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SXとは?DXとの違いやメリットをご紹介

近年のビジネスシーンでは、”SX”や”DX”といった言葉を頻繁に耳にしますが、これらの意味や具体的な内容につて詳しく知っている人は少ないのではないでしょうか。

では、SXとは何か、そしてDXとは何が違い、それぞれが持つメリットは何なのか。今回は、これらのテーマをより深く理解するため、分かりやすく解説します。

皆さんのビジネスに役立つ情報を提供できるよう、一緒に探求していきましょう。

SX(サステナビリティ トランスフォーメーション)とは

SX(サステナビリティ トランスフォーメーション)は、企業経営と社会の持続可能性を同調させ、新たな価値を生む経営スタイルを指します。

つまり、事業と社会課題を結びつけ、その解決によって利益を得るビジネスモデルを構築することを目指します。

主に、プロダクトやサービスの生涯を通じて環境への影響を低減する取り組み、地元コミュニティとの相互依存関係や従業員の満足度向上、ステークホルダーとの連携などを探求します。

このような活動を行うことで、企業は自社の競争力を強化し、社会への価値提供を増大させることができるのです。

SXは、単純に社会的責任を果たすだけでなく、持続可能性と経済成長を連携させた新たなビジネススキームともいえます。

全世界での法律制度やESG投資の普及、消費者の倫理的価値観の変化など、現代社会では環境と社会への配慮が必須となっています。

そのため、企業が持続的に成長するためには、SXへの取り組みが欠かせません。

SXとDXの違いとは

多くの企業がDXに取り組む中、その多くは現時点の事業の効率化と価値向上を主眼においています。しかし、SXの視点を組み込むことで、将来の事業環境の変化にも強く、持続的に強みを発揮できる事業体制を築くことが可能です。

DXはデジタルを活用して主にビジネスモデルや業務を変革し、企業競争力と価値を高めることを目指します。

一方で、SXは企業の成長だけでなく、社内外を問わず持続可能性の向上を追求しています。

DXとSXは相互に補完的なものであり、どちらか一方を選ぶものではありません。両者のアプローチを組み合わせ、描かれたビジョンに基づいて改革を進めていくことが求められています。

SXが注目される背景とは

世の中の不確実性が増す中、社会全体でサステナビリティへの要望が高まり、企業は中長期的な企業価値の向上が不可欠とされる時代に突入しました。この背景から注目を浴びているのが「SX」です。

政府(経済産業省)が「価値協創ガイダンス2.0」をアップデートし、「伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)」をまとめたことも、SXが注目を浴びた背景の一つと言えます。「価値協創ガイダンス2.0」は、SXの重要性とその意義に焦点を当てた報告書であり、SXを経営改革に結びつけるための実践的なフレームワークも提供しています。

一方、「伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)」は、SX研究会による報告書で、SXの実践の重要性を強調しつつ、SXの実現に向けた具体的な取り組みを整理しています。

これらの動きがSXに関する注目を高めている一方で、SXを理解する上で以下の3つの観点が特に重要です。

SXが注目される背景とは:SDGs(持続可能な開発目標)からの観点

近頃、ライフスタイルからビジネスのあらゆる領域で注目を集めるSX(社会的体験)。その背景には、SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みが大きく影響しています。

SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の略で、2015年9月に国連総会で採択された、多様性豊かな社会を目指し、「17の目標」と「169のターゲット」が提示された開発目標・行動計画のことを指します。その目指すところは、経済成長と並行して貧困を根絶し、環境を保全し、人間の尊厳を重んじるという、持続可能な世界の完成です。

