは?基礎知識と技術的特徴
SWIR(短波長赤外線)の波長特性と可視光との違い
SWIRセンサーは、Short-Wave Infrared(短波長赤外線)を検出する特殊な赤外線カメラです。SWIRは0.9~1.7μmの波長範囲を持ち、人間の目には見えない光の領域で撮影を行う技術として注目されています。可視光線の波長が約0.38~0.78μmであることを考えると、SWIRは可視光よりもやや長い波長域に位置しています。
従来の赤外線カメラと比較して、SWIRの特徴は透過性の高さにあります。波長が長くなるほど物質を透過する性質が強くなり、可視光では見えないものを観察することが可能です。この透過特性により、衣服や包装材料、プラスチック、シリコンなどの材料を透過して内部構造を撮影できます。
また、SWIRの波長域では、水分による光の吸収が強く現れる特性があります。この吸収波長の特性を利用して、物質内部の水分含有量や温度分布を正確に測定することができ、製造業での品質検査や非破壊検査において重要な役割を果たしています。
人間の目には見えない波長域での撮影技術
人間の目に見えない赤外線を利用したSWIR撮影技術は、従来の可視光カメラでは不可能だった検査や監視を実現します。人間の目には見えない波長域での撮影により、表面の色や模様に惑わされることなく、内部構造や材質の違いを明確に識別できます。
SWIRカメラの撮影では、被写体から放射される赤外線を検出し、温度や材質の違いを画像として表現します。この仕組みにより、肉眼では同じように見える物質でも、赤外域での反射率や透過率の違いによって異なる画像として捉えることが可能になります。
特に製造現場では、この特性を活用した画像処理技術により、製品の品質管理や欠陥検出の精度が大幅に向上します。デジタルカメラとは異なる見え方をするため、従来の検査方法では発見困難だった問題も早期に特定できるようになりました。
従来の赤外線カメラとの性能比較
SWIRセンサーと従来の遠赤外線カメラとの主な違いは、検出する波長域と応用範囲にあります。遠赤外線カメラは主に温度測定に特化していますが、SWIRカメラは透過撮影や材質識別により幅広い用途で使用されています。
従来の監視カメラシステムと比較すると、SWIRカメラは煙や霧などの環境下でも鮮明な撮影が可能です。また、長波長の赤外線を利用することで、夜間でも可視光のフィルターを必要とせずに高品質な画像を取得できます。
性能面では、SWIRセンサーは高い解像度と感度を持ち、微細な温度差や材質の違いも検出できます。この高精度な検出能力により、製造業での品質管理から医療分野まで、様々な分野での活用可能性が広がっています。

【事例1】食品製造業|異物検出と品質管理への応用
可視光では検出困難な異物の発見事例
食品製造業では、製品の安全性確保のため異物混入の検出が重要な課題となっています。SWIRカメラを活用することで、従来の可視光検査では発見できなかった透明な異物や食品と同色の混入物も確実に検出できるようになりました。
特に、プラスチック片やガラス片などの透明な異物は、可視光カメラでは背景と区別がつかないケースが多くありました。しかし、SWIRの波長域では材質の違いによる反射特性が明確に現れるため、食品本体と異物を明確に識別できます。また、包装材料を透過して内部の異物まで検出することが可能です。
導入により、従来の目視検査や金属検出器では発見困難だった非金属異物の検出率が大幅に向上し、製品回収リスクの軽減と消費者の安全性確保が実現されています。検査速度も向上し、生産ラインの効率化にも貢献しています。
水分含有量測定による品質検査の自動化
SWIRセンサーの水分吸収波長における特性を活用し、食品の水分含有量を非接触で測定する品質検査システムが導入されています。従来の破壊検査や抜き取り検査と異なり、全数検査が可能となり品質管理の精度が向上しました。
乾燥食品や冷凍食品の製造工程では、適切な水分管理が製品の品質と保存性に直結します。SWIRカメラによる水分測定により、製造プロセス中にリアルタイムで水分分布を監視し、品質のばらつきを最小限に抑制できます。
自動化により検査工程の人件費削減と検査精度の向上が同時に実現され、品質管理コストの最適化が図られています。また、測定データの蓄積により、製造条件の最適化や予防保全にも活用されています。
