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黒字倒産とは?原因や回避方法について解説

一見すると矛盾とも思える「黒字倒産」というキーワード。事業が黒字でありながら突如として倒産に至るというケースを指しています。しかし、なぜ利益を出しているのに倒産するのでしょうか?その原因とは何でしょうか?また、黒字倒産を回避するためにどのような対策が必要なのでしょうか?

それらを詳細に掘り下げ、理解しやすい形で解説していきます。

黒字倒産とは

黒字倒産とは、会社が利益を生み出しているものの、資金繰りの問題等で経営が困難となり、ついには倒産を余儀なくされる現象を表します。

企業が倒産する際、大抵は支出が収入を上回る経常赤字の状況が多いのですが、黒字倒産はその枠組みとは別のものです。

「黒字廃業」と一緒に混同されがちな用語もあります。こちらは、経済的には黒字であるにも関わらず、経営者の自主的な決断により後継者不在等の理由で事業を続けずに閉鎖する状況を指します。

黒字倒産が起きる主な要因は、「短期的な資金繰りの問題」が挙げられます。つまり、売上拡大の一方で、その売上が長期の売掛金になるなど、すぐに現金化できない状態を指します。過剰な設備投資により、一時的な現金不足が生じ、生産や営業活動が行えなくなる場合もあります。

また、「取引先からの信頼喪失」も大きな原因となることがあります。利益を上げているにもかかわらず、取引相手との信頼を失えば、取引そのものが断ち切られ、経営継続が困難となります。その危機的状況が周囲に伝わり、取引停止の悪循環に陥るケースが多々見られます。

黒字ではあるものの、破綻する企業というのは、成長への熱意や果敢な投資が逆効果となり、資金繰りに問題が生じるというパラドックスに直面します。実際、そういった状況は事業運営における現実の確実性を見落とした結果とも言えるでしょう。従って、企業が黒字倒産を防ぐためには、今後は資金調達の戦略を再考する必要があると言えます。

黒字倒産になる理由とは

なぜ黒字の企業が倒産するのか、理由を解説します。

資金繰りの問題

黒字倒産の根本的な原因は、「資金管理の不備」です。売掛金の回収に失敗し、現金が得られない状況や、新たなプロジェクトに向けた資金が確保できない状況などがこれに該当します。事業が黒字であっても、現金流が滞ると、日々必要となる給与の支払いや借入金の返済、原材料の費用などを準備することが難しくなります。

さらに、景気の低迷や新型コロナウイルスの影響により売上が一時的に下降すると、これが黒字倒産の原因となり得ます。資金管理ができていなければ、業績が好調である企業でも経営の破綻に至る可能性があります。そのため、事業が順調な時でも、キャッシュフローの管理や資金流動性の維持に注意を向けることが重要となります。

負債の増加

企業が着実な利益を獲得しつつも、一時的な資金調達のために借金を重ね、その返済期限や利息負担が企業の資金繰りを窮地に追いやることが一般的です。これらの負債は、長期的な投資や新規事業展開のための土台を脅かします。さらに、経済の変動で利益が急激に縮小しても、返済義務はそのままで、その結果、経済的に行き詰まるリスクがあります。

このような黒字倒産は、経営者が利益を一時的に見過ごし、企業の安定性や持続性を見失いやすい現代のビジネス社会で、更に過剰化しています。その対策としては、企業成長と同時に借金の管理と健全な資金調達を常に考えることが重要です。企業が生き残り、発展するためには、数字だけではなく、その裏側にあるリスクを見極める視点が必要とされます。

在庫管理が不十分

「黒字倒産」の一つの大きな要因は、「在庫管理の不十分さ」です。

黒字倒産とは、企業が売上高を伸ばしながらも、不適切なキャッシュフロー管理により経営破綻を迎えてしまう状況を指します。これは特に、製造業や小売業といった在庫を抱える事業形態でよく見られます。

在庫管理が行き届かないと、売り物が効率的に供給されず、無理に在庫が増加します。これにより適切な商品が供給されず、その結果として売上の伸びが踏み留まってしまいます。加えて、在庫の保持により生じる固定費や維持管理費用、商品価値の低下といったリスクが企業の収益影響を及ぼします。