このSDGsへの理解深化と取り組みへの参画を促すのが、SXの役割です。

先方の体験や行動を通してSDGsの目標達成につながる理解を深め、その一部を自分の行動に取り入れていくことが求められます。

エコロジーやフェアトレードに関連するワークショップ、サステナブルな商品の使用等の社会的体験は、SDGsフレームワークの下で考えることができます。

さらに、デジタル技術の進歩により、バーチャルな環境でも社会的体験を可能とし、さらに多くの人々がSDGsについての理解を深めるチャンスを提供しています。

したがって、SXとSDGsは緊密に連動しており、持続可能性のある社会を作り出すために欠かすことのできない存在と言えます。

企業がSXを推進することは、このSDGs対策と直接的に関わり、投資家や消費者からの信頼を獲得するための重要な一環となっています。

SXが注目される背景とは:ESG(環境・社会・ガバナンス)からの観点

ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を組み合わせた言葉です。

2006年、国連は、投資に関する行動指針として「PRI(責任投資原則)」を発表しました。

その中で、投資判断の新しい基準として「ESG(環境・社会・ガバナンス)」が紹介されています。

企業がESGに配慮した経営を実践することで、「将来性のある企業」「持続性のある企業」と評価され、株主や投資家からの信頼も高まります。

逆に、ESGへの配慮が不足していれば、SXの実現が難しいと言えるでしょう。

ESGとSXは相互に補完しあう要素であり、持続可能なビジネスモデルの構築において重要な視点となっています。

SXが注目される背景とは:人的資本経営からの観点

投資家は、企業への投資判断を行う際、財務状況だけでなく人的資本情報も注視しています。

企業の根幹を支えているのは人(人的資本)であり、従って、人的資本を適切に評価しない企業は持続的な成長を期待することが難しいでしょう。

すでに欧米の上場企業などでは、人的資本(Human Capital)に関する情報の開示が義務付けられています。

日本でも、政府は人的資本情報の開示を奨励しており、2023年3月期からは大手企業4000社を対象に、有価証券報告書(有報)に人的資本情報(人材投資額や社員満足度など)の記載が求められるようになりました。

