新規事業の立ち上げや投資判断、事業計画の策定において「市場規模」の把握は不可欠です。しかし、「市場規模の正確な調べ方」「信頼性の高いデータの入手先」「効果的な社内提案への活用法」など、実務で直面する課題は少なくありません。本記事では、上場企業でビジネス戦略や事業開発に携わる30-40代のビジネスパーソンに向けて、TAM・SAM・SOMの概念から、トップダウン・ボトムアップの調査手法、政府統計やレポートの活用法、さらにはターゲット市場の設定、事業計画書での効果的な示し方まで、市場規模に関する実践的知識を体系的に解説します。
目次 [閉じる]
1. 市場規模の基本概念
市場規模の基本を理解することは、あらゆるビジネス判断の土台となります。特に新規事業や投資判断においては、市場の大きさや成長性を正確に把握することが不可欠です。この章では市場規模の基本的な考え方から、なぜそれが重要なのかを解説します。
1-1. 市場規模とは何か
市場規模とは、特定の製品やサービスに対する市場全体の金銭的価値を表す指標です。通常は1年間における総売上高や出荷額として算出されます。例えば「日本の自動車市場規模は年間15兆円」などと表現され、その市場のポテンシャルや事業機会の大きさを示す重要な指標となります。
市場規模は主に「金額ベース」と「数量ベース」の2種類で表されます。金額ベースでは総売上高や総支出額、数量ベースでは総販売台数や利用者数などが用いられます。事業計画や投資判断においては、この市場規模を正確に把握することが戦略立案の出発点となるのです。
1-2. TAM・SAM・SOMの違い
市場規模を論じる際に頻繁に用いられる概念に「TAM」「SAM」「SOM」があります。これらは市場の捉え方の粒度を示す指標で、新規事業計画において市場のポテンシャルを段階的に精緻化するために重要です。
TAM(Total Addressable Market)は、製品やサービスが対象とする市場全体の最大規模を指します。例えば「世界のスマートフォン市場全体」などが該当します。
SAM(Serviceable Available Market)は、自社のビジネスモデルや技術で実際にアプローチ可能な市場規模を指します。例えば「アジアの高機能スマートフォン市場」などです。
SOM(Serviceable Obtainable Market)は、現実的に自社が獲得可能な市場シェアを示します。「今後5年間で日本の高機能スマートフォン市場の20%」などと表現されます。
1-3. 市場規模を把握する重要性
市場規模を把握することは、事業戦略策定や投資判断において極めて重要です。その主な理由は以下の通りです。
第一に、市場規模は事業機会の大きさを示す指標となります。大きな市場は大きな売上機会を意味し、小さな市場ではたとえ高いシェアを獲得しても売上の上限が制約されます。
第二に、市場の成長性を評価する基準になります。市場規模の経年変化は、その分野の将来性を判断する重要な材料となるでしょう。
第三に、経営資源の最適配分を判断する基準となります。複数の事業機会がある場合、市場規模とその成長性は投資優先度を決定する重要な要素です。
1-4. 業種・業界別の市場規模の特徴
市場規模は業種や業界によって大きく特性が異なります。自社のターゲット市場の特性を正確に理解することで、より精度の高い市場分析が可能になります。
BtoC市場では人口動態や消費者行動が、BtoB市場では企業数や設備投資動向が市場規模に大きく影響します。例えば、食品や日用品のような生活必需品は市場規模が大きく安定している一方、先端技術を活用した新興市場は規模は小さくとも成長率が高いという特徴があります。
また、デジタル化の進展によって従来の業界区分が曖昧になり、複数の業界にまたがる「越境市場」も増加しています。こうした市場では、従来の統計データだけでは正確な市場規模を把握できないケースも増えています。

2. 市場規模の調査方法
市場規模の調査方法は大きく分けてトップダウンアプローチとボトムアップアプローチの2種類があります。この章では、それぞれの手法の特徴と適切な使い分け、信頼性の高いデータソースの選び方について解説します。
2-1. トップダウンアプローチ
トップダウンアプローチとは、全体市場から段階的に自社のターゲット市場を絞り込んでいく調査手法です。政府統計や調査会社レポートなどの二次データを活用し、大きな市場から自社の関連する部分を推計していきます。
例えば、日本の自動車市場全体の規模から、自社が対象とする特定の車種やグレードの市場を推計するといった方法です。このアプローチのメリットは、短期間で広範な市場俯瞰が可能な点です。一方、デメリットは詳細なセグメントへの分解精度が低くなる可能性がある点です。
トップダウンアプローチは、新規事業の初期検討や投資判断など、スピードが求められる局面で有効です。また、既存の統計データが整備されている成熟市場の分析にも適しています。
2-2. ボトムアップアプローチ
ボトムアップアプローチとは、個別顧客や製品単位の詳細データから積み上げて市場規模を算出する手法です。顧客インタビューや現場調査などの一次データを中心に、より詳細な市場構造を把握します。
