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水平リサイクルとは

環境保護と持続可能性は現代社会における重要な課題です。限りある資源を有効活用するための方策のひとつが「リサイクル」です。一般的には使用済み製品などから有用な資源を回収し、新たな製品の原料として再利用することを指します。しかし、リサイクルいにも様々な形態があり、その中でも「水平リサイクル」という概念が注目されています。この水平リサイクルとは、どのような意味を持つのでしょうか。

 

 

水平リサイクルとは

資源の再利用を通じて新たな資源消費を最小限に抑える水平リサイクル。ボトル to ボトルは、水平リサイクルの一例であり、使用済みのペットボトルを回収して新しいペットボトルに再生することで、CO2排出量の削減や海洋プラスチックごみの減少に貢献しています。この取り組みは、使用済みの容器を回収し、洗浄・加工した上で同じ用途の製品に生まれ変わらせることで、循環型社会の実現に貢献しています。技術の進歩により、かつては不可能とされていた高度な洗浄・再生が可能になり、使用後のペットボトルから衛生的な新製品を生み出すことさえできるようになりました。ただし、水平リサイクルには適切な処理が欠かせず、コストと手間もかかることから、究極的にはごみの発生抑制やより効率的な縦型リサイクルとの組み合わせが不可欠とされています。

水平リサイクルの仕組み

水平リサイクルにおける廃棄物の再資源化手法には、主にケミカルリサイクルとメカニカルリサイクルの2つがあります。ケミカルリサイクルは、使用済み製品を化学的処理により化学原料に戻し、新たな製品の原料として活用する方式です。例えば廃ペットボトルを粉砕し、化学薬品を用いて原料のBHETに戻すことができます。資源の有効活用とCO2排出削減が可能な一方、設備投資コストが高額になる課題があります。一方のメカニカルリサイクルは、使用済みプラスチック製品を破砕・洗浄・除染して再生原料化する物理的手法です。コスト面で有利なため、広く採用されているリサイクル方式となっています。こうした手法を通じて、水平リサイクルは資源の再利用を追求し、環境負荷の最小化と製品価格の抑制を同時に実現します。持続可能な社会を目指す有力な取り組みとして、世界中で注目されています。

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水平リサイクルがなぜ注目されているのか

資源の長期循環を可能にする水平リサイクル

従来のリサイクル方式は、製品を素材ごとに分別せずに異なる素材を混ぜ合わせた状態で再利用するダウンサイクリングが中心でした。一方、水平リサイクルは製品を素材ごとに分別し、同じ製品に再生利用することで、資源の循環利用を実現します。

水平リサイクルの代表例は、ペットボトルからペットボトルへの再生利用です。繊維製品においても同様に、古着を選別して同じ用途に活用できます。このように、新たな原料投入を最小限に抑え、製品の質を維持しながら資源を効率的に循環利用することが可能になります。

さらに、水平リサイクルは製品寿命を延ばすことにもつながります。部品や素材を再利用できれば、製品の買い替えサイクルを延長できるためです。このように、水平リサイクルは資源の有効活用はもちろん、環境負荷の軽減や持続可能な社会の実現にも大きく貢献しています。

資源の長期循環に役立つ水平リサイクルへの注目が高まる中、環境省は2050年までにペットボトルの水平リサイクル率を50%に引き上げる目標を掲げています。製品の質を維持しながら資源を循環利用できる水平リサイクルの推進が、サーキュラーエコノミー実現の鍵となることが期待されています。

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水平リサイクルの現状

水平リサイクルは、アルミ缶などの資源の循環利用を実現する上で重要な役割を果たしています。すでに私たちの日常生活に浸透し、ペットボトルやアルミ缶など、様々な製品が同種素材間で再生利用されています。2021年度には、ペットボトルの20.3%、アルミ缶の67.0%が水平リサイクルされ、新たな製品に生まれ変わっているのです。

しかし、廃棄物のすべてを国内で再資源化するのは容易ではありません。日本はプラスチック廃棄量が世界有数の水準にあり、自国での処理が課題となっています。これまでは海外への輸出に頼ってきましたが、中国などの輸入規制強化により、国内完結での対応が求められるようになりました。

こうした状況を受け、水平リサイクルへの期待が高まっているのです。同種素材間で循環できるため、確実かつ効率的な資源の再生利用が可能となります。ただし、異物混入や着色剤の影響により、再生品の品質確保が課題となっています。

水平リサイクルを一層推進するには、製品設計段階からライフサイクル全体を見据えた取り組みが不可欠です。再生利用を前提とした素材選定や、異種素材の分離が容易な設計など、製造段階からの配慮が求められます。加えて、分別システムの整備も急務となっています。このように、関係者が連携し、水平リサイクルの質を高めることで、より確実な資源循環が実現できるはずです。

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水平リサイクルのメリット

ゴミを再資源化する「水平リサイクル」には、循環型社会の形成に向けて大きな三つのメリットがあります。 第一に、原料調達コストを抑えられる点が挙げられます。リサイクル素材は新たな原料製造が不要なため、資源の枯渇リスクも和らげることができます。