導入効果とROI分析
食品製造業でのSWIRセンサー導入による効果は多面的に現れています。異物混入による製品回収コストの削減、検査工程の自動化による人件費削減、品質向上による顧客満足度向上などが主な効果として挙げられます。
投資回収期間は導入規模により異なりますが、中規模製造ラインでの導入では2~3年での投資回収が実現されているケースが多く見られます。特に、高付加価値商品を扱う企業では、ブランド価値の保護効果も含めて早期の投資回収が可能となっています。
長期的な効果として、品質管理システムの標準化により、新製品開発や海外展開時の品質保証体制構築が容易になるといったメリットも報告されています。

【事例2】医薬品製造|錠剤・カプセルの非破壊検査
衣服や包装材を透過した内部検査技術
医薬品製造業では、製品の品質と安全性確保が最重要課題となっています。SWIRセンサーによる非破壊検査技術は、錠剤やカプセルの内部構造を破壊することなく詳細に検査することを可能にしています。
従来の検査方法では、包装後の製品内部を確認するために開封が必要でしたが、SWIRカメラは包装材料を透過して内部の錠剤やカプセルの状態を直接観察できます。この透過検査技術により、包装工程後でも製品の品質確認が可能となり、出荷前の最終品質チェック体制が確立されました。
特に、カプセル内部の粉末分布や錠剤の亀裂・欠けなど、外観からは判断困難な内部欠陥も確実に検出できるため、製品品質の向上と安全性確保に大きく貢献しています。検査は非破壊で行われるため、検査した製品をそのまま出荷に回すことができ、廃棄ロスの削減にもつながっています。
有効成分の分布測定と品質保証
医薬品の効果を左右する有効成分の均一な分布確認は、品質保証において極めて重要です。SWIRセンサーの分光特性を活用することで、錠剤内部の有効成分分布を非侵襲的に測定し、製造品質の向上を実現しています。
錠剤の圧縮成形工程において、成分の偏析や密度のばらつきが発生する可能性がありますが、SWIRカメラによる画像解析により、これらの問題を製造工程中に早期発見できます。温度分布の測定により、圧縮時の熱分布も監視し、製造条件の最適化に活用されています。
また、異なる成分を含む多層錠剤の場合、各層の厚さや境界面の状態もSWIR撮影により詳細に観察できるため、複雑な製剤の品質管理精度が向上しています。これにより、製剤の溶出性や安定性の予測精度も高まっています。
FDA規制対応と検査精度の向上実績
医薬品製造業では、FDA(米国食品医薬品局)をはじめとする規制当局の厳格な品質基準への対応が求められます。SWIRセンサーによる検査システムは、これらの規制要求を満たす高精度な品質管理体制の構築を支援しています。
検査データの客観性と再現性が高く、規制当局への品質証明書類作成や監査対応において有効なエビデンスとして活用されています。従来の官能検査や抜き取り検査と比較して、統計的な品質管理が可能となり、バリデーション要件を満たす検査体制が確立されました。
導入後の検査精度向上実績として、内部欠陥検出率の95%以上の向上、検査時間の50%短縮、人的エラーによる見逃し率の大幅削減などが報告されています。また、検査の標準化により、製造拠点間での品質基準の統一も実現されています。

【事例3】半導体製造|ウェハー検査と温度分布測定
シリコンウェハーの透過撮影による欠陥検出
半導体製造において、SWIRセンサーを活用した赤外線カメラは、シリコンウェハーの内部検査で革命的な成果を上げている。従来の可視光による検査では発見困難だった微細な欠陥も、SWIR波長域を利用することでシリコン基板を透過して内部構造まで詳細に観察することが可能になった。
シリコンは1000nm以上の波長に対して透過性を示すため、SWIRセンサーによる撮影では人間の目には見えない内部の結晶欠陥やマイクロクラックまで検出できる。この透過特性により、ウェハー表面だけでなく基板内部の不純物分布や結晶構造の乱れも可視化され、製品品質の向上に大きく貢献している。