例えば、「潜在顧客数 × 平均購入単価 × 購入頻度」といった形で市場規模を積算していきます。このアプローチのメリットは、市場構造の詳細な理解が可能な点です。デメリットは調査に時間とコストがかかる点です。
ボトムアップアプローチは、新興市場や統計データが不足している分野、または詳細な市場セグメント分析が必要な場合に特に有効です。また、社内のマーケティング戦略や営業計画の策定においても、現場の実態に即した精度の高い数値を得ることができます。
2-3. 信頼性の高い情報源の選び方
市場規模調査の精度は、情報源の信頼性に大きく依存します。信頼性の高い情報源を選ぶ際の基準として、以下のポイントが重要です。
第一に、データの収集方法と調査設計が明示されているかを確認します。調査対象や方法論が明確に示されているデータほど信頼性が高いと言えます。
第二に、発行元の専門性と中立性を評価します。特定の業界に特化した調査会社や、利害関係のない第三者機関のデータは信頼性が高い傾向にあります。
第三に、データの更新頻度と最新性を確認します。特に成長率の高い市場では、古いデータは現状を正確に反映していない可能性があります。複数の情報源からデータをクロスチェックすることも、精度向上に効果的です。
2-4. 調査会社のレポート活用法
調査会社のマーケットレポートは、市場規模データを効率的に入手するための強力なツールです。しかし、高額なコストがかかることも多いため、効果的な活用法を理解することが重要です。
まず、レポート選定の際には「目次」や「サンプルページ」を詳細に確認し、自社の必要とする情報が含まれているか精査します。多くの調査会社は、こうした予備情報を無料で提供しています。
次に、レポートの「エグゼクティブサマリー」から全体像を把握し、必要な箇所を効率的に読み込むことで、時間の節約につながります。また、定量データだけでなく、市場トレンドや競合分析などの定性情報も、自社の戦略立案に有益な示唆を与えてくれます。
さらに、社内稟議や報告書作成の際には、引用元として調査会社名を明記することで、データの信頼性を担保できます。これにより、提案内容の説得力が大幅に向上するでしょう。

3. 市場規模の算出方法
市場規模の算出は、単純なようで実際には様々な手法や留意点があります。この章では、具体的な計算式や実例を交えながら、精度の高い市場規模推計のためのフレームワークを解説します。
3-1. 基本的な算出フレームワーク
市場規模を算出する際の基本的なフレームワークには、主に以下の3つのアプローチがあります。
1つ目は「需要ベースアプローチ」で、「対象顧客数 × 平均単価 × 購入頻度」などの公式で算出します。例えば、企業向けクラウドサービスの市場規模は「法人数 × 導入率 × 平均契約額」として計算できます。
2つ目は「供給ベースアプローチ」で、業界の総生産額や売上高から算出します。例えば、「主要プレイヤーの売上合計 ÷ 合計シェア」といった方法です。
3つ目は「類似市場参照アプローチ」で、類似した市場の規模や推移を参考に推計します。新興市場など直接データが少ない場合に有効です。
精度の高い市場規模推計のためには、これらのアプローチを組み合わせて検証することが推奨されます。
3-2. 市場規模の計算式と具体例
市場規模を計算する具体的な式は、分析対象によって異なります。以下に代表的な計算式と具体例を紹介します。
BtoC市場の場合:「対象人口 × 普及率 × 平均単価 × 年間購入頻度」
例)スマートウォッチ市場
「日本の20-60代人口(8,000万人) × 普及率(15%) × 平均単価(3万円) × 買替サイクル(1/3回/年)」
= 1,200万個 × 3万円 × 1/3 = 1,200億円
BtoB市場の場合:「対象企業数 × 導入率 × 平均導入コスト」
例)企業向けセキュリティソフトウェア市場
「日本の中小企業数(360万社) × 導入率(60%) × 平均導入コスト(50万円/年)」
= 216万社 × 50万円 = 1.08兆円
これらの計算式を用いる際は、各パラメータの根拠を明確にし、社内での議論や意思決定に活用することが重要です。
3-3. 推計における留意点
市場規模の推計においては、精度を高めるための重要な留意点があります。
まず、「二重計上」に注意が必要です。例えば、BtoBtoCのビジネスモデルでは、中間流通と小売の売上を合算すると市場規模を過大評価してしまいます。
次に、「市場の境界線の定義」を明確にします。どこまでを対象市場とするかの定義によって、計算結果は大きく変わります。例えば「健康食品市場」を考える場合、サプリメントだけなのか、機能性食品も含むのかで規模が異なります。
また、「代替品・競合サービスの範囲」も慎重に検討する必要があります。特に新規事業の場合、従来にない製品カテゴリを創出することもあり、既存の市場区分に当てはまらないケースがあります。
さらに、推計値にはレンジ(範囲)を持たせることも重要です。単一の数値ではなく、「最小〜最大」や「楽観〜悲観」シナリオで示すことで、不確実性を適切に表現できます。
3-4. 成長率の算出方法
市場の成長率は、市場規模と並んで事業計画や投資判断において重要な指標です。成長率の算出方法としては、主に以下の3つがあります。
