EDRとは入門から実践まで【30分で分かる導入・運用ガイド】2025年4月28日セキュリティー エンドポイントセキュリティ サイバーセキュリティ対策 セキュリティ製品導入 近年、サイバー攻撃の手法が高度化・巧妙化する中で、従来のアンチウイルスソフトでは防ぎきれない脅威が増加しています。そこで注目されているのが、EDR(Endpoint Detection and Response)です。本記事では、EDRの基本的な機能から導入のメリット、具体的な活用方法まで、企業のセキュリティ担当者が押さえておくべきポイントをわかりやすく解説します。目次1. EDRの基礎知識2. EDRの具体的な仕組みと効果3. EDRとEPPの違いを徹底解説4. EDRシステムの選定ポイント5. EDR導入のステップと注意点6. EDRの効果的な運用方法7. EDRの最新動向と将来展望8. EDR導入事例と効果測定よくある質問と回答1. EDRの基礎知識企業のセキュリティ対策において、エンドポイントの防御は最も重要な課題の一つとなっています。特に近年、サイバー攻撃の手口が高度化し、従来のアンチウイルスソフトだけでは対応が難しい状況が続いています。この課題を解決するために注目されているのが、EDR(Endpoint Detection and Response)です。1.1. EDRとはEDRとは、エンドポイントでのセキュリティ対策を強化するための新しいアプローチです。従来のアンチウイルスソフトが既知のマルウェアを検知して防御する「予防」に重点を置いているのに対し、EDRは未知のマルウェアやサイバー攻撃による不審な挙動を検知し、迅速な対応を可能にする「検知と対応」に焦点を当てています。具体的には、EDRは以下の機能を提供します。・エンドポイントでの常時監視とデータ収集・リアルタイムな脅威検知・インシデント発生時の自動対応・詳細な調査と分析機能1.2. EDRが注目される背景EDRが注目されている背景には、サイバー攻撃の変化があります。従来の境界型防御やアンチウイルスソフトでは防ぎきれない新たな脅威が増加しており、企業のセキュリティ対策の見直しが求められています。特に以下のような状況が、EDRの必要性を高めています。・標的型攻撃やランサムウェアの増加・テレワークの普及によるエンドポイントの分散化・未知のマルウェアによる被害の拡大・セキュリティインシデントへの迅速な対応要求1.3. EDRの主要機能と特徴EDRの主要機能は、大きく以下の4つに分類されます。1. リアルタイムモニタリングエンドポイントの挙動を常時監視し、不審な活動を検知します。プロセスの実行状況、ファイルの変更、ネットワーク通信など、様々なデータを収集・分析します。2. 脅威の検知と分析収集したデータを基に、機械学習やAIを活用して脅威を特定します。既知のマルウェアだけでなく、未知の脅威も検知可能です。3. インシデント対応の自動化検知した脅威に対して、自動的に対応アクションを実行します。感染したプロセスの停止、ネットワークの遮断などを即座に行います。4. 詳細な調査機能インシデントの発生経緯や影響範囲を詳細に調査できます。ログデータの分析や可視化により、セキュリティ担当者の調査を支援します。1.4. 従来のセキュリティ対策との違い従来のセキュリティ対策とEDRには、以下のような重要な違いがあります。1. 検知アプローチの違い従来のアンチウイルスソフトは、既知のマルウェアのパターンマッチングによる検知が中心です。一方EDRは、振る舞い検知や機械学習による異常検知を採用しています。2. 対応能力の違いアンチウイルスソフトは、主に脅威の予防に重点を置いています。EDRは検知から対応まで一貫した機能を提供し、インシデント発生後の被害を最小限に抑える能力を持っています。2. EDRの具体的な仕組みと効果2.1. エンドポイントでの脅威検知の仕組みEDRは、エンドポイントで以下のような検知の仕組みを実装しています。1. 動的解析による検知プロセスの実行状況、ファイルアクセス、レジストリの変更などをリアルタイムで監視し、不審な挙動を検知します。