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排熱利用事例|廃熱ボイラー・蓄熱技術による省エネ投資の実践ガイド

排熱利用事例|廃熱ボイラー・蓄熱技術による省エネ投資の実践ガイド

産業界で注目される排熱利用事例を体系的に解説します。廃熱ボイラーや熱交換器による熱回収から、蓄熱技術を組み合わせた先進的な廃熱活用まで、投資対効果と技術選定の判断基準を実務視点で提示。製造業における燃料費削減とCO2排出量低減を同時実現する排熱回収システムの導入戦略を詳述します。

廃熱ボイラー導入による蒸気回収の高度事例

高温排ガスからの多段階蒸気生成システムの設計と運用

高温排ガスからの効率的な熱回収には、多段階での蒸気生成が有効です。例えば、600℃の排ガスから段階的に熱を回収することで、高圧蒸気(4.0MPa、250℃)、中圧蒸気(1.0MPa、180℃)、低圧蒸気(0.3MPa、135℃)を順次生成できます。このような多段階システムでは、各圧力レベルの蒸気需要に応じた最適な熱回収が可能となり、総合的な熱効率は85〜90%に達します。廃熱ボイラーの設計では排ガス温度の変動に対応できる制御システムと、ダストによる伝熱面汚れを防止するスートブロワーなどの付帯設備が重要となります。

多段階蒸気生成システムの運用では、各圧力レベルの蒸気バランスを最適化することがポイントです。高圧蒸気は発電用タービンやプロセス加熱に、中圧蒸気は各種機器の熱源に、低圧蒸気は給水予熱や空調用途に利用されます。廃熱ボイラーからの蒸気発生量は排ガス条件により変動するため、既設ボイラーとの連携運転により安定した蒸気供給を実現します。排ガス中の硫黄酸化物による低温腐食を防止するため、排ガス出口温度は150℃以上に保つ設計とすることが一般的です。定期的なメンテナンスにより伝熱面の清浄度を維持すれば、廃熱ボイラーの性能は長期にわたり安定します。

化学プラント・製鉄所における大規模廃熱ボイラーの実績

化学プラントでは、各種反応工程から高温の排ガスが大量に発生します。エチレンプラントの分解炉からは900℃以上の排ガスが排出され、この熱を回収する廃熱ボイラーにより高圧蒸気を生成します。廃熱ボイラーからの蒸気発生量は時間あたり50〜150トンに達し、プラント全体の蒸気需要の30〜50%を賄うことが可能です。年間の重油削減量は2万〜6万kL規模となり、燃料費削減額は年間15億円〜45億円に達する事例もあります。化学プラントの廃熱ボイラーは24時間連続運転が基本であり、高い信頼性と安定性が求められます。

製鉄所では、高炉からの排ガスや転炉排ガスから熱回収が行われています。転炉から排出される1,500℃以上の高温排ガスは、まず廃熱ボイラーで急冷しながら蒸気を回収し、その後集塵装置で除塵されます。製鉄プロセス全体での廃熱回収により、投入エネルギーの15〜20%程度を回収できるため、省エネとCO2排出量削減の両面で大きな効果があります。製鉄所の廃熱ボイラーは、排ガス中のダストが多いため耐摩耗性の高い材質選定と、効率的な灰除去システムの導入が設計上の重要ポイントとなります。運転実績では、適切なメンテナンスにより20年以上の長期安定運転を実現している事例も多く存在します。

既設ボイラーへのエコノマイザー追加による段階的効率化

既設ボイラーの排ガスには、まだ多くの熱エネルギーが残っています。ボイラー出口の排ガス温度は200℃〜300℃程度であり、この熱を回収してボイラー給水を予熱するエコノマイザーを追加することで、ボイラーの熱効率を5〜10%向上できます。エコノマイザーは既設ボイラーの排ガスダクトに後付けで設置できるため、大規模な改造工事を伴わず導入が可能です。投資額は2,000万円〜1億円程度であり、年間の燃料費削減額が500万円〜2,500万円となるため、投資回収期間は3〜5年程度となります。

