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鋼材とは?鉄との違いや種類をご紹介

鋼材という言葉を一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、具体的に何を指すのか、またそれが鉄とどのように異なるのか詳しくご存知でしょうか?鋼材は私たちの身の回りに数多く存在し、様々な産業分野でその特性が活かされています。今回は、そんな鋼材の基本的な知識を深掘りし、その種類と鉄との違いについてご紹介します。

鋼材とは

鋼材とは、鉄骨を成形し、鋼板を製作するための素材です。その性質から平鋼バー、管、などの形状に加工され、その用途は多岐にわたります。

たとえば、日々の生活に不可欠な自動車や冷蔵庫の製造から、食事に欠かせないスプーンや包丁、そして手元に常備する金槌といった道具まで、その活躍の場は幅広いです。

さらに、構造物の基盤となる橋や鉄道、ラインパイプを始め、ビルなどの大型建築物の骨組みとなる素材としても、鋼材は頻繁に使用されます。

鋼材はその素材の性質により、「炭素鋼」と「合金鋼」の二つの大きなカテゴリーに分けられます。そしてこの二つのカテゴリーがさらに細かく分類されるため、出来る製品の幅と素材の特性を最大限に活用できるのが鋼材の特徴とも言えます。

総じて、鋼材は生活用品から社会インフラまで、我々の生活を支え、便利にし、地球環境への負担をも軽減できる優れた素材であるとと言えるでしょう。

鉄と鋼の違いとは

鋼と鉄の違いについて詳しく解説します。

鉄とは

鉄は、私たちが日常生活に欠かせない素材であり、その豊富な存在と加工のしやすさから、人類の産業の進歩を支えてきました。

建築物の基礎となるコンクリート、キッチンに欠かせないステンレス食器や調理器具、移動手段を提供する鉄道や自動車のパーツ、さらには電力供給の安定化をもたらす磁石や電気モーターの重要な部品として用いられ、その存在は私たちの生活の隅々にまで浸透しています。人間の体内でも、生命維持に不可欠なヘモグロビンの成分となります。

特に純度99.9999%にまで下げられた鉄は、加工しやすさと耐久性を増す一方、軟らかさも保たれています。そして純度100%の鉄と比較すると、その用途は限定されません。

その一方で、鉄は通常、灰色の表面を持ち、酸化すると褐色に変化します。この特徴から、夕日が差し込む街角の古き良き風景や、力強さと美しさを併せ持つ鉄製の橋などにその色彩を見ることができます。

鉄は地球外からも飛来し、その存在は隕石にまで及びます。これらの鉄が旅人に夢を提供し、その旅を果てしない宇宙へと導いています。

鉄は日々の生活において、その重要性を改めて考える機会は少ないかもしれません。しかしこの素材が広範な分野で活躍し、私たちの生活を確かに支えていることを忘れてはなりません。

鋼とは

“鋼”という名の素材は、私たちが普段目にしながらもその存在を意識することは少ないかもしれません。しかし、鋼とは0.02〜2.14%未満の炭素を加えた、人工的に鉄を改良した材料なのです。さらにマンガンやリン硫酸など微量の要素も混ざっています。

炭素が増えれば増えるほど、鋼は固くなるのが一般的です。しかし、固さが増すと弛みや折れやすさが増すので、そのバランスは非常に難しい問題です。つまり、作り出す鋼の種類は、必要性に応じて慎重に選ばれる必要があるのです。

建築、自動車製造、家具作り、道具製造と、鋼は無数の生活領域で使用されます。強さ、耐久性、加工性、熱耐性など、鋼が私たちの生活を豊かにするために求められる全ての特性を持っているからです。したがって、鋼は我々の生活を支える礎となる素材なのです。

炭素鋼(たんそこう)の種類とは

次に、炭素鋼の種類について見ていきましょう。炭素鋼は鉄ベースの合金です。

SS材

「炭素鋼」は、その硬さや強度から、多種多様な産業で活用されている金属材料です。その中でも特に耐食性に優れた「SS材」は、キッチン用具から医療機器まで、幅広く利用されています。しかし、すべてのステンレススチールがSS材であるわけではありません。SS材とは、「Steel Structure」の略で、一般構造用圧延鋼材をさします。約0.15〜0.30%の炭素を含有するため、低炭素鋼から中炭素鋼にカテゴライズされます。

SS材の特性は、その高密度、引っ張り強度、耐衝撃性に加えて、高い耐食性を持つことです。これにより、製造業などでは、酸化環境や海水に晒される状況でも適用が可能であり、多岐にわたる製品の開発に用いられています。

SS材には、「SS400」と「SS490」の二つの種類があります。これらの英数字が表すのは、鋼材の引っ張り強度の最小保証値(MPa)を指します。SS400は比較的安価な一方、溶接性には不安が残るため、建物の柱や梁などに使用されます。一方、SS490は強度が高いため、高層ビルや工場、橋など、荷重や引張力が大きい部分に使用されます。