2. 機械学習による異常検知正常な挙動のパターンを学習し、それから逸脱する行動を検知します。これにより、未知のマルウェアによる攻撃も検出可能です。2.2. リアルタイムモニタリングの実現方法EDRのリアルタイムモニタリングは、以下の要素で構成されています。1. エージェントによる監視各エンドポイントにインストールされたエージェントが、システムの動作を常時監視します。2. データの収集と転送収集したデータは、リアルタイムで中央管理サーバーに送信され、分析されます。2.3. インシデント対応プロセスの自動化EDRは、以下のような自動対応機能を提供します。1. 即時対応・マルウェアの検知時に自動隔離・不正プロセスの強制終了・ネットワーク接続の遮断2. 二次被害の防止・感染拡大の防止・データ漏洩の阻止・システムの保護2.4. ログデータの収集と分析方法EDRは、以下のようなログデータを収集・分析します。1. 収集するログの種類・プロセス実行ログ・ファイルアクセスログ・ネットワーク通信ログ・システム設定変更ログ2. 分析手法・相関分析による攻撃チェーンの特定・統計的分析による異常検知・タイムライン分析によるインシデントの追跡3. EDRとEPPの違いを徹底解説3.1. EPPの基本機能と限界EPP(Endpoint Protection Platform)は、従来型のエンドポイントセキュリティ製品です。主に以下のような機能を提供します。EPPの基本機能・アンチウイルス機能・ファイアウォール機能・デバイス制御機能しかし、EPPには以下のような限界があります。・未知のマルウェアへの対応が困難・インシデント発生後の対応能力が限定的・詳細な調査機能の不足3.2. EDRが提供する付加価値EDRは、EPPの限界を補完する以下のような付加価値を提供します。1. 高度な検知能力・振る舞い検知による未知の脅威への対応・機械学習による異常検知・多層的な検知アプローチ2. インシデント対応機能・自動対応による被害の最小化・詳細な調査機能・インシデントの可視化3.3. 両者の組み合わせによる相乗効果EDRとEPPを組み合わせることで、以下のような相乗効果が期待できます。1. 多層防御の実現・予防と検知・対応の統合・包括的なエンドポイントセキュリティの確立2. 運用効率の向上・統合管理による効率化・セキュリティ対策の最適化3.4. 企業規模別の選択ポイント企業規模によって、EDRとEPPの選択は以下のように考慮する必要があります。大企業向けの選択ポイント・高度な脅威への対応能力・大規模環境での管理効率・専門チームによる運用体制中小企業向けの選択ポイント・導入・運用コストのバランス・運用負荷の軽減・必要最小限の機能選択4. EDRシステムの選定ポイントEDRシステムの選定は、企業のセキュリティ戦略において重要な決定事項です。適切な製品を選択するために、以下のポイントを詳しく見ていきましょう。4.1. 主要ベンダーの比較EDR市場における主要ベンダーは、以下のような特徴を持っています。・グローバルベンダー:豊富な脅威インテリジェンスと高度な検知能力・国内ベンダー:日本企業特有のニーズへの対応と手厚いサポート体制・特化型ベンダー:特定の業界や規模に最適化された機能提供製品選定においては、以下の観点での比較が重要です。・検知精度と誤検知率・リアルタイム性能・管理機能の使いやすさ・インシデント対応の自動化レベル4.2. 必要な機能要件の洗い出しEDRに求められる機能要件は、企業の状況に応じて以下のように整理できます。1. 基本的な要件・エンドポイントの常時監視機能・リアルタイムな脅威検知・インシデント対応の自動化・ログデータの収集と分析2. 拡張的な要件・クラウド環境との連携・モバイルデバイスの対応・サードパーティ製品との統合・カスタマイズ可能なレポート機能4.3. コスト比較の観点EDRの導入費用は、以下の要素で構成されています。1. 初期費用・ライセンス費用・導入支援サービス・環境構築費用・初期設定費用2. 