エコノマイザーによる給水予熱では、給水温度を30℃〜80℃程度上昇させることができます。例えば、蒸気発生量10トン/時のボイラーで給水温度を60℃上昇させた場合、年間の重油削減量は約200kL、CO2排出量削減は約500トンとなります。エコノマイザーの設計では、排ガス温度が露点以下に下がらないよう出口温度を管理し、低温腐食を防止することが重要です。ボイラー水の水質管理も適切に行うことで、エコノマイザー内のスケール付着を抑制し、長期的に安定した性能を維持できます。段階的な効率化施策として、まずエコノマイザーを導入し、その後さらなる省エネ余地がある場合に廃熱ボイラーの追加を検討するアプローチも有効です。

排熱利用事例|廃熱ボイラー・蓄熱技術による省エネ投資の実践ガイド

熱交換器とヒートポンプを活用した中低温廃熱回収事例

産業用ヒートポンプによる100℃以下廃熱の昇温利用技術

産業用ヒートポンプは、40〜80℃程度の低温廃熱を汲み上げて、80〜120℃の高温熱水や蒸気として利用できる機器です。電力を駆動エネルギーとして使用しますが、投入電力の3〜5倍の熱エネルギーを取り出すことができる高効率な機器です。利用ヒートポンプは、従来は利用が困難だった中低温の廃熱を、実用的な温度域まで昇温できるため、廃熱回収の適用範囲を大幅に拡大します。

ヒートポンプの性能を示す指標として、成績係数(COP: Coefficient of Performance)があります。COPは、投入した電力に対して得られる熱量の比率を表します。例えば、COPが4.0の場合、1kwhの電力で4kwhの熱を回収できることを意味します。産業用ヒートポンプのCOPは、熱源温度と供給温度の温度差によって変化し、温度差が小さいほど高いCOPが得られます。一般的に、COPは3.0〜5.0の範囲です。

自動車部品工場における導入事例では、金属加工機械の冷却水(温度約45℃)を熱源として産業用ヒートポンプを導入し、90℃の温水を製造しています。この温水は工場の空調暖房と部品洗浄工程に使用され、従来使用していた重油ボイラーの燃料消費量を年間約110kl削減しました。ヒートポンプの電力消費量は年間約400,000kwhですが、重油削減によるコスト削減効果が電力コストを大きく上回り、年間で約600万円のエネルギーコスト削減を実現しています。

食品工場では、冷凍・冷蔵設備の冷却排熱(温度約35℃)をヒートポンプの熱源として活用しています。ヒートポンプにより85℃の温水を製造し、瓶の洗浄や製品の加熱工程に利用することで、蒸気使用量を年間約1,500ton削減しました。蒸気単価を4,200円/tonとすると、年間約630万円のコスト削減効果があります。さらに、冷却設備の廃熱を有効利用することで、冷却塔の負荷も軽減され、冷却設備の効率も向上しています。

化学工場では、反応器の冷却水(温度約60℃)から高温ヒートポンプを用いて120℃の蒸気を発生させ、蒸留塔の加熱に利用しています。高温ヒートポンプは、自然冷媒や高温対応の冷媒を使用することで、100℃以上の熱供給が可能です。この導入により、低圧蒸気の使用量を年間約2,000ton削減し、重油換算で約180kl相当の省エネ効果を達成しました。ヒートポンプによる廃熱の昇温利用は、多様な産業プロセスにおける熱効率向上の有効な手段です。

産業用ヒートポンプによる廃熱昇温システム

蓄熱技術と組み合わせた排熱利用の先進事例

潜熱蓄熱材(PCM)を活用した間欠廃熱の平準化システム

潜熱蓄熱材(Phase Change Material: PCM)は、物質の相変化(固体と液体の変化)に伴う潜熱を利用して熱を蓄える材料です。PCMは、特定の温度(融点)で大量の熱を吸収・放出するため、狭い温度範囲で高密度に熱を蓄えることができます。産業用途では、パラフィン系、塩系、糖アルコール系などの各種PCMが、蓄熱温度に応じて使い分けられています。