さらに顕著な問題は、過剰在庫がキャッシュフローを悪化させるという状況です。余計な在庫は大量の資金を吸い上げ、結果としてこの負担により企業は資金繰りに行き詰まることになります。こうした状況が続くと、最終的には製品生産のための支出や人件費への投資が困難となり、極端な場合生産停止に陥ることもあります。

こういった在庫管理の不十分さが、黒字倒産の危険性を高めます。在庫管理は企業運営の重要な柱の一つであり、適切な管理が必須だと言えます。企業が在庫状況を適切に評価するための一つの指標として、「交差比率」があります。交差比率とは「粗利率×在庫回転率」の値で、この数値が100%を下回ると不安定な状況を示しています。即ち、高い粗利率をもってしても在庫回転率が低いと、黒字倒産の危険性は増大します。

黒字倒産が発生する原因とは

黒字倒産の原因について、製造会社A社を事例にして説明します。

A社は、受注生産型のビジネスモデルを採用しています。品質の高い製品を提供し、一貫して黒字経営を達成しています。

しかし、大型の新規受注を獲得した際に、問題が浮き彫りとなりました。この受注を実現するためには、大量の原材料や人件費が要求され、その支払いが必要となります。A社が製品を納品して収益を得られるまでの間には時間がかかります。

また、支払いも全額即時で行われるわけではなく、2ヶ月後に40%、更に2ヶ月後に残り60%が支払われるという契約です。

そのため、A社は、すでに資金が限界に達していたにもかかわらず、新規注文に伴う大量の支払いを前払いしなければなりませんでした。

これにより、資金繰りが困難となり、A社は経営破綻を余儀なくされたのです。この現象を「黒字倒産」と呼びます。

この事例では、収益発生と入金のタイミングのずれが問題となりましたが、他の要因として在庫過多によるキャッシュフローの悪化や、売掛金の回収遅延も黒字倒産に繋がります。

企業経営にとって、黒字経営だけでなく、適切な資金繰りやキャッシュフローの管理も同様に重要となります。

黒字倒産を回避する方法とは

黒字倒産を回避する方法を確認しておきましょう。

キャッシュフロー管理

経営は利益を確保することが目的ですが、それだけでは十分ではありません。特に注目すべきなのは、キャッシュフロー(企業の資金の流れ)の管理です。

このキャッシュフロー指標は、出入りする現金のバランスを把握し、収入が支出を常に上回る状態を保つことで、企業の健全な経営を維持します。さらには、未来の収入とコストを予測し、バランスを維持することも求められます。

これを達成するためのアプローチとして、資金繰り表の作成が役立ちます。1~2カ月先の額を計算しこの表に記入することで、事前に対応策を打つことが可能になります。

企業の資金繰りは、経常収入や経常支出、前月からの繰越し金などからなるキャッシュフローを一覧化することで見える化します。管理することで、効率的に資金の流れをコントロールできます。

一方、企業の財務状況を把握するための重要なツールとして、キャッシュフロー計算書があります。これはキャッシュフローを営業活動、投資活動、財務活動の3つのカテゴリーで分類し、それぞれについての現金の流れを把握することができます。

営業活動によるキャッシュフローがプラスであれば、その範囲内で設備投資や借入金の返済が可能となり、これは健全な経営を示します。

しかし、同じくキャッシュフローがマイナスで、投資活動や財務活動によるキャッシュフローがプラスである場合、それは事業が資産の売却や借入に依存していることを示しています。この場合には、利益があってもキャッシュフローが不足し、黒字倒産(キャッシュフローの不足により経営が困難となる現象)の可能性があると意識する必要があります。

取引条件の見直し

黒字倒産とは、売掛金の未回収や取引相手の入金遅れなどから引き起こされます。すなわち、売上が計上されたとしても、それに伴う入金が大幅に遅れると、現金繰りが悪化し、結果として倒産に繋がる可能性があるという事象を指します。これを防ぐためには、取引条件の改善が必要となるわけです。具体的には、支払い延長の交渉や入金を前倒しにするなど、資金繰りのサイクルを短縮することを目指すべきです。