 

水平リサイクルのメリット:(1)資源の節約

資源の循環利用を促進する水平リサイクルは、資源を長期間有効活用できるメリットがあります。資源の乏しい日本にとって、この取り組みは極めて重要です。近年のウクライナ情勢を受け、世界的なサプライチェーンの混乱とインフレが進行しています。海外からの原料調達が困難になる中、リサイクルによる国内資源循環は、原材料の海外依存度を下げるための有力な手段となるでしょう。石油・ガスから食料に至るまで、あらゆる分野で価格高騰が続いており、リサイクル率の向上が求められています。資源の効率的な利用を通じて、日本の経済安全保障を高めることができるからです。これにより、循環型社会の実現が期待されます。

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水平リサイクルのメリット:(2)環境負荷の軽減

環境に配慮した水平リサイクルの手法により、私たちは大きな恩恵を受けることができます。ボトルtoボトルのリサイクルは、持続可能な資源循環とCO2排出量の削減に重要な役割を果たします。この方法では、新たな資源を採掘する必要がなく、製品の原料生産プロセスも不要となります。その結果、エネルギー消費を大幅に削減し、CO2排出量を63%も抑制することが可能となります。例えば協栄産業では、ペットボトルの水平リサイクルによりCO2排出量を従来の1.577kg/kgから0.583kg/kgへと大きく削減しています。

また、水平リサイクルでは製品の形状が維持されやすいため、再生品の品質が新品と変わりません。このようにリサイクルの流れが途切れにくく、廃棄物の排出量を確実に減らすことができます。ごみの量が減れば、海洋プラスチックごみ問題の解決にもつながるでしょう。

資源の有効活用と環境負荷の低減に寄与する水平リサイクル。私たち一人ひとりがこのシステムを支える消費行動を実践すれば、サステナブルな社会の実現に大きく貢献できるはずです。

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水平リサイクルのメリット:(3)循環型社会の形成に役立つ

水平リサイクルは、資源循環型社会を実現する上で重要な役割を果たします。ボトル to ボトルは、PETボトルの水平リサイクルの一例であり、CO2排出量の削減や海洋プラスチックごみの削減、資源保護に貢献しています。国内資源の有効活用を促進し、外部環境変化への耐性を高めるためにも、その推進が不可欠です。持続可能な経済社会の構築に向けて、水平リサイクルを積極的に推し進める必要があります。

水平リサイクルの課題

水平リサイクルを含むのリサイクルにおいては、メリットがある一方で課題も存在します。ここでは3つの課題について説明します。

 

水平リサイクルの課題:(1)衛生面に関して消費者の不安がある

水平リサイクルにおける最大の課題は、消費者の衛生面に対する不安を払拭することです。特に、pet ボトルのリサイクルにおいては、使用済みボトルの清潔さや異物混入のリスクが懸念されます。使用済みプラスチック製品を同じ用途に再利用する際、原料の汚れや異物混入のリスクがつきまとうためです。たとえば、「再生歯ブラシ100%使用」と表記された商品があれば、消費者は清潔さを疑ってしまうでしょう。数値上は安全基準を満たしていても、消費者の抵抗感を拭えなければ、そうした商品の需要は期待できません。時代にマッチした商品開発に注力したとしても、衛生面での懸念が残る限り、決して成功するとは限りません。リサイクル事業者にとって、消費者の不安を払拭するための徹底した品質管理が急務となっているのです。

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水平リサイクルの課題:(2)異物が混入していると実施が難しくなる

リサイクルを円滑に進めるためには、廃棄物の異物混入を防ぐことが極めて重要です。異物とは、ペットボトルや缶、ビン、プラスチックなどの資源ごみ以外の不純物を指します。リサイクル工場に異物が混入すると、選別や破砕の過程で支障が生じ、再生品の品質が低下してしまいます。たとえば、金属片が混じると機械が破損したり、製品にキズがついたりする恐れがあります。また、ビニール袋や紙くずなどが混入すれば、再生品の強度が落ち、用途が制限されかねません。

異物の混入を防ぐためには、家庭や事業所における適切な分別が不可欠です。一人一人が分別ルールを守り、異物の流入を最小限に抑えることが求められています。そうすることで、高品質な再生品を生み出し、限りある資源の有効活用につながるのです。今後は、「ボトルスカッシュ」のように、自動的に異物を排除する製品の普及など、より一層の取り組みが重要となってくるでしょう。

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水平リサイクルの課題: (3)多くのコストがかかる

水平リサイクルを実現するためには、多額の投資と運営コストを覚悟しなければなりません。リサイクル率(リサイクル 率)がコストに大きな影響を与えることも考慮する必要があります。まず、製品を収集し分別する作業には、多大な人的資源と時間が必要とされます。専門的な知識と設備を要するため、人件費と初期投資額が膨大になる傾向にあります。さらに、再生産工程においても高度な技術と厳格な品質管理が求められるため、コストが高くなります。加えて、再生原料の供給が不安定な場合は、新しい原料に頼らざるを得ず、コストが増大する可能性があります。 しかしながら、海外の廃棄物輸入規制の動きや、最終処分場のキャパシティ問題を考えると、ゴミを焼却処分するだけでは対応できません。そのため、市民や企業の金銭的負担が増える可能性はありますが、持続可能な社会を実現するためには、水平リサイクルの必要性は高まっていくと考えられます。この課題を解決することが不可欠です。