PCMの利点は、温度変化が少ない状態で熱の出し入れができることです。例えば、融点60℃のPCMを使用すれば、約55〜65℃の狭い温度範囲で安定的に熱を供給できます。これにより、プロセスの温度制御が容易になり、品質の安定化にも貢献します。また、蓄熱密度が高いため、顕熱蓄熱(水などの温度変化による蓄熱)と比較して、コンパクトな蓄熱システムを構築できます。

金属熱処理工場における導入事例では、バッチ式の加熱炉から間欠的に排出される高温排ガス(温度約400℃)の熱を、高温対応のPCM蓄熱ユニットで回収しています。加熱炉の稼働時に蓄熱し、非稼働時に蓄えた熱を放出することで、ボイラー給水の連続的な予熱を実現しています。この平準化システムにより、廃熱利用率が約40%向上し、年間で重油換算約70kl相当の燃料費削減効果が得られています。

食品工場では、蒸煮工程から発生する蒸気の凝縮熱を、融点85℃のPCMを充填した蓄熱槽に蓄えています。蒸煮工程は1日に数回のバッチ運転のため、廃熱発生が間欠的です。PCM蓄熱槽により、この間欠廃熱を蓄え、洗浄工程で連続的に温水として利用することが可能になりました。蓄熱槽の容量は約2,000kwhで、日中の廃熱を夜間の洗浄作業まで保持できます。この導入により、温水製造用の蒸気使用量を年間約600ton削減し、蒸気単価4,000円/tonで年間約240万円のコスト削減を実現しています。

PCM蓄熱システムの設計では、蓄熱材の選定が重要です。蓄熱温度域、蓄熱容量、熱伝導率、耐久性、コストなどを総合的に評価し、最適なPCMを選定します。また、PCMは一般的に熱伝導率が低いため、伝熱促進のためのフィン構造や、熱媒体の流路設計が性能を左右します。適切な設計により、間欠廃熱を安定的に利用できる高効率なシステムが構築できます。

顕熱蓄熱槽による時間シフト利用システム

化学蓄熱技術による高密度・長期間排熱保存の産業応用

化学蓄熱は、可逆的な化学反応を利用して熱を化学エネルギーとして蓄える技術です。吸熱反応で熱を吸収し、発熱反応で熱を放出する仕組みで、理論的には熱損失なく長期間の熱保存が可能です。蓄熱密度が非常に高く、顕熱蓄熱の5〜10倍の密度で熱を蓄えることができます。また、常温で保存できるため、断熱が不要という利点もあります。

産業用途で研究が進んでいる化学蓄熱材としては、水酸化カルシウム系、酸化マグネシウム系、化学ヒートポンプ用の吸着材などがあります。水酸化カルシウムは、加熱により酸化カルシウムと水に分解し(吸熱反応)、水を加えると水酸化カルシウムに戻りながら熱を放出します(発熱反応)。この反応の蓄熱密度は約500kwh/m³と非常に高く、コンパクトな蓄熱システムを構築できます。

製鉄所における実証事例では、高炉からの高温排ガス(温度約600℃)の熱を化学蓄熱材に蓄え、別の工程の加熱に利用する研究が進められています。化学蓄熱により、廃熱を数日から数週間保存できるため、生産計画に応じた柔軟な熱利用が可能になります。実証試験では、蓄熱材1tonあたり約200kwhの熱を蓄え、必要時に150℃以上の温度で放熱することに成功しています。実用化により、年間で重油換算数百kl規模の省エネ効果が期待されています。

セメント工場では、焼成炉からの高温排ガスを化学蓄熱システムで回収し、原料の予熱に利用する技術開発が行われています。セメント製造プロセスは連続運転が基本ですが、定期メンテナンス時には炉を停止します。化学蓄熱により、稼働時の廃熱を長期保存し、再稼働時の予熱に活用することで、燃料消費量の削減とco2排出量の低減が可能になります。実証段階では、約1週間の熱保存に成功しており、実用化に向けた技術開発が進んでいます。