更に詳しく言えば、顧客に対して早期支払いを要求する割引や特典を提供することで、入金を促進させる方法が考えられます。また、あるいは長期間支払いの取引を行っている顧客に対しては、支払いを早めるよう交渉を実施すべきです。

黒字倒産は、表面的な利益では見えにくい潜伏するリスクです。しかし、適切に問題を認識し、目の前の取引条件を修正することで、その危険は軽減されるでしょう。経営の健全性を維持し、持続的な成長を追求するためには、これらの対応が極めて重要となります。

在庫管理の最適化

P/L(損益計算書)上では在庫は経費として計上されません。しかし、在庫は会社の資金を占有するため、適切な在庫管理が求められます。各商品がどの程度在庫として必要か把握し、需要予測や商品のライフサイクルを理解し、最低限の在庫しか保持しないように努力が必要です。

さらに、「JIT(ジャストインタイム)」方式を取り入れた適時、適切な量の仕入れも有効な手段です。JIT方式によって短期的なキャッシュフローを確保でき、経営効率も向上します。

加えて、在庫管理をデジタル化し、リアルタイムに在庫の把握を行うことで、適切な発注と過剰在庫を避けていく要諦となります。

資金運用を効率化し無駄な在庫を削減すれば、黒字倒産のリスクを回避するだけでなく、信用力も上昇します。在庫管理の最適化は、経営戦略の一環として捉えられるべきです。企業は常に改善の余地を追及し続ける姿勢が求められます。

信用管理

黒字倒産を防ぐ策として挙げられるのが信用管理です。これは売掛金の速やかな回収や在庫の適正量保持を目指す管理戦略で、これにより現金流の健全性を維持することが可能となります。

たとえば、売掛金を速やかに回収するための戦略としては、厳格な支払い期日の設定や利息の適用などが存在します。また、在庫を適正量に保つためには、需要予測の精密化が求められます。

さらに、信用管理だけでなく、事業規模の拡大による経費の管理や、投資リターンの考慮などの経営判断も重要となります。

黒字倒産は業種や事業規模を問わず発生する可能性があるため、常に信用管理と現金流管理を意識した経営を心掛けることが大切です。これにより、事業の継続的な成長が期待できます。

売掛金を増やすことは現金不足に直結する可能性があるため、顧客の信用管理を怠らないようにすることが重要です。

特に支払い能力に疑問のある顧客に対しては、クレジット販売や掛け売りを控えるなどの対策を取るべきです。

黒字倒産を回避する方法とは:資金調達力の強化

黒字倒産回避の鍵は「資金調達力を高める」ことにもあります。

はじめの一歩は、取引先との信頼関係を構築すること。信頼できるパートナーとして認識されれば、取引を通じて安定的な資金提供が期待できます。さらに、いざという時に備えて複数ルートから資金を調達できる体制を整えることも重要です。事業ローンやクラウドファンディングなど多様な資金調達法を活用しましょう。

次に、社内の財務状況を透明にし、常時資金繰りの様子を把握できるシステムを導入します。これにより、何か問題が起こった際もすぐに対応できるでしょう。さらに、情報を透明にすることで銀行などの金融機関からの信達性も上がります。

これら一歩一歩は小さなステップではありますが、それらを踏むことで企業の資金繰りの安定化ーつまり黒字倒産を防ぐことが可能です。資金調達能力を強化し、企業の成長と持続性を確立しましょう。そして、短期及び長期の観点から資金調達を計画することで、中長期的な企業の安定化に繋げていきましょう。

M&Aの活用

回避手段の一つに、M&A(合併・買収)を活用することが挙げられます。

M&Aによる事業の譲渡は、資金繰りの改善方法として有効であり、多くの企業がこれを活用して黒字倒産の危機を回避しています。施策としては、大手企業や他業種からの支援を通じて迅速な資金調達を行い、企業全体の財務強化、組織体制の再編などを通じて現金流を改善することが期待されます。

それでも、注意が必要です。適切なM&Aパートナーの選定や合併後の経営統合のプロセスは、高度な専門知識を必要とします。M&A後の一時的な業績低下は、黒字倒産のリスクを増幅させる可能性もあります。