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水平リサイクル推進のために個人ができること

日々のちょっとした気づかいが、持続可能な循環型社会の実現に大きく貢献します。まずは、製品を購入する際にパッケージやラベルを確認し、リサイクル可能な素材で作られているかを確かめましょう。使用後は、素材ごとに分別して適切に処理することが重要です。プラスチック、金属、紙、ガラスといった異なる素材を正しく分類するだけで、大きな環境負荷の低減につながるのです。

さらに、詰め替え用の製品を選んだり過剰な包装を避けるなど、ごみの削減にも心がけましょう。生分解性の高い植物由来の製品を選ぶのも賢明な選択肢です。このように、日常生活の中で少しずつ工夫を重ねていけば、水平リサイクルの輪は着実に広がっていくはずです。

個人が率先して行動を起こし、家族や友人にも呼びかけることで、地域全体での活動が活発化します。資源となり得るものを最終処分場に埋めてしまわず、回収場所を積極的に活用することが何より重要です。ポイントがもらえれば、ゲーム感覚でリサイクルを続けられますし、ゴミ袋代の節約にもなり一石二鳥です。また、異物混入を避けるため、缶やペットボトルに不適切なゴミを入れないよう気を付けましょう。一人ひとりの継続的な努力が、持続可能な循環型社会の礎となるのです。

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カスケードリサイクルと水平リサイクルの違い

リサイクルには、大きく分けて「水平リサイクル」と「カスケードリサイクル」の2つの方法があります。

水平リサイクルとは、使用済みの製品を原料に戻し、同じ種類の製品として再生産する方法です。例えば、使用済みのPETボトルを回収し、それを原料として新しいPETボトルを製造するというプロセスが該当します。この方法では、製品の品質を維持しながら資源を循環させることができます。

一方、カスケードリサイクルは、使用済みの製品を別の種類の製品や品質の低い製品に変換するリサイクル方法です。例えば、使用済みの高品質な紙を回収し、それを段ボールなどの低品質な紙製品の原料として利用する場合などが挙げられます。この方法では、元の製品よりも品質は低下しますが、資源を有効活用しながら、異なる用途に再利用することができます。

水平リサイクルとカスケードリサイクルは、それぞれ資源の循環利用において重要な役割を果たしています。製品の特性や利用可能な技術に応じて、適切な方法を選択することが求められます。

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水平リサイクルとSDGs

製品のほとんどは限りある資源から作られていますが、使用済みの製品が廃棄される際には、大量の資源が無駄になっています。この課題を解決する取り組みの一つが「水平リサイクル」のリサイクルです。水平リサイクルとは、使用済み製品から同じ種類の新しい製品を作ることで、資源の循環利用を実現する概念です。例えば、古い自動車からまた新しい自動車を生産したり、使用済みのプラスチック製品から新しいプラスチック製品を作るなどです。

このように、水平リサイクルは製品のライフサイクル全体での循環を可能にし、SDGsの目標12「つくる責任、つかう責任」の達成に貢献します。資源の有効活用とごみ削減による環境負荷の低減が期待できるため、企業や自治体での取り組みが広がりつつあります。私たち一人ひとりが製品の選び方や使い方を見直すことで、持続可能な社会の実現に寄与することができるのです。

まとめ

水平リサイクルとは、同じ製品から回収した資源を同種の製品に再利用することを指します。例えば、ボトルtoボトルのように、使用済みのペットボトルからペットボトルを作り直すなど、製品のライフサイクルを延ばす取り組みです。この方法は、資源の無駄を最小限に抑え、より持続可能な社会の実現に貢献すると期待されています。

 

よくある質問

マテリアルリサイクルとは

マテリアルリサイクルには、「水平リサイクル」と「カスケードリサイクル」の2つの方法があります。

水平リサイクルとは、使用済みの製品を原材料に戻し、同じ種類の製品を再生産するプロセスです。代表的な例としては、使用済みのPETボトルを回収し、それを原料として新しいPETボトルを製造することが挙げられます。この方法では、製品の品質を維持しながら資源を循環させることができます。

一方、カスケードリサイクルは、使用済みの製品を別の種類の製品や品質の低い製品に変換するリサイクル方法です。例えば、使用済みの高品質な紙を回収し、それを段ボールなどの低品質な紙製品の原料として利用する場合などが該当します。この方法では、元の製品よりも品質は低下しますが、資源を有効活用しながら、異なる用途に再利用することができます。

水平リサイクルとカスケードリサイクルは、それぞれ資源の循環利用において重要な役割を果たしています。製品の特性や利用可能な技術に応じて、適切な方法を選択することが求められます。