化学蓄熱技術は、まだ研究開発段階のものが多く、実用化に向けた課題もあります。反応速度の向上、蓄熱材の耐久性向上、システムコストの低減などが主な技術課題です。しかし、高密度で長期間の熱保存が可能という特性は、季節間の熱融通や、大規模な熱エネルギーマネジメントに革新をもたらす可能性があります。今後の技術開発により、産業分野での実用化が期待される先進的な蓄熱技術です。

化学蓄熱システムの原理と構成

排熱利用に関するよくある質問(FAQ)

どの程度の廃熱量があれば排熱回収システムの導入が経済的に成立するのか

排熱回収システムの経済性は、廃熱の温度と熱量の両方によって決まります。一般的な目安としては、150℃以上の排ガスで、熱量換算で500kW以上の廃熱があれば、廃熱ボイラーやエコノマイザーの導入が経済的に成立する可能性が高いとされています。熱量が500kW未満でも、廃熱の温度が高い場合や、燃料費が高い場合には経済性が確保できることがあります。

一方、100℃以下の低温排熱の場合、ヒートポンプを用いた温度昇温が必要となり、電力コストも考慮する必要があります。利用ヒートポンプのCOPが3.0の場合、投入電力の3倍の熱量を回収できますが、電力料金と燃料費の価格差によって経済性が左右されます。低温排熱の場合、熱量が1,000kW以上あることが望ましいとされています。

廃熱回収システムの耐用年数とメンテナンスコストはどの程度か

廃熱回収システムの主要機器の耐用年数は、機器の種類と運転条件によって異なりますが、一般的には以下の通りです。廃熱ボイラーは15~20年、プレート式熱交換器は10~15年、シェル&チューブ式熱交換器は15~20年、吸収式冷凍機は15~20年程度とされています。ただし、排ガス中の腐食性成分の影響を受ける場合や、適切なメンテナンスが行われない場合は、これより短くなることがあります。

廃熱回収により削減できるco2排出量はどのように算定するのか

廃熱回収によるco2排出量の削減効果は、削減された燃料消費量に燃料のco2排出係数を乗じて算定します。重油の場合、1kLあたり約2.7トンのco2排出、都市ガスの場合、1,000Nm³あたり約2.3トンのco2排出とされています。蒸気削減量から算定する場合は、まず蒸気1トンあたりの燃料消費量を算出し、それにco2排出係数を乗じます。

排熱回収システム導入時の補助金制度にはどのようなものがあるか

排熱回収システムの導入に活用できる主な補助金制度としては、経済産業省の「省エネルギー設備投資に係る利子補給金」や「エネルギー使用合理化等事業者支援事業」があります。これらの制度では、省エネ効果が一定基準以上の設備投資に対して、投資額の1/3程度の補助金が交付される場合があります。対象となる設備には、廃熱ボイラー、高効率熱交換器、利用ヒートポンプ、吸収式冷凍機などが含まれます。

地方自治体独自の補助金制度もあり、自治体によっては省エネ設備導入に対する上乗せ補助を行っている場合があります。また、税制優遇措置として、中小企業経営強化税制や中小企業投資促進税制により、特別償却や税額控除を受けられる場合もあります。これらの制度を組み合わせることで、実質的な投資負担を大幅に軽減し、投資回収期間を短縮できます。制度の詳細や申請要件は年度ごとに変更されることがあるため、最新情報の確認が重要です。

排熱利用設備のメンテナンスはほとんど必要ないのですか?

近年の排熱回収機器は信頼性が高く、適切な仕様で設計されていればメンテナンスはほとんど最小限で済みます。当社が提供する廃熱ボイラーや熱交換器は、排気ガスによる汚れや腐食にも強い設計となっており、定期点検のみで長期安定稼働が可能です。予防保全サービスもご用意しています。

排気ガスからの熱回収における具体的な解決策を教えてください

排気ガスの熱回収には、温度や成分に応じた最適な解決策があります。当社では廃熱ボイラー、エコノマイザー、熱交換器など、お客様の仕様に合わせた機器を提案します。高温排ガスから低温まで幅広く対応し、回収した熱エネルギーを蒸気や温水として再利用することで、燃料費削減とCO2排出量低減を実現します。