以上が、炭素鋼の一種、SS材の特性と使用分野についての概要です。無数の日常的な製品を支えるこの素材は、私たちの生活に欠かせない存在といえるでしょう。

SK材

「炭素鋼」の範疇には多様な種類と特性が含まれる中で、今回はその一つである「SK材」に焦点を当ててみたいと思います。

SK材とは、「S」が「Steel=鋼」を、「K」が「Kougu=工具」を指し、鉄に炭素を加えた特殊工具鋼を指すもので、日本工業規格(JIS)に定められています。この材料は、炭素含有量が0.6~1.5%に及び、その中でも特に炭素量が多い素材とされています。

この「SK」の名前の後には、材料の炭素含有量を示す数字が添えられています。例えば「SK85」は、炭素含有量が0.85%であることを示しています。また、数字が小さいほど炭素含有量が多く、結果的にその硬度も高くなります。

SK材の主な特筆すべき特性としては、その高い硬度と耐摩耗性が挙げられます。また熱処理を施すことにより、本来の高い硬度を一定の範囲で調整することも可能であり、その特性をもって刃物や工具などの材料に適しています。

しかしながら、一般的に硬度が高い素材は加工が難しいとされていますが、SK材はその例外で、比較的加工しやすいという優位があります。これにより、アウトドア用具や様々な刃物、工具などといった幅広い製品へと応用されています。

S-C材

炭素鋼というのは、その名の通り、炭素が核となる成分で、その含有量が特徴的な鋼材の一種です。鉄と炭素を主要な成分として持つこの鋼、炭素の濃度により、その硬さや鋼質が大きく変わるのが特性です。その中でも、S-C材、それはS-Carbon Material、すなわち炭素鋼の特別な仲間とも言える存在があります。

このS-C材とは、炭素含有量が0.3%~0.6%程度と特定されている中炭素鋼の一類と定義されます。そのため、きわめて理想的な硬度を保持しながらも、高度な加工が可能なため、工具から鉄道のレール、自動車のパーツ等、多種多様な箇所で活躍する重要な素材となっています。

その上、S-C材は熱処理によりその内在する特性を更に活かすことが可能となります。焼入れにより硬度を増し、また焼戻しという手法により、鋼の粘りや引張強度を改善することができます。

但し、主成分が炭素であるだけに、炭素鋼は高い耐食性を持つことは難しいという欠点も持っています。しかしながら、その硬さと加工性の優れたバランスは、比べるべき他の素材が存在しないほどです。このように、S-C材を含む炭素鋼は、私たちの豊かな生活を可能にする貴重な素材と言えるのです。

S-C材とは、S(Steel:鋼)とC(Carbon:炭素)の頭文字を採用しており、鋼材の中でも機械構造用として特別に分類される炭素鋼材を指します。一般的に多く見られる鋼材の中では、SS材に次いで、このS-C材がよく使われます。

しかしながら、SS材と比べ、S-C材はその強度や熱処理による特性変化に優れている点で一歩抜きん出ています。その結果、精密機械や高い強度を必要とする部分等に対して多々利用されます。

このSとCの間には炭素含有率を示す2桁の数字が入り、例えばS45Cという場合は、炭素含有量が0.45%ということを示しています。

SPC材

炭素鋼の一種であるSPC材は、冷間圧延鋼板を指すSteel Plate Coldの略称で、その製造過程や特性が多岐に渡る業界で求められています。

SPC材は、一般的な炭素鋼を緻密な制御下で冷却し、優れた形状安定性と加工性を持つものです。これは0.4~3.2mmの薄板であるため、形状安定性が求められるプレス加工に最適で、冷蔵庫のボディのような板版のみに利用されます。

この素材は、一般用のSPCC、絞り用のSPCD、深絞り用のSPCEの3種類が存在し、その炭素含有量は0.1%未満の低炭素鋼であります。

優れた加工性や成形性は、SPC材が柔らかく伸びやすい特性によるものです。しかし、必要な強度を必要とする部分への使用は制限され、加工後は酸化防止のための塗装やメッキが求められます。

SPC材は自動車部品や建設機械、電器製品など幅広い用途に使われているだけでなく、製造業界において持続的な性能向上やコスト削減の可能性を約束する素材です。

合金鋼(ごうきんこう)の種類とは

合金鋼とは、鉄と炭素以外の合金元素を一定以上含む鋼のことです。

ステンレス鋼(SUS材)

合金鋼とは、鉄と他の化学要素が化学的に結合した一種の鋼で、その中でもステンレス鋼(SUS材)は、特に多くの工業用途に活用されています。その名称、SUSはSteel Use Stainlessの略であり、主要成分には鉄、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)を含む非常に耐久性の強い鋼材です。

ステンレス鋼(SUS材)はクロム含有量が10.5%以上、炭素含有量が1.2%以下で、強度が高く、広範にわたる用途で優れたパフォーマンスを発揮します。特に、クロムが雰囲気中の酸素と反応して形成される酸化膜は、材料自体を錆や腐食から守る役割を果たします。この特性のため、海洋設備や医療器具など、強靭さと耐久性が要求される場面で幅広く使用されています。