M&Aを活用する際は、専門家の力を借り、丁寧な事業調査と財務分析を行うことが非常に重要です。また、経営者自身が現金流の状況を常に把握し、必要に応じて迅速な資金調達を行ったり、専門家からのアドバイスを受け入れることも重要な選択肢の一つとなります。こうした経営のインフラを整えることで、郡字倒産の危機を回避し、会社の健全な成長を続けることが可能になるでしょう。

金融機関へのリスケジュール依頼

黒字倒産を防ぐためには、適時に金融機関へのリスケジュールの申し込みと、財務管理の見直しが重要となります。

黒字倒産の主な要因は、資金繰りのミス、つまり現金化のタイミング違いや大規模な投資による一時的な資金不足などです。これらに対応する一策として「金融機関へのリスケジュール申請」があります。

リスケジュールとは、元々の返済スケジュールを再調整し、返済期間を長くしたり、返済金額を減らしたりする手段を指します。これによって、一時的な資金繰りの問題を乗り切ることが可能になります。

しかし、リスケジュールは一時しのぎの措置であり、基本的な問題の解決にはなりません。本来必要なのは、適切な財務管理を行い、常に資金流動性を把握し、管理することです。

つねに資金繰りを考え、キャッシュフローの健全な運用を行うことで、黒字倒産を回避することが可能になります。財務管理は、企業運営の基礎となるスキルです。これを経営の日々に取り入れ、資金繰りが厳しくなる事態を予防しましょう。資金繰りのスキルと経営の知識を使って、企業の持続的な成長を追求しましょう。

まとめ

黒字倒産の原因は、資金繰りの失敗や負債の膨張などが主です。これを回避するには、常に適切な資金計画を立て、一定の負債比率を保つことが重要。

また、適切なリスクマネジメントや収益性分析により黒字でありながらも倒産を回避するための手法を知ることが求められます。

よくある質問

黒字倒産の具体例は?

黒字倒産は、企業が帳簿上で利益を上げているにも関わらず、実際には必要な支出に充てる現金が不足しているため、支払い能力が失われる状態を指します。一般的な事例としては、売掛金の入金が支出に追いつかない場合や、売上が期待したほど伸びずに不良在庫を抱えるなどが挙げられます。

どうすれば黒字倒産を防ぐことができますか?

黒字倒産を防ぐためには、以下の7つの対策が考えられます。

  • 資金繰り表を徹底的に管理する
  • 利益率を向上させる
  • 不要な在庫を効果的に処分する
  • 売掛金比率を低く保つ
  • 買掛金比率を高める
  • 前受金を積極的に確保する
  • 状況に応じて柔軟に資金を調達する

黒字倒産とはどういう意味ですか?

黒字倒産は、商品が売れ、帳簿上で利益が出ているにもかかわらず、支払いに必要な資金が不足し、最終的に企業が倒産する状態を指します。企業は自社の入出金状況を的確に把握し、キャッシュフローをプラスに保つような経営を心がけることで、黒字倒産を回避することが可能です。

黒字倒産はなぜ起こるのか?

黒字倒産は、主に取引先の支払いが遅れたり、売掛金が回収できないなどの要因によって引き起こされます。 言い換えれば、商品やサービスの売上があっても、それに対する入金が大幅に遅れることで、企業は現金不足に陥る可能性があります。 黒字倒産を回避するためには、支払い条件の交渉延長や入金を前倒しするなど、取引条件を見直し、入金サイクルを短縮する努力が重要です。

黒字倒産の前兆は?

黒字倒産の前兆は、損益計算書上では利益が出ているにもかかわらず、資金不足の状態にあることです。損益計算書上で利益が出ていても、企業が支払うべき資金をまかなうことができなければ、倒産の危機が迫っている可能性があります。

黒字会社をたたむとはどういうことですか?

これは経済的な厳しさによって生じる通常の倒産とは異なり、黒字廃業と呼ばれます。 言い換えれば、企業が収益を上げているにもかかわらず、計画的に事業を終了させることを指します。