デジタルカメラによる従来の検査と比較して、赤外線カメラを使用した検査では検出精度が約40%向上し、見逃し率を大幅に削減することができている。特に、人の目では判別困難な微細な欠陥についても、画像処理技術と組み合わせることで自動検出が実現されている。
製造プロセス中の温度監視システム
半導体製造プロセスにおける温度管理は製品品質に直結する重要な要素であり、SWIRセンサーによる温度分布測定システムが導入されている。赤外線を利用した非接触温度測定により、製造装置内部の詳細な温度分布をリアルタイムで監視することが可能となった。
従来の接触式温度計では測定点が限られていたが、赤外線カメラによる面的な温度測定により、ウェハー全体の温度分布を同時に把握できるようになった。この技術により、局所的な温度異常の早期発見や、プロセス条件の最適化が実現されている。
特に、エピタキシャル成長やイオン注入などの高温プロセスにおいて、温度の均一性確保が製品特性に大きく影響するため、SWIRセンサーによる精密な温度監視が品質安定化に欠かせない要素となっている。
歩留まり向上と品質安定化の成果
SWIRセンサー導入により、半導体製造現場では顕著な歩留まり向上と品質安定化が実現されている。従来の検査手法では発見できなかった初期段階の欠陥を早期に検出することで、不良品の流出防止と製造コストの削減効果が年間で約15-25%の改善として現れている。
また、温度分布の可視化により製造プロセスの最適化が進み、製品間のばらつきが大幅に減少した。これにより、歩留まり率が従来比で約12%向上し、製造ラインの生産性が大きく向上している。
長期的な効果として、製品の信頼性向上により顧客クレームが約30%減少し、ブランド価値の向上にも寄与している。SWIRセンサーによる非破壊検査技術は、半導体製造業界において競争優位性を確保する重要な技術として位置づけられている。

【事例4】プラスチック製造|射出成形品の内部構造検査
成形品内部のクラック・空洞検出
プラスチック製造業において、SWIRセンサーを活用した赤外線カメラによる内部検査システムが品質管理の精度向上を実現している。射出成形品の内部に発生するクラックや空洞は、従来の外観検査では発見が困難であったが、特定の波長域での透過撮影により内部構造の詳細な観察が可能になった。
多くのプラスチック材料は近赤外線に対して透過性を示すため、SWIRセンサーによる検査では成形品を透過して内部の欠陥を検出できる。特に、ポリエチレンやポリプロピレンなどの汎用プラスチックにおいて、肉眼では確認できない内部のボイドや分子配向の不均一性まで可視化されている。
この検査技術により、従来は破壊検査でしか確認できなかった内部品質を、非破壊で全数検査することが可能となり、製品信頼性の大幅な向上を実現している。特に、自動車部品や医療機器部品など高い信頼性が求められる用途において、その効果は顕著に現れている。
材料の均一性確認と不良品の早期発見
射出成形プロセスにおける材料の混合状態や充填パターンの確認にも、SWIRセンサーによる透過撮影技術が活用されている。異なる材料特性を持つ添加剤や着色剤の分散状態を、赤外線の吸収特性の違いにより可視化することができる。
従来の検査では発見困難だった局所的な材料密度の違いや、充填不良による内部構造の不均一性についても、波長特性を利用した画像解析により定量的な評価が可能となった。これにより、成形条件の最適化や材料配合の改善に関する具体的なデータを取得できている。
また、成形直後の製品温度分布測定により、冷却プロセスの不均一性や内部応力の分布状態も把握でき、反りや変形などの後工程での不良発生を予測することが可能になっている。
検査時間短縮と人件費削減効果
SWIRセンサーによる自動検査システムの導入により、従来の人手による外観検査と比較して検査時間が約70%短縮されている。また、内部欠陥の見逃し率についても、人間の目による検査と比較して約85%の削減効果を実現している。
検査員による目視検査では、疲労や個人差により品質のばらつきが発生していたが、SWIRセンサーによる自動化により一定品質での検査が可能となった。これにより、品質管理コストの削減と同時に、製品品質の安定化も達成されている。
導入初期の設備投資に対して、人件費削減効果と品質向上による顧客満足度向上により、約2年での投資回収が実現されている事例が多く報告されている。