運用費用・保守サポート費用・アップデート費用・トレーニング費用・運用管理工数4.4. サポート体制の評価基準ベンダーのサポート体制は、以下の基準で評価します。・24時間365日の対応体制・日本語によるテクニカルサポート・インシデント発生時の緊急対応・定期的なトレーニングプログラム5. EDR導入のステップと注意点5.1. 導入前の準備事項EDR導入の成功には、以下の準備が必要です。1. 現状分析・既存のセキュリティ対策の評価・保護すべき資産の特定・リスクアセスメントの実施2. 導入計画の策定・スケジュール設定・必要なリソースの確保・責任者と担当者の選定5.2. システム要件の確認EDRを導入する環境には、以下の要件が必要です。1. ハードウェア要件・エンドポイントの性能要件・ネットワーク帯域・ストレージ容量2. ソフトウェア要件・対応OS・必要なミドルウェア・既存システムとの互換性5.3. 運用体制の構築効果的な運用体制には、以下の要素が必要です。1. 組織体制・セキュリティ運用チームの編成・役割と責任の明確化・エスカレーションフローの確立2. プロセス整備・日常的な監視手順・インシデント対応手順・定期的な評価プロセス5.4. 社内教育の実施方法EDRの効果的な活用には、以下の教育が必要です。1. 管理者向け教育・システム設定と管理方法・脅威分析の手法・インシデント対応手順2. エンドユーザー向け教育・セキュリティ意識の向上・基本的な対応手順・報告ルールの徹底この記事を読んだ人へのおすすめ記事 「基幹システム刷新事例のご紹介」 「年功序列と風通しの課題を超えて:食品原料メーカーにおける組織改革成功事例」 「建設業DXの鍵:PLM導入で部材積算と連携を効率化」 「財団の助成システム構築でガバナンスを強化:短期間で実現したシステム開発の成功事例」 6. EDRの効果的な運用方法6.1. 日常的な監視体制の確立効果的な監視体制には、以下の要素が必要です。1. 監視項目の設定・重要度に応じた監視レベル・アラートのしきい値設定・モニタリング範囲の定義2. 監視プロセス・定期的なログ確認・アラート対応手順・レポーティング方法6.2. インシデント発生時の対応手順インシデント対応は、以下の手順で実施します。1. 初動対応・アラートの確認と分類・影響範囲の特定・初期対応の実施2. 本格対応・詳細調査の実施・対策の実施・復旧作業の実行6.3. 定期的な評価とチューニングシステムの最適化には、以下の作業が必要です。1. 評価項目・検知精度の評価・誤検知率の確認・パフォーマンスの測定2. チューニング項目・検知ルールの調整・アラートしきい値の最適化・ポリシーの見直し6.4. 運用状況の可視化と報告効果的な報告には、以下の要素が重要です。1. 報告項目・検知されたインシデントの統計・対応状況の進捗・システムの健全性指標2. 報告方法・定期報告の実施・ダッシュボードの活用・経営層向けサマリーの作成7. EDRの最新動向と将来展望エンドポイントセキュリティの分野では、技術革新が続いています。ここでは、EDRの最新トレンドと今後の展望について解説します。7.1. AI・機械学習の活用状況EDRにおけるAI・機械学習の活用は、以下の領域で進んでいます。1. 検知精度の向上・行動分析の高度化・パターン認識の精緻化・リアルタイム学習による適応能力の向上2. 自動対応の強化・インシデント対応の自動判断・リスクスコアリングの精度向上・予測分析による予防的対応7.2. クラウド連携の進化クラウドテクノロジーとの連携により、以下の進化が実現しています。1. クラウドネイティブな保護・コンテナ環境の保護・クラウドワークロードの監視・マルチクラウド環境への対応2. 脅威インテリジェンスの強化・グローバルな脅威情報の共有・リアルタイムな脅威フィード・インテリジェンスの自動更新7.3. 統合セキュリティ基盤としての発展EDRは、以下のような統合セキュリティプラットフォームへと進化しています。1. 統合機能の拡大・XDR(Extended Detection and Response)への発展・SIEM/SOCとの連携強化・セキュリティオーケストレーションの実現2. 