その中でもSUS316はモリブデンを加えることでさらに強い耐食性を発揮しますが、使用目的や環境によっては、コストや加工容易性など現実的な条件を考慮し、最適なステンレス鋼(SUS材)の選択が求められます。

強靭さと美しい光沢、さらに腐食に強い特性から、ステンレス鋼(SUS材)は我々の日常生活において欠かすことのできない存在となっており、キッチンのシンクや水道設備、船舶、プラント等に使われています。

超硬合金

「超硬合金」という種類の合金鋼は、ダイヤモンドに匹敵する抜群の硬度を誇ります。チタンカーバイドやタングステンカーバイドのような超硬質材料を、金属の一種であるコバルトで結びつけることによって生まれます。

この超硬合金は、一般的な鉄鋼材の欠点である「硬すぎて脆くなる」という問題を解消しています。これは、非常に硬いだけでなく、耐久性も兼ね備えているからです。加えて、過酷な状況下でも高い性能を発揮するため、工業界では重宝されています。

この合金鋼は、主に工具や金型、機械部品といった用途で使用され、特に切削工具や耐摩耗部品ではその効果を最大限に発揮します。そのため、困難な加工や長時間の使用にも耐えられる使いやすさから、厳しい条件下でも信頼性と効率性を維持することが可能となっています。

超硬合金のような品質の高い合金鋼が活用されることで、多くの工業分野で質の高い製品と革新的な技術が生み出されています。これからも、技術の進歩と共に、その可能性は無限大に広がっていくことでしょう。

機械構造用合金鋼

合金鋼は、鉄とその他の要素が組み合わさった一種の合金で、その性能の強化や耐久性・耐腐食性の向上が求められています。その中でも特に一役買っているのが、機械構造に使われる合金鋼です。機械や設備の製作に欠かせない材料で、その強度、耐摩耗性、耐熱性といった特性が重視されています。

機械構造用合金鋼は、0.12〜0.5%の炭素に加えて、ニッケルやクロム、モリブデンが添加され、焼き入れ性が向上しています。これらの元素配合は鋼に高い硬さを与え、耐腐食性や耐熱性を強化します。なかでもクロムモリブデン鋼はその強度と耐熱性から、幅広い領域で使用されています。

ハイテン鋼(高張力鋼)

ハイテン鋼(高張力鋼)は、類い希なる引張力を有する金属合金として知られています。

これは、一般的な炭素鋼であるSS400に対して倍以上の強度を誇ります。

高炭素鋼である0.2%以下の炭素量に、マンガン(Mn)、シリコン(Si)、チタン(Ti) などが配合されています。

この軽さとあわせて高い耐久力が兼ね備えられており、車体やガスタンク、排水蓋など様々な産業で活用されています。

合金工具鋼 SKS材 (ハイス鋼)

「合金工具鋼」は一つの象徴的な存在です。特に、「SKS材」または「ハイス鋼」はその代表例として挙げられます。

ハイス鋼の「ハイス」は、もともと英語で「High Speed Steel」と表現します。これは「高速度で切削するための鋼」という意味で、名前の通り、機械加工や工具製造の現場で大量に使われる材料です。主成分はモリブデンとタングステンで、これらは鋼の耐熱性と硬度を向上させることから、高熱と高負荷がかかる状況下でも、優れた性能を発揮します。

ハイス鋼の特性から、ドリル、エンドミル、ギヤ加工用ホブなど、製造業や自動車産業、家電製品などの生産ラインでの使用は欠かせません。そんな彼の存在は機械工業を支える一翼を担っており、その価値は計り知れません。

合金工具鋼 SKD材 (ダイス鋼)

「合金工具鋼」は、硬さから工具や金型、ダイスなどに適している材料とされています。特に「SKD材」と呼ばれる合金工具鋼は、その実力から「ダイス鋼」とも称されています。ダイスはプレス機などで金属板をパンチングするための金型を意味し、強度や耐摩耗性、耐熱性が求められます。

SKD材は、これらの必要な特性を持ち合わせており、鋳造品や鍛造品の製造に広く利用されています。特に、高い硬度と耐熱性はプレスや押出し、鋳造金型などに適しています。そのため、SKD材という合金工具鋼は、現代の工業製品製造にとって重要な存在となっています。

SKD材は「Steel Kogu Dice」の略で、SK材にCr(クロム)、Mo(モリブデン)、V(バナジウム)が添加されたものを示します。主な使用場所は、プレス機や中~大量生産用の金型、ダイス、ゲージ、金属刃物などが挙げられます。

まとめ

鋼材は鉄を主成分とし、その他の元素を加えて製造される材料で、特性を変えるために種々の成分が混ぜられます。

それに対し、鉄は鉄そのものを指します。強度や耐食性など、用途に応じて使い分けられる鋼材の知識は、私たちが身近な物や環境を理解する上で重要です。