【事例5】太陽電池製造|パネル検査とマイクロクラック検出
可視光では見えないセル内部の欠陥発見
太陽電池製造において、SWIRセンサーを活用した赤外線カメラによる検査システムが、従来の可視光検査では発見困難だったセル内部の欠陥検出に革命をもたらしている。シリコン太陽電池セルは特定の波長域で透過性を示すため、SWIR波長を利用することで内部構造の詳細な観察が可能となった。
特に問題となるマイクロクラックは、人間の目には見えない微細な亀裂であり、発電効率の低下や長期信頼性に大きく影響する。SWIRセンサーによる透過撮影では、これらの微細なクラックを高精度で検出することができ、不良品の流出防止に大きく貢献している。
従来のエレクトロルミネッセンス検査と組み合わせることで、電気的特性と物理的欠陥の両面から総合的な品質評価が可能となり、製品の信頼性向上を実現している。
発電効率低下の原因特定と品質向上
太陽電池の発電効率低下の主要因である内部欠陥の特定に、SWIRセンサーによる詳細解析が活用されている。セル内部の結晶粒界や不純物分布、接合部の異常などを可視化することで、効率低下のメカニズムを解明し、製造プロセスの改善に活用している。
赤外線カメラによる温度分布測定と組み合わせることで、動作中の太陽電池セルにおけるホットスポットの発生要因も特定でき、設計段階での対策立案が可能となった。これにより、製品の長期信頼性が大幅に向上している。
また、異なる製造ロット間での品質比較や、製造条件の最適化にも、SWIRセンサーによる定量的な評価データが活用され、安定した品質の製品供給を実現している。
製造ライン組み込みによる全数検査体制
SWIRセンサーの高速撮影性能を活かし、製造ライン内での全数検査システムが構築されている。従来のサンプリング検査から全数検査への移行により、不良品の市場流出リスクをほぼゼロに近づけることが可能となった。
製造ライン上での連続検査により、製造条件の変化による品質変動をリアルタイムで監視でき、異常発生時の迅速な対応が可能となった。これにより、大量の不良品発生を未然に防ぎ、製造コストの削減効果も実現している。
自動検査システムと画像処理技術の組み合わせにより、検査結果の自動判定と不良品の自動排出が実現され、製造効率の向上と品質安定化の両立を達成している。

【事例6】農業・食品加工|作物の成熟度判定と選別
果実内部の糖度・水分測定技術
農業分野において、SWIRセンサーを活用した赤外線カメラによる果実の内部品質評価システムが、従来の破壊検査に代わる革新的な技術として導入されている。果実の糖度や水分含有量は、特定の波長域での光吸収特性に現れるため、SWIRセンサーによる分光測定により非破壊での品質評価が可能となった。
りんごやみかんなどの果実において、表皮を透過した内部の糖度分布や水分分布を可視化することで、外見では判断できない内部品質を正確に評価できる。この技術により、消費者により高品質な果実を提供することが可能となり、農産物の付加価値向上に大きく貢献している。
従来の糖度計による破壊検査では、サンプリングによる推定しかできなかったが、SWIRセンサーによる検査では全品検査が可能となり、品質のばらつきを大幅に削減している。
自動選別システムによる品質向上
果実選別ラインにSWIRセンサーを組み込んだ自動選別システムが、農業・食品加工業界で広く導入されている。赤外線カメラによる内部品質評価と外観検査を同時に行うことで、総合的な品質判定による精密な選別が実現されている。
選別精度は人手による選別と比較して約30%向上し、特に糖度による等級分けにおいては、従来の±2度の誤差を±0.5度以下まで改善することができている。これにより、消費者からの品質に対する信頼度が大きく向上している。
また、選別作業の自動化により労働力不足の解決にも貢献し、作業効率の向上と人件費の削減効果も実現されている。24時間連続稼働が可能なシステムにより、処理能力の大幅な向上も達成されている。
収穫量予測と出荷時期最適化
果樹園において、SWIRセンサーを搭載したドローンや固定カメラシステムにより、果実の成熟度を広範囲にわたって監視する技術が導入されている。赤外線による成熟度判定により、最適な収穫時期の決定や収穫量の予測精度が大幅に向上している。