「過去トレンドからの予測」は、過去数年間の市場規模データから年平均成長率(CAGR)を算出し、それを将来に延長する方法です。計算式は「CAGR = (最終年の市場規模 ÷ 初年度の市場規模)^(1/経過年数) – 1」です。
「普及率モデル」は、製品やサービスの普及サイクルに基づいて成長率を予測します。特に新製品の市場では、S字カーブ(初期は緩やかに成長し、その後急速に拡大、最終的に飽和)に沿った予測が有効です。
「外部要因分析」は、政策変更や技術革新などの外部要因が市場に与える影響を考慮した予測法です。例えば、法規制の変更によって市場が急拡大するケースなどが該当します。
これらの手法を組み合わせることで、より精度の高い成長率予測が可能になります。成長率の精度は、事業の売上予測や投資回収計画に直結するため、慎重な検討が求められます。
4. 市場分析のためのデータ活用
市場規模の調査においては、様々なデータソースを効果的に活用することが重要です。この章では、無料で入手できる政府統計から、有料の調査レポートまで、様々なデータ源の特徴と活用方法について解説します。
4-1. 政府統計データの活用方法
政府が提供する統計データは、市場規模調査における最も基本的かつ信頼性の高い情報源の一つです。日本では「e-Stat(政府統計の総合窓口)」を通じて、様々な統計情報が無料で公開されています。
例えば、経済センサスや工業統計調査は、産業別の事業所数・従業者数・売上高などの基礎データを提供しており、市場規模の基盤となるデータとして活用できます。また、家計調査や全国消費実態調査は、消費者の支出動向を把握する上で役立ちます。
政府統計データを活用する際のポイントは、調査の周期性(年次・月次)や調査手法、カバー範囲を理解することです。また、産業分類コード(日本標準産業分類)を理解すると、必要なデータを効率的に抽出できます。自社の事業領域に関連する統計データを定期的にチェックする習慣をつけることで、市場動向の変化を早期に捉えることが可能になります。
4-2. 業界団体・協会データの入手法
業界団体や協会が発表するデータは、特定産業の詳細な市場動向を把握するのに極めて有効です。これらの団体は会員企業からの情報を集約し、業界全体の統計として公開しています。
例えば、電子情報技術産業協会(JEITA)は電子機器市場の詳細データを、日本製薬工業協会(JPMA)は医薬品市場のデータを定期的に発表しています。こうした業界団体のデータは、政府統計よりも専門的かつ詳細であることが多く、市場セグメントごとの動向把握に役立ちます。
業界団体のデータを入手するには、各団体のウェブサイトを定期的にチェックすることが基本です。多くの団体は会員限定で詳細データを提供していますが、プレスリリースや年次レポートの形で一般にも公開している情報もあります。また、業界セミナーやカンファレンスに参加することで、最新の市場動向や非公開データにアクセスできる場合もあります。
4-3. 海外市場の規模調査のポイント
グローバル展開や海外市場参入を検討する際には、海外市場の規模調査が不可欠です。海外市場調査特有のポイントとして、以下が挙げられます。
まず、各国・地域の統計基準や定義の違いに注意が必要です。例えば、産業分類や市場セグメントの定義は国によって異なることがあります。また、為替変動の影響を考慮し、現地通貨ベースと米ドルや円換算のデータを併用することで、より正確な市場把握が可能になります。
国際機関のデータも有用です。OECD、世界銀行、国連などの国際機関は、標準化された手法で各国のデータを収集・公開しており、国際比較に適しています。また、各国政府の統計局や経済産業省に相当する機関のウェブサイトも、現地市場の基礎データを提供しています。
さらに、現地のビジネス慣行や消費者行動の違いも考慮した調査が必要です。これには、現地パートナーや専門家の知見を活用することが効果的でしょう。
4-4. 無料で入手できる市場データ
市場調査には必ずしも高額な予算が必要なわけではありません。無料で入手できる質の高い市場データも数多く存在します。
まず、各省庁の「白書」や「レポート」は、特定分野の市場動向や政策動向を包括的に理解するのに役立ちます。経済産業省の「ものづくり白書」や総務省の「情報通信白書」などが代表的です。
また、大手コンサルティングファームや投資銀行のレポートも、要約版や一部データは無料で公開されていることがあります。McKinsey GlobalInstituteやBCG、Goldman Sachsなどが定期的に公開するレポートは、グローバルな市場トレンドの把握に有用です。
さらに、学術論文や研究機関のワーキングペーパーも、専門性の高い市場データを含んでいることがあります。Google Scholarなどの学術検索エンジンを活用すると、こうした情報に効率的にアクセスできます。
上場企業のIR資料(決算説明会資料、アニュアルレポートなど)も、競合分析や市場動向把握の貴重な情報源です。特に業界リーダー企業の資料には、市場全体の見通しや成長率予測が含まれていることが多いでしょう。

5. ターゲット市場の設定と分析
市場規模の把握と並んで重要なのが、自社のターゲット市場を明確に設定し、その特性を深く理解することです。この章では、効果的な市場セグメンテーションの方法から、ニッチ市場の分析、競合ポジショニングまでを解説します。