これにより、企業は組織全体の人材の育成や働きやすい環境づくりに注力し、人的資本経営を通じて持続可能な価値を生み出すことが求められています。

SXを進めるメリットとは

企業がSXを進めるメリットにはどんなものがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

SDGs・ESGへの対応

SXの推進は、SDGs(持続可能な開発目標)やESG基準への対応に直結します。

企業はこれにより、環境保護、社会貢献、透明性のある経営などの重要な側面において取り組みを強化し、持続可能なビジネスモデルを構築できるでしょう。

SDGsやESGへの積極的な取り組みは、企業が社会的責任を果たすだけでなく、将来的な競争力の向上と企業価値の向上にも寄与します。

これにより、企業は継続的な成長と共に、社会的・環境的な課題への解決への貢献を実現します。

投資家や社会に対する企業イメージ向上

SXを推進することには、投資家や社会に対する企業イメージ向上という大きなメリットがあります。

持続可能な取り組みを進めることで、企業は投資家からの支持を受け、社会的な信頼を高めることが期待されます。

これにより、企業の株価の安定や新規資金調達のしやすさが向上し、持続可能性に焦点を当てることが企業価値の向上につながります。

また、社会からの期待に応えることで、広報やマーケティングの観点からも好意的な評価を受け、顧客や取引先とのパートナーシップを築く上で有利になります。

総じて、SXの推進は企業の投資価値や社会的影響力の向上に寄与します。

中長期での稼ぐ力の向上

SXを進めることには、中長期的な「稼ぐ力」の向上という重要なメリットがあります。

持続可能なビジネスモデルの構築により、企業はリスク管理の強化やイノベーションの推進を通じて、中長期での収益性と競争力を向上させることが期待されます。

環境リスクや社会的リスクへの対応力が強化されることで、将来の不確実性に対処し、企業の安定的な成長を支えるでしょう。

また、先に述べたように、顧客や社会からの信頼の獲得は、企業のブランド価値を高め、持続的な成長と収益性の向上に寄与します。

これにより、中長期的な視点で企業の価値が向上し、市場での競争優位性を築くことが可能となります。

総じて、SXの推進は企業の中長期的な「稼ぐ力」を向上させ、持続的な成功につながります。

ダイナミック・ケイパビリティとは

「ダイナミック・ケイパビリティ」は、企業が競争の激しいビジネス環境で持続的な成功を達成するための必須のエッセンスです。

この概念は、「感知力」「捕捉力」「変容力」という3つの能力を含み、企業が変動する市場環境に対し迅速に反応し、新たなビジネスチャンスを見つける能力を示します。

これは戦略的リーダーシップから非常に有益な枠組みを提供します。

ダイナミック・ケイパビリティの核となる役割は、企業が自社の知識と技術を駆使し、外部の可能性とリスクに対応して変化し進化する力です。

これは企業がスピーディーに革新を行い、新たな価値を生み出して競争優位性を獲得する際に絶対に必要な能力です。

この理論は、グローバル化やテクノロジーの進化、そして市場競争の激化が進行する現代、企業にとって組織の「学習」や「適応」能力が必須となる背景から生まれました。

組織が変化の波を乗り越え、競争力を維持するためには、ダイナミック・ケイパビリティの形成と活用が不可欠と言えるでしょう。

これは、新しい成長機会を生み出すため、そして未来の不確実性に対処するための戦略的取り組みです。

SXの具体的事例とは

SXに取り組んでいる企業の具体的な事例をご紹介します。

大林組

大林組のSX(サステナビリティ トランスフォーメーション)の具体的な事例は、サステナビリティを推進するために設けられたサステナビリティ委員会が挙げられます。

この委員会では、サステナビリティ化における問題点の発見、課題への対応方針の策定、経営層・取締役会への提言などが行われ、実際の実施状況も確認されています。

また、大林組は様々なサステナビリティの取り組みを展開しています。その中で特筆されるのが、「環境に配慮した社会づくり」です。

この取り組みでは、サプライチェーン全体で脱炭素、循環、自然共生社会づくりに注力しています。

具体的な活動として、温室効果ガス排出量の削減、廃棄物の発生の抑制と再資源化、生物多様性の保全と自然保護など、「脱炭素」「循環」「自然共生」社会の実現に向けた環境負荷低減の取り組みが行われています。

このような具体的な取り組みにより、大林組はサステナビリティを実践し、環境への配慮と社会への貢献を両立させています。

NEC

NECは、2020年に発表した「NEC Way」に基づき、企業の存在意義や行動原則、個人とのつながりを示し、サステナビリティ経営を推進しています。

この取り組みの一環として、以下の2つの組織を設立し、社内外の声を有効に活用する仕組みを構築しました。

  • サステナビリティ戦略企画室:NECのサステナビリティ推進を担当する専門組織
  • サステナビリティ・アドバイザリ・コミッティ:社外の専門家や有識者が参画する諮問委員会

特に環境問題においては、NECは2014年に気候変動対策の社会的な価値を定量化し、2020年度までにサプライチェーン全体のCO2総排出量に対して5倍のCO2削減貢献という目標を掲げました。

この目標達成に向け、NECは「社会ソリューション事業」を通じてICTを活用し、気候変動の緩和とその影響に対する備えの両面で貢献を強化してきました。

その結果、2020年には目標の7.7倍のCO2削減貢献を達成し、今後も更なるCO2排出量の削減を目指しています。

(出典:NECのサステナビリティ経営: サステナビリティ経営 | NEC・Sustainability Report サステナビリティレポート 2021)

まとめ

SX(サステナビリティトランスフォーメーション)は、企業経営と社会の持続可能性を同調させ、新たな価値を生む経営スタイルを指します。つまり、事業と社会課題を結びつけ、その解決によって利益を得るビジネスモデルを構築することを目指します。

よくある質問

社会の持続可能性とはどういうことでしょうか?

「サステナブル(Sustainable)な社会」とは、持続可能な社会を指します。これは、地球の環境を損なわず、資源の乱用を防ぎ、将来の世代が美しく、平和で豊かな環境で生活できるように、持続的な取り組みが行われている社会を指します。この概念は、環境への負荷を最小限に抑え、経済的な発展や社会の側面も含め、総合的な持続可能性を追求する考え方に基づいています。

SXとSDGsの違いは何ですか?

SXは企業経営と社会の持続可能性を同調させ、新たな価値を生む経営スタイルを指します。これに対して、SDGs(持続可能な開発目標)は2015年の国際サミットで採択され、国際的な目標として持続可能な世界を目指すための取り組みです。SDGsは17のゴールと169のターゲットから成り立ち、先進国と発展途上国が協力してこれらの目標を達成しようとしています。一方で、SXは企業が具体的な行動や将来の展望を示し、自身のビジネスモデルを通じて持続可能な社会を目指すものです。

企業のサステナビリティとは何ですか?

サステナビリティは、従来は環境に関連する用語として使われていましたが、近年では環境だけでなく、社会や経済にも焦点を当て、企業が価値提供と利益を調和させ、長期的に持続可能なビジネスを構築する取り組みを指します。企業のサステナビリティは、社会的な期待に応え、持続可能性を追求するだけでなく、企業自体の発展にも不可欠な要素となっています。

社会のサステナビリティとは?

社会のサステナビリティとは、「持続可能な社会」を指します。これは、地球の環境を損なわず、過度な資源の使用を避け、未来の世代にも美しく平和で豊かな生活を維持できる社会を指します。サステナビリティ社会では、経済的な発展だけでなく、社会的な公正と環境の健全性も考慮され、これらの要素が調和していることが重視されます。