従来の目視による成熟度判定では、経験に依存する部分が大きく個人差もあったが、SWIRセンサーによる定量的な評価により、客観的かつ精密な成熟度管理が可能となった。これにより、収穫タイミングの最適化による品質向上と、計画的な出荷による市場価格の安定化を実現している。
気象条件や栽培環境の変化に対する果実の応答も、継続的な監視により詳細に把握でき、栽培管理技術の向上にも活用されている。この技術革新により、農業の効率化と収益性の向上が同時に達成されている。

【事例7】セキュリティ・監視|夜間監視カメラシステム
煙や霧を透過した監視技術
従来の監視カメラでは困難だった悪天候や煙霧環境下での監視が、SWIRセンサーを搭載した赤外線カメラによって実現されています。可視光線では透過できない煙や霧、靄などの微粒子をSWIRの波長が効率的に透過することで、視界不良な状況でも鮮明な画像撮影が可能です。
空港や港湾施設では、霧の発生が頻繁な海岸線エリアでも、SWIR対応の監視カメラが24時間体制で不審者の監視を実施しています。人間の目には見えない波長域を活用することで、従来の監視システムでは検知困難だった遠距離からの侵入者も確実に捕捉できるようになりました。
従来の監視カメラでは不可能だった環境での活用
産業施設や化学プラントにおいて、蒸気や排煙が常時発生する環境では、通常の監視カメラでは有効な監視が困難でした。しかし、SWIRセンサーを使用した赤外線カメラは、これらの気体を透過して撮影することができ、作業員の安全確認や設備の状態監視を継続的に実施できています。
また、山間部や森林地帯での野生動物監視においても、樹木の葉や枝を通して動物の動きを検知することが可能になり、生態系調査や農作物被害対策に活用されています。
セキュリティ精度向上と誤報減少実績
SWIRセンサー導入により、誤報率が従来比70%削減された事例があります。人間の目に見えない波長での撮影により、風による植物の揺れや小動物の動きによる誤作動が大幅に減少し、真の脅威のみを検知できるようになりました。
重要施設では、複数の波長域を同時に監視することで、侵入者の意図的な偽装や隠蔽工作も見破ることができ、セキュリティレベルの向上を実現しています。

【事例8-10】その他の産業分野での活用事例
【事例8】建築・土木|コンクリート内部の鉄筋検査
建設現場でのコンクリート構造物検査において、SWIRセンサーによる非破壊検査が導入されています。従来のX線検査では時間とコストがかかっていた鉄筋の位置確認や腐食状況の把握が、赤外線カメラを使用することで効率的に実施できるようになりました。
特に橋梁やトンネルなどの大型インフラにおいて、定期点検時の検査時間が従来比60%短縮され、安全性確保と維持管理コストの削減を両立しています。水分の浸透や材料劣化の早期発見により、予防保全の精度が向上しています。
【事例9】自動車製造|塗装品質と接着剤検査
自動車製造ラインでは、塗装膜厚の均一性や接着剤の塗布状況確認にSWIRセンサーが活用されています。可視光では確認困難な塗装下地の状態や、接着剤の分布状況を可視化することで、品質管理の精度が大幅に向上しました。
特に電気自動車のバッテリーパック製造において、密閉性確保のための接着剤検査では、製品の安全性に直結する重要な工程となっており、全数検査体制の構築に貢献しています。
【事例10】リサイクル業|プラスチック材質識別
プラスチックリサイクル工場では、外観が類似した異なる樹脂材料を、SWIRセンサーの吸収波長特性を利用して高精度で識別・分別しています。従来の手作業による選別と比較して、処理速度が5倍向上し、分別精度も95%以上を達成しています。
各プラスチック材料が持つ固有の赤外線吸収特性を画像処理技術と組み合わせることで、自動選別システムが実現され、リサイクル効率の向上と人件費削減を同時に実現しています。

SWIRセンサー導入に関するFAQ
導入コストと投資回収期間について
SWIRセンサーシステムの導入コストは、用途や規模により大きく異なります。小規模な検査装置では数百万円から、大規模な製造ライン組み込みシステムでは数千万円の投資が必要です。コンサルティングファームによる導入支援を含める場合、年間1000万円から1億円の予算を想定する企業が多くなっています。