5-1. 効果的なセグメンテーション
市場セグメンテーションとは、大きな市場を同質性のある顧客グループに分割し、それぞれの特性に合わせた戦略を立案するプロセスです。効果的なセグメンテーションは、限られた経営資源を最適に配分するための基盤となります。
BtoC市場では、主に「デモグラフィック(年齢、性別、所得など)」「サイコグラフィック(価値観、ライフスタイルなど)」「行動特性(購買頻度、ブランド忠誠度など)」「地理的要因」による分類が一般的です。
一方、BtoB市場では、「業種・業界」「企業規模」「部門・職種」「購買パターン」などによるセグメンテーションが有効です。
理想的なセグメントは、内部で同質的かつセグメント間で異質的であり、測定可能で十分な規模を持ち、かつアクセス可能であることが条件です。新規事業開発においては、市場セグメンテーションを通じて、自社の強みを最大限に発揮できる「ブルーオーシャン」を特定することが重要です。
5-2. ニッチ市場の規模推計
新規事業やイノベーションの機会は、しばしば既存の大きな市場の中のニッチセグメントに存在します。しかし、ニッチ市場は定義上、統計データや公開情報が限られていることが多く、規模推計には工夫が必要です。
ニッチ市場の規模を推計する方法としては、「類推法」と「積み上げ法」の組み合わせが有効です。類推法では、類似市場の構造や成長パターンを参考に推計します。例えば、「米国市場の日本市場に対する比率」を他のカテゴリで算出し、それを未知の市場に適用する方法などです。
積み上げ法では、ターゲット顧客の特性をできるだけ詳細に定義し、各層の人数や企業数を積算していきます。例えば、「特定の年齢・所得層 × 特定の趣味嗜好を持つ割合 × 購買意向率」といった形で、ボトムアップに市場規模を算出します。
ニッチ市場の分析では、公開データだけでなく、専門家インタビューやパイロット調査も有効です。業界の有識者や先駆的ユーザーへのヒアリングを通じて、市場の特性や成長可能性についての洞察を得ることができます。
5-3. 潜在市場と顕在市場の見極め方
市場規模を検討する際には、現在の「顕在市場」だけでなく、将来の「潜在市場」も視野に入れることが重要です。特に新規事業や革新的なプロダクトの場合、潜在市場の規模が事業成功の鍵を握ることがあります。
顕在市場とは、現在すでに商品・サービスを購入している顧客による市場であり、比較的簡単に測定できます。一方、潜在市場とは、現在は購入していないが、条件が整えば将来的に顧客になり得る層も含めた市場です。
潜在市場を見極めるポイントとしては、「解決される顧客の課題の普遍性」「代替手段の有無と限界」「採用障壁の高さ」などがあります。例えば、「多くの人が抱える根本的な課題を解決する」「既存の代替手段には明確な限界がある」「採用障壁が技術進化や価格低下によって下がりつつある」といった条件が揃うと、潜在市場が顕在化する可能性が高まります。
潜在市場の規模推計には、類似サービスの普及曲線の分析や、「Jobs-to-be-Done」理論に基づくニーズ分析が有効です。また、試験的なマーケティング活動を通じて市場の反応を測定する方法も実践的です。
5-4. 競合他社のポジショニング分析
市場規模の把握と並行して、競合他社の分析を行うことで、市場における自社の位置づけと機会を特定できます。競合分析の基本的なステップは以下の通りです。
まず、競合を「直接競合」「間接競合」「潜在競合」に分類します。直接競合は同じ製品・サービスを提供する企業、間接競合は異なる方法で同じ顧客ニーズを満たす企業、潜在競合は現在は競合でないが将来参入の可能性がある企業です。
次に、各競合の「強み・弱み」「市場シェア」「価格戦略」「流通チャネル」「顧客セグメント」などを分析します。公開情報だけでなく、競合製品の実際の利用体験や顧客インタビューも有益な情報源です。
これらの情報を基に、「ポジショニングマップ」を作成し、市場空白領域(ホワイトスペース)を特定します。例えば、「価格帯と機能性」「専門性と使いやすさ」などの軸で2次元マップを作ると、競合が手薄なセグメントが可視化されます。
競合分析の結果は、事業戦略や製品開発、マーケティング計画の重要なインプットとなります。定期的な更新を行い、市場変化に応じて自社戦略を調整することが成功への鍵です。

6. 市場規模データの事業計画への活用
市場規模データを収集・分析したら、次はそれを事業計画や戦略立案に効果的に活用することが重要です。この章では、市場規模データの戦略的活用法から、説得力のある提案資料の作成方法までを解説します。
6-1. 事業計画書における市場規模の示し方
事業計画書において市場規模データを効果的に示すことは、計画の説得力と実現可能性を高める上で極めて重要です。以下に、その具体的なポイントを解説します。
まず、「全体市場→ターゲットセグメント→獲得シェア」というように、段階的に市場を絞り込んで示すことが効果的です。例えば、「日本のクラウドサービス市場全体は1兆円、その中でセキュリティ分野は1,500億円、当社がターゲットとする中小企業向けセグメントは500億円、そのうち5年間で10%のシェア獲得を目指す」といった形です。