運用効率の向上・統合管理コンソールの提供・自動化機能の拡充・ワークフロー最適化の実現7.4. 新しい脅威への対応力新たなサイバー攻撃に対して、以下の対応力が強化されています。1. 高度な攻撃への対応・フィルムレス攻撃の検知・サプライチェーン攻撃への対策・ゼロデイ攻撃への即時対応2. 新しい防御技術・振る舞い分析の高度化・エンドポイントの隔離技術・自動修復機能の強化8. EDR導入事例と効果測定8.1. 業種別の導入事例各業種におけるEDR導入の特徴的な事例を紹介します。1. 製造業での導入事例・工場システムの保護強化・制御系ネットワークの監視・生産ライン停止の防止2. 金融業での導入事例・取引システムの保護・顧客情報の漏洩防止・コンプライアンス対応の強化3. 医療機関での導入事例・医療機器の保護・患者データの安全確保・24時間稼働環境の維持8.2. 導入による具体的な成果EDR導入により、以下のような具体的な成果が報告されています。1. セキュリティ面での成果・インシデント検知時間の短縮・未知の脅威への対応力向上・セキュリティ態勢の強化2. 運用面での成果・運用工数の削減・インシデント対応の効率化・可視性の向上8.3. ROIの計測方法EDR導入のROIは、以下の要素から計測します。1. 定量的な効果・インシデント対応時間の削減率・セキュリティ事故の防止効果・運用コストの削減額2. 定性的な効果・セキュリティ体制の強化・従業員の意識向上・ビジネス継続性の確保8.4. 失敗から学ぶ教訓EDR導入の失敗事例から、以下の教訓が得られています。1. 導入時の注意点・十分な事前準備の必要性・段階的な展開の重要性・運用体制の整備2. 運用面での教訓・適切な設定の重要性・定期的な見直しの必要性・教育・訓練の継続実施3. 改善のポイント・アラート設定の最適化・運用プロセスの継続的改善・ベンダーとの連携強化これらの失敗事例と教訓を活かすことで、より効果的なEDRの導入と運用が可能となります。組織の特性に応じた適切な対応を行うことで、セキュリティ対策の実効性を高めることができます。よくある質問と回答EDRの導入費用はどのくらいかかりますか?EDRの導入費用は、エンドポイントの数や必要な機能によって大きく異なります。一般的な目安として、1エンドポイントあたり年間1万円から3万円程度です。これには、ライセンス費用、初期設定費用、保守サポート費用などが含まれます。なお、大規模な導入の場合は、ボリュームディスカウントが適用される場合もあります。EDRの導入に必要な社内体制はどのようなものですか?EDRを効果的に運用するためには、セキュリティ担当者の配置が必要です。最低限、システム管理者とセキュリティ監視担当者の役割を明確にする必要があります。また、インシデント発生時の対応チームの編成や、エスカレーションフローの確立も重要です。小規模組織の場合は、マネージドサービスの活用も検討に値します。従来のアンチウイルスソフトとの併用は必要ですか?多くの場合、EDRと従来のアンチウイルスソフトの併用が推奨されます。EDRは主に未知の脅威の検知と対応に強みがありますが、既知のマルウェア対策としては従来のアンチウイルスソフトも効果的です。ただし、EDR製品によっては、アンチウイルス機能を含む統合的なセキュリティ機能を提供しているものもあります。EDRの誤検知への対応はどうすればよいですか?誤検知への対応として、以下の取り組みが重要です。まず、導入初期は検知ルールを段階的に適用し、環境に合わせて調整します。また、ホワイトリストの作成や、検知しきい値の適切な設定が必要です。定期的なチューニングと、検知ルールの見直しも重要な対応となります。クラウドサービスやモバイルデバイスにもEDRは対応していますか?最新のEDR製品の多くは、クラウドサービスやモバイルデバイスにも対応しています。クラウドワークロードの保護、コンテナ環境の監視、モバイルデバイス管理(MDM)との連携などの機能を提供しています。ただし、製品によって対応範囲は異なるため、導入時に確認が必要です