投資回収期間は、不良品削減効果や検査工程の自動化による人件費削減効果により、一般的に2-4年で回収可能とされています。特に品質問題による製品回収リスクが高い業界では、より短期間での回収が期待できます。
既存システムとの互換性と導入時の注意点
既存の画像処理システムとの連携において、SWIRセンサーからの画像データは専用のソフトウェアによる処理が必要となる場合があります。カメラの選定時には、使用環境の温度条件や必要な検査精度を事前に明確にしておくことが重要です。
また、SWIRの波長特性を最大限活用するためには、照明設備も専用のものが必要となることがあり、システム全体の設計を慎重に検討する必要があります。
メンテナンス要件と長期運用のポイント
SWIRセンサーは精密機器のため、定期的な校正作業が必要です。センサー表面の清掃や光学フィルターの交換は、製造環境に応じて月1回から四半期に1回程度実施することが推奨されています。
長期運用においては、センサーの劣化による感度低下を監視し、予防保全計画に基づいた部品交換を実施することで、安定した検査性能を維持できます。運用担当者向けの技術研修も、システムの効果的な活用には不可欠な要素となります。
SWIRセンサーで撮影した写真は通常のカメラと何か違いがありますか?
SWIRセンサーで撮影した写真は、人間の目には見えない近赤外線領域の情報を含むため、通常の可視光カメラとは大きく異なります。例えば、物質の内部構造や水分含有量、温度分布などが可視化され、品質検査や異物検出において従来では発見できなかった問題を特定することが可能です。このように、SWIRセンサーは製造業での検査精度向上に貢献しています。
SWIRセンサーが検出する電磁波の特徴について教えてください
SWIRセンサーは短波長赤外線(1000-3000nm)の電磁波を検出します。この波長域は可視光と熱赤外線の中間に位置し、多くの材料に対して高い透過性を持ちます。そのため、プラスチックや繊維、薄い金属などを透過して内部の状態を観察することができ、非破壊検査において重要な役割を果たします。また、水分による吸収特性も強いため、水分検出にも使われています。
弊社でSWIRセンサーを導入する際の検討ポイントは?
弊社でSWIRセンサーの導入を検討される際は、まず検査対象物の材質と検出したい欠陥の種類を明確化することが重要です。SWIRは特定の波長域で優れた透過性や反射特性を示すため、アプリケーションに適した波長範囲の選定が必要です。また、既存の検査システムとの統合性や、操作員の習熟度、投資対効果なども総合的に評価し、最適なソリューションを選択することをお勧めします。
製造現場でSWIRセンサーがすべての検査に適用できますか?
SWIRセンサーはすべての検査に万能ではありません。材質や検出対象によって適用可能性が異なります。例えば、金属の厚い部材や高密度材料では透過が困難な場合があります。一方、プラスチック製品や食品、医薬品、繊維製品などでは優れた検査性能を発揮します。導入前には実際の検査対象でのテスト撮影を行い、期待する検査精度が得られるかを確認することが重要です。
SWIRセンサーで測定する赤外線量の単位や表示方法は?
SWIRセンサーで測定する赤外線量は、一般的にデジタルカウント値やグレースケール値として表示されます。センサーの感度や露光時間によって数値は変化しますが、通常は0-255の8ビットまたは0-65535の16ビット値で表現されます。この数値が高いほど多くの赤外線を検出していることを示し、画像処理ソフトウェアを通じて温度や濃度などの物理量に変換することも可能です。
他の検査方法と比較してSWIRセンサーが使われる理由は?
SWIRセンサーが他の検査方法と比較して使われる主な理由は、非接触・非破壊での内部検査が可能な点です。X線検査と違い安全性が高く、可視光検査では見えない欠陥も検出できます。また、リアルタイムでの連続検査が可能で、生産ラインに組み込みやすい特徴があります。コスト面でも、従来の破壊検査と比較して長期的には経済的で、品質向上と生産性向上を両立できる検査手法として注目されています。