次に、市場規模データの出典を明記し、信頼性を担保することが重要です。可能であれば、複数の情報源からのデータを示し、推計の頑健性を高めます。また、市場の成長性や変化要因についても言及し、将来予測の根拠を示すことで、長期的な事業機会の説得力が増します。
さらに、図表やグラフを用いて視覚的に表現することで、複雑な市場構造や時系列変化を分かりやすく伝えることができます。特に経営層向けのプレゼンテーションでは、視覚的な表現が理解度と説得力を高めます。
6-2. 投資判断における市場規模の重要性
新規事業や投資案件の判断において、市場規模データは意思決定の核となる重要な指標です。投資判断の文脈での市場規模の活用ポイントは以下の通りです。
第一に、「上限と下限の推計値」を示し、シナリオ分析を行うことが重要です。単一の数値ではなく、「保守的シナリオ」「基本シナリオ」「楽観的シナリオ」のように複数の可能性を検討することで、投資リスクの評価が可能になります。
第二に、市場規模と投資回収期間(ROI)の関連性を明確に示すことが有効です。例えば、「市場シェア1%獲得で投資回収が可能」「市場成長率が年10%以上維持されれば3年で黒字化」など、投資判断の閾値を市場データと紐づけて提示します。
第三に、競合状況や市場の成熟度も踏まえた総合的な判断材料を提供することが重要です。大きな市場でも競争が激しければ参入難易度は高くなります。市場規模だけでなく、「市場の魅力度」を多面的に評価する視点が求められます。
投資判断のための市場分析では、客観性と透明性を確保することが最も重要です。データの出典や推計方法を明確にし、バイアスを排除した分析結果を提示することで、健全な意思決定をサポートします。
6-3. マーケティング戦略への落とし込み
市場規模データは、効果的なマーケティング戦略の策定においても重要な役割を果たします。市場データをマーケティング戦略に落とし込む方法としては、以下のポイントが挙げられます。
まず、セグメントごとの市場規模と成長性を比較し、マーケティング予算の最適配分を行います。成長率の高いセグメントや、自社の強みを活かせるセグメントに予算を重点配分することで、投資効率を高めることができます。
次に、ターゲット顧客の市場カバー率に基づいて、プロモーション戦略を設計します。例えば、ニッチ市場をターゲットとする場合は、マスマーケティングよりも、業界特化型のイベントやデジタルマーケティングなど、効率的なアプローチが適しています。
また、市場の季節性や周期性を分析し、キャンペーンのタイミングや内容を最適化します。市場データから顧客の購買サイクルや意思決定プロセスを理解することで、適切なタイミングでのマーケティング活動が可能になります。
市場規模データは、マーケティング活動のKPI設定にも活用できます。例えば、「対象セグメントの市場シェア〇%獲得」「認知度〇%達成」など、市場全体との関連性を持った具体的な目標設定が可能になります。
6-4. 社内稟議のための効果的なデータ提示法
社内稟議や経営会議において、市場規模データを効果的に提示することは、プロジェクト承認や予算獲得の鍵となります。以下に、説得力のあるデータ提示の方法を解説します。
第一に、データの視覚化と簡潔な表現が重要です。複雑なデータも、グラフやチャートを用いて視覚的に表現することで、直感的な理解が促進されます。また、重要なポイントを3〜5つに絞り込み、簡潔に伝えることで、メッセージの印象が強まります。
第二に、「ストーリーテリング」の手法を用いることが効果的です。単なるデータの羅列ではなく、「市場の課題→解決策→期待される成果」といったストーリー形式で提示することで、聞き手の共感と理解が深まります。
第三に、社内で認知された前例や類似案件と比較することも有効です。例えば、「過去に成功した〇〇プロジェクトと同様の市場特性を持つ」「昨年承認された△△事業よりも市場成長率が高い」など、既存の理解と結びつけた説明が理解を促進します。
最後に、想定される質問や反論に対する準備も重要です。市場規模の推計方法、競合状況、リスク要因などについて、詳細なバックデータを用意しておくことで、質疑応答での説得力が高まります。社内稟議においては、データの「正確性」だけでなく「分かりやすさ」と「納得感」も重視されることを忘れてはなりません。

7. 新規事業における市場調査のケーススタディ
机上の理論だけでなく、実際のビジネスシーンでどのように市場規模調査が行われ、活用されているかを知ることは非常に有益です。この章では、BtoBとBtoCの両方の視点から、新規事業開発における市場調査の実例を紹介します。
7-1. BtoB事業の市場規模調査例
BtoB事業の市場規模調査では、対象企業の絞り込みや購買意思決定プロセスの理解が重要です。ここでは、法人向けSaaSソリューションの市場規模調査を例に解説します。
このケースでは、まず「全国の企業数」から出発し、規模別・業種別に対象を絞り込む手法が用いられました。具体的には、総務省の経済センサスから得られる企業数データをベースに、「従業員50人以上の製造業・サービス業企業」といった形でターゲットセグメントを特定しました。
次に、同業種の既存ソリューションの導入率データを参照し、潜在的な市場浸透度を推計。さらに、目標とするユーザー単価と契約継続率を掛け合わせることで、生涯顧客価値(LTV)ベースの市場規模を算出しました。
特徴的だったのは、大企業と中小企業でセグメントを分け、異なる成長予測モデルを適用した点です。大企業セグメントでは導入率の上昇が早く、一方で中小企業セグメントでは導入までの時間がかかるものの、価格感度が低下傾向にあることが分析され、段階的な市場拡大戦略の基礎データとなりました。
7-2. BtoC事業の市場規模調査例
BtoC事業の市場規模調査では、消費者の属性や行動パターンの詳細な理解が鍵となります。ここでは、健康志向の食品宅配サービスの市場規模調査を例に解説します。
この事例では、「人口統計データ」と「消費者アンケート」を組み合わせたハイブリッドアプローチが採用されました。まず、総務省の国勢調査データから、ターゲットとなる「30〜50代の都市部居住者」の人口を特定。次に、民間の消費者調査データから「健康志向の強さ」「食品宅配サービスの利用意向」などの属性情報を掛け合わせて、潜在顧客数を推計しました。
さらに、類似サービスの平均購入額と購入頻度のデータを用いて、顧客あたりの年間支出額を算出。これに潜在顧客数を掛け合わせることで、総市場規模を推計しました。
この調査の特徴は、「ペルソナ分析」を取り入れ、複数の顧客タイプごとに市場規模を細分化した点です。例えば「時間節約型」「食の品質重視型」「健康管理型」など、異なる利用動機を持つセグメントごとに市場アプローチを変える戦略立案に役立てられました。また、競合サービスのユーザーレビュー分析から、未充足ニーズを特定し、差別化要素の設計にも活用されています。
7-3. 新興市場の規模推計事例
新興市場や新カテゴリーの市場規模推計は、参考データが少なく最も難易度が高いです。ここでは、日本における電動キックボードシェアリングサービスの市場規模推計を例に解説します。
この事例では、「類似市場の発展パターン」と「海外先行事例の日本市場への適用」を組み合わせたアプローチが採用されました。まず、既に普及しているシェアサイクルの市場発展パターンを分析し、初期普及率や成長曲線のモデルを構築。次に、米国や欧州の電動キックボード市場の普及率を、都市人口密度や交通インフラの類似性を考慮して日本市場に補正適用しました。
さらに、ポテンシャルユーザーへのアンケート調査と実証実験を通じて、「利用意向率」「想定利用頻度」「許容価格帯」などのデータを収集。これらを統合し、導入初期から5年後までの段階的な市場規模予測を行いました。
この調査で特徴的だったのは、法規制や社会受容性などの「市場成長の阻害要因」を定量的にモデルに組み込んだ点です。現行法制度の制約、安全面の懸念、都市インフラの整備状況などを考慮し、複数の成長シナリオを設定。これにより、市場の「成長の天井」を現実的に予測し、持続可能なビジネスモデル設計に活用されました。
7-4. グローバル展開時の市場調査アプローチ
グローバル展開を視野に入れた市場規模調査では、国や地域ごとの特性を適切に考慮することが重要です。ここでは、日本企業によるIoTセンサーデバイスのグローバル展開を例に解説します。
この事例では、「地域クラスター分析」というアプローチが採用されました。まず、全世界の市場を経済発展度や技術インフラの類似性に基づいて「先進国市場」「新興国成長市場」「開発途上市場」などのクラスターに分類。各クラスターから代表的な国を選定し、詳細な市場調査を実施しました。
調査では、現地の業界専門家や潜在的なパートナー企業へのインタビューを重視。市場規模の定量データだけでなく、「参入障壁」「競争環境」「事業運営上の課題」などの定性情報も収集しました。また、各国の規制環境や認証要件の違いも詳細に調査し、地域ごとの参入コストと時間を算出しています。
調査結果を基に、「市場魅力度マトリクス」を作成。「市場規模と成長性」「参入の容易さ」「競争環境」「自社の強み適合度」などの軸で各国市場を評価し、参入優先順位を決定しました。特に注目すべきは、単純な市場規模だけでなく、自社の強みが活きる市場特性を重視した点です。これにより、限られたリソースを最も効果的に配分するグローバル展開ロードマップが策定されました。

8. 市場規模調査の落とし穴と対策
市場規模調査は、適切な方法で行われないと、誤った判断につながるリスクがあります。この章では、市場規模調査における典型的な落とし穴と、それを回避するための実践的なアプローチを解説します。
8-1. よくある調査ミスと対処法
市場規模調査において頻繁に見られるミスを理解し、事前に対策を講じることで、より信頼性の高い結果を得ることができます。代表的なミスとその対処法は以下の通りです。
第一に、「定義の曖昧さ」によるミスです。市場の境界線が明確に定義されていないと、範囲の解釈によって大きく数値が変わってしまいます。対処法としては、調査の最初の段階で市場の定義(含める製品・サービス、地理的範囲、顧客セグメントなど)を明確に文書化し、関係者間で共有することが重要です。
第二に、「データの鮮度」に関するミスです。古いデータや異なる時期のデータを混在させると、市場の現状を正確に反映できません。対処法としては、データの収集時期を常に記録し、一定期間(例:3年以上)経過したデータは参考値として扱うルールを設けることが有効です。
第三に、「確証バイアス」によるミスです。自社の希望的観測に合致するデータばかりを集めてしまう傾向があります。対処法としては、仮説を検証するだけでなく、反証する可能性のあるデータも積極的に収集し、多角的な検証を行うことが重要です。
8-2. 過大評価・過小評価のリスク
市場規模の過大評価や過小評価は、事業戦略や投資判断に重大な影響を与えるリスクがあります。これらのリスクとその対策について解説します。
過大評価のリスクとしては、過剰な投資や非現実的な売上目標設定により、事業の収益性や持続可能性が損なわれる可能性があります。特に新規事業においては、初期の過大な市場規模予測に基づいて大規模な組織や設備投資を行い、結果として固定費負担が重くなるケースが見られます。
過小評価のリスクとしては、有望な事業機会を逃したり、市場成長に対応できる体制構築が遅れたりする可能性があります。特に破壊的イノベーションの初期段階では、従来の市場区分や調査手法では捉えきれない成長ポテンシャルを見逃すことがあります。
これらのリスクに対する対策としては、「感度分析」と「段階的投資アプローチ」の組み合わせが有効です。市場規模に関わる重要な変数(普及率、単価、成長率など)の変動が事業成果にどう影響するかを分析し、不確実性の高いプロジェクトでは、初期投資を抑えた「実証実験」から始め、市場反応を見ながら段階的に投資を拡大する柔軟なアプローチが推奨されます。
8-3. 市場変化を見逃さないための継続調査
市場規模調査は一度行えば終わりではなく、市場の変化を捉えるための継続的なモニタリングが重要です。特にテクノロジーの進化やライフスタイルの変化が加速する現代では、市場状況は急速に変化します。
継続調査のポイントとしては、「定点観測指標の設定」が挙げられます。市場の健全性や成長性を示す代表的な指標(市場規模、成長率、顧客獲得コスト、顧客生涯価値など)を定め、定期的に同じ手法で測定することで、経時変化を正確に把握できます。
また、「早期警戒指標」の監視も重要です。市場の転換点を示す先行指標(例:先進ユーザーの行動変化、代替技術の普及率、規制環境の変化兆候など)を特定し、継続的にモニタリングすることで、大きな市場変化を事前に察知できます。
継続調査の効率化のために、「データ収集の自動化」や「ダッシュボード化」も有効です。APIを活用した定期的なデータ収集や、重要指標を一目で確認できるビジュアルダッシュボードの構築により、少ないリソースで継続的な市場モニタリングが可能になります。市場の変化を見逃さない体制を整えることで、機会の早期発見とリスクの事前回避を実現できるでしょう。
8-4. 専門家の意見を取り入れるタイミング
市場規模調査において、専門家の知見を活用することは、データだけでは得られない洞察を獲得する上で非常に有効です。しかし、専門家の意見を取り入れるタイミングと方法を誤ると、バイアスの源泉となることもあります。
専門家の意見を取り入れるべき主なタイミングとしては、以下が挙げられます。調査の初期段階では、市場の定義や重要な変数の特定、適切な調査手法の選定などに関して、業界経験者の知見が有益です。データ解釈の段階では、数値の背景にある文脈や業界特有の動向を理解する上で、専門家の視点が役立ちます。将来予測の段階では、定量データだけでは捉えきれない技術トレンドや顧客ニーズの変化について、先見性のある専門家の意見が貴重な参考になります。
専門家の意見を効果的に活用するためのポイントとしては、「多様な背景を持つ専門家からの意見収集」が重要です。同じ業界でも、技術系、マーケティング系、経営系など異なる専門性を持つ人材から意見を集めることで、多角的な視点を得られます。また、「構造化されたプロセスでの意見収集」も効果的です。デルファイ法やエキスパートパネルなどの手法を用いて、体系的に専門家の知見を引き出すことで、個人的バイアスの影響を最小化できます。
最後に、専門家の意見は尊重しつつも、「データとの整合性確認」をしっかり行うことが重要です。専門家の直感と定量データの間に乖離がある場合は、その理由を深堀りすることで、市場の本質をより深く理解する機会となるでしょう。

おわりに
本記事では、市場規模の基本概念から調査方法、算出手法、データ活用法、さらにはケーススタディと落とし穴まで、幅広く解説してきました。市場規模の把握は、新規事業の立ち上げや事業計画の策定、投資判断など、ビジネスにおける重要な意思決定の基盤となります。
ここで紹介した手法やフレームワークは、あくまでも出発点です。実際のビジネスシーンでは、自社の状況や業界特性に合わせて、最適なアプローチを選択・カスタマイズしていくことが重要です。市場は常に変化しており、その変化に合わせて調査手法も進化させていく柔軟性が求められます。
最後に、市場規模調査は「科学」であると同時に「芸術」でもあることを忘れないでください。データと分析手法という「科学」の側面に加えて、市場の本質を見抜く直感や創造性という「芸術」の側面も大切です。両者のバランスを取りながら、精度の高い市場理解を目指してください。
本記事が、皆様の事業戦略立案や意思決定の一助となれば幸いです。

よくある質問と回答
市場規模と市場シェアの違いは何ですか?
市場規模とは市場全体の金銭的価値や総売上高を表す指標であるのに対し、市場シェアは全体市場における特定企業の占有率を示します。例えば、日本のスマートフォン市場規模が3兆円で、A社の売上が6,000億円の場合、A社の市場シェアは20%となります。市場規模は事業機会の大きさを、市場シェアは競争上のポジションを把握するための指標です。新規事業計画では両者を組み合わせ、「大きな市場で一定のシェアを獲得する」または「小さいがニッチな市場で高シェアを獲得する」などの戦略を検討します。
市場規模の調査にかかる期間と費用の目安はどれくらいですか?
市場規模調査の期間と費用は、調査の範囲と深度によって大きく異なります。既存の統計データや調査レポートを活用する基礎的な調査であれば、1〜2週間程度で数十万円以内で実施可能です。一方、独自のアンケート調査やインタビュー調査を含む本格的な市場調査の場合、1〜3ヶ月の期間と数百万円規模の予算が必要になることもあります。社内リソースで調査を行う場合、コストは低減できますが、客観性の担保に留意する必要があります。新規事業検討の初期段階では、まず公開情報を活用した概算調査から始め、事業化の可能性が高まった段階で詳細調査に投資するアプローチが一般的です。
市場規模の推計に必要なスキルや知識は何ですか?
市場規模の推計には、統計的思考力、データ分析スキル、業界知識の3つの要素が重要です。統計的思考力は、サンプルデータから母集団を推測する能力や、相関関係と因果関係を区別する能力などを指します。データ分析スキルとしては、エクセルなどのツールを使った集計・分析能力や、一次データと二次データを適切に組み合わせる能力が求められます。業界知識は、市場の構造や成長要因、競合環境などについての理解が含まれます。また、これらに加えて、バイアスを認識し対処する客観性や、複雑な情報を分かりやすく伝えるコミュニケーション能力も重要です。これらのスキルは、実践を通じて徐々に向上させていくことができます。
新しい技術やサービスの市場規模はどのように予測すればよいですか?
新しい技術やサービスの市場規模予測には、「類似市場アナロジー」「技術採用モデル」「ユースケース積み上げ法」などの手法が有効です。類似市場アナロジーでは、過去に同様の発展パターンを示した技術や製品の普及曲線を参考にします。例えば、スマートホームデバイスの普及予測には、スマートフォンの初期普及率を参考にできます。技術採用モデルでは、イノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティなどの採用者カテゴリーごとの人口比率を用いて段階的な普及を予測します。ユースケース積み上げ法は、想定される利用シーンごとに「対象ユーザー数×採用率×単価」を積算する方法です。不確実性の高い新技術の予測では、複数の手法を組み合わせつつ、楽観・中立・保守的なシナリオを並行して検討することが推奨されます。
市場規模データはどこで入手できますか?
市場規模データの入手先は、公的機関、民間調査会社、業界団体の3つに大別されます。公的機関では、経済産業省の「工業統計調査」や「特定サービス産業実態調査」、総務省の「家計調査」「国勢調査」などが基礎データとして役立ちます。これらは「e-Stat(政府統計ポータル)」で無料アクセス可能です。民間調査会社では、IDC、Gartner、矢野経済研究所、富士キメラ総研などが業界別の市場規模レポートを提供していますが、数十万〜数百万円の費用がかかります。業界団体では、各産業の協会やNPO法人が会員向けに市場動向データを提供していることがあります。このほか、上場企業のIR資料、証券アナリストレポート、大学・研究機関の発表なども有用な情報源です。複数の情報源を組み合わせて検証することで、より信頼性の高いデータを入手できます。
海外市場と日本市場で調査方法に違いはありますか?
海外市場と日本市場の調査には、いくつかの重要な違いがあります。まず、データの入手可能性と信頼性が異なります。先進国では公的統計や民間調査が充実している一方、新興国ではデータの精度や更新頻度に課題がある場合があります。次に、調査方法の文化的適合性も考慮する必要があります。例えば、アジア諸国ではフォーカスグループより個別インタビューが有効なケースがあり、質問の仕方も直接的vs間接的など文化によって適切なアプローチが異なります。さらに、海外調査では現地の言語や商習慣の理解が不可欠であり、適切な現地パートナーの選定が成功の鍵となります。また、国や地域によって産業分類や市場セグメントの定義が異なることも多く、単純な比較ができない点にも注意が必要です。グローバル市場調査では、こうした違いを認識した上で、調査設計を行うことが重要です。
検討を進める上で困った時は
新規事業開発の検討を進めようとするときには、様々なお悩みが出てくるものと思われます。INTERSECT(インターセクト)では、事例データベースを元に専門コンシェルジュが信頼できるソリューションパートナーを選定し、依頼事項の整理から提案選定まで無料で伴走サポート致します。ぜひお気軽にご相談下さい。