コラム

電子帳簿保存法 分かりやすく解説:企業が押さえるべき対応と実務のポイント

電子帳簿保存法 分かりやすく解説:企業が押さえるべき対応と実務のポイント

2024年12月5日

会計

法令対応・コンプライアンス 経理業務効率化 電子帳簿保存法

2024年1月、電子帳簿保存法の改正により、企業の経理実務は新たな転換期を迎えています。本記事では、上場企業のビジネスパーソンが押さえておくべき電子帳簿保存法の基礎知識から実務対応まで、わかりやすく解説します。特に注目すべき改正のポイントや、レシート等の証憑管理の具体的な方法について、実務担当者の視点から詳しく説明していきます。

1. 電子帳簿保存法の基礎知識

1.1. 電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法は、正式名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といい、帳簿や書類を電子データで保存することを認める法律です。この法律により、企業は適切な要件を満たすことで、従来の紙での保存に代えて電子的な保存が可能となりました。

1.2. 2024年改正の主なポイント

2024年1月からの改正電子帳簿保存法では、電子取引データの保存における要件が大きく見直されました。特に、電子データの保存に関する要件が緩和され、より実務に即した形での運用が可能となっています。電子データの保存方法や検索機能の確保など、実務上の負担を考慮した改正が行われています。

1.3. 法改正の背景と目的

電子帳簿保存法の改正は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進と、企業における文書管理の効率化を目的としています。特に、電子データの真実性の確保と可視性の確保を両立させながら、企業の事務負担を軽減することが重視されています。

1.4. 対象となる企業と書類の範囲

電子帳簿保存法は、法人税や消費税の申告が必要な企業が対象となります。対象となる書類には、仕訳帳、総勘定元帳などの帳簿類に加え、契約書、請求書、領収書などの証憑書類が含まれます。特に電子取引で受け取った請求書等は、電子データでの保存が必要とされています。

2. 電子帳簿保存法の3つの保存制度

2.1. 電子帳簿等保存制度の概要と要件

電子帳簿等保存制度は、コンピュータを使用して作成した帳簿や書類を電子データのまま保存する制度です。優良な電子帳簿の要件を満たすことで、過少申告加算税の軽減などのメリットを受けることができます。システムには検索機能の確保や、訂正・削除の履歴保持機能が求められます。

2.2. スキャナ保存制度の実務ポイント

スキャナ保存制度は、紙の原本をスキャンして電子データとして保存する制度です。スキャナ保存の要件としては、タイムスタンプの付与や解像度の確保などが定められています。2024年の改正では、受け取った領収書等のスキャナ保存における要件が見直され、より実務に即した運用が可能となりました。

2.3. 電子取引データの保存方法と注意点

電子取引で受け取ったデータは、電子データのまま保存することが求められています。具体的には、PDFやExcelファイルなどの形式で、検索可能な状態で保存する必要があります。また、改ざん防止のための措置やバックアップの作成なども重要な要件となっています。

3. 実務対応のステップ別ガイド

3.1. 社内体制の整備と運用フロー

電子帳簿保存法への対応には、経理部門を中心とした社内体制の整備が不可欠です。具体的には、電子データの受領から保存までの運用フローを確立し、責任者の設置や従業員への教育を行う必要があります。特に、電子取引データの取扱いについては、明確なルールを設定することが重要です。

3.2. システム選定のポイント

電子帳簿保存法に対応したシステムを選定する際は、検索機能や真実性の確保など、法定要件を満たしていることを確認する必要があります。また、自社の業務フローとの親和性や、将来的な拡張性も考慮に入れることが重要です。

3.3. 書類の仕分けと保存方法の決定

保存が必要な書類を適切に仕分け、それぞれの保存方法を決定します。電子取引データ、スキャナ保存対象の書類、紙での保存が認められる書類など、書類の性質に応じた保存方法を明確にする必要があります。

3.4. タイムスタンプ付与の実務

スキャナ保存や電子取引データの保存では、タイムスタンプの付与が重要な要件となります。タイムスタンプの付与のタイミングや方法について、実務上の手順を確立し、確実に実施する体制を整える必要があります。

4. 具体的な書類別の対応方法

4.1. 請求書・領収書の取扱い

請求書や領収書は、受け取った形式によって保存方法が異なります。電子データで受け取った場合は電子データのまま保存し、紙で受け取った場合はスキャナ保存の要件を満たす形でデジタル化することが求められます。

4.2. 契約書・申込書の保存要件

契約書や申込書などの重要書類については、特に厳格な保存要件が設けられています。電子署名を利用する場合は、電子署名法に準拠した方法で保存する必要があります。また、相手方との合意に基づく保存方法の選択も重要です。

4.3. 社内帳票の電子化対応

社内で作成する帳票類は、電子帳簿等保存制度に基づいて電子的に作成・保存することが可能です。ただし、検索機能の確保や訂正履歴の保持など、必要な要件を満たすシステムでの運用が求められます。

4.4. レシートの取扱いと保存方法

レシートについては、2024年の改正で要件が緩和されました。紙のレシートをスキャナ保存する際の要件が見直され、より実務的な対応が可能となっています。ただし、電子レシートとして受け取った場合は、電子データのまま保存する必要があります。

5. 適切な運用のためのチェックポイント

5.1. 検索機能の確保

電子帳簿保存法では、保存した電子データに対する検索機能の確保が重要な要件となっています。具体的には、取引年月日、勘定科目、取引金額による検索が可能である必要があります。また、複数の検索条件を組み合わせた検索も求められており、これらの機能を備えたシステムの導入が必要です。

5.2. 真実性の確保要件

電子データの真実性を確保するため、改ざん防止や原本性の確保が必要です。具体的には、訂正・削除の履歴保持、タイムスタンプの付与などが求められます。特に電子取引データについては、データの作成者や受領者が明確になっている必要があり、取引の信頼性を担保する仕組みが重要です。

5.3. 可視性の確保要件

保存された電子データは、税務調査等の際に速やかに出力・表示できる状態を維持する必要があります。画面や書面での確認が容易にできる状態を保持し、必要に応じて印刷可能な状態を確保することが求められます。また、データの保存形式は一般的なものを使用し、特殊なソフトウェアがなくても閲覧可能な状態を維持することが重要です。

5.4. 共通の注意事項

電子帳簿保存法の要件を満たすためには、定期的なシステムチェックや運用状況の確認が必要です。特に、バックアップデータの作成や、システムの更新への対応など、継続的なメンテナンスが重要となります。また、社内規程の整備や従業員教育も欠かせません。

6. トラブル防止と対策

6.1. よくある失敗事例と対処法

電子帳簿保存法への対応で多く見られる失敗として、電子取引データの印刷保存や、スキャナ保存要件の認識不足などがあります。特に、電子データで受け取った請求書等を紙に印刷して保存するケースは、法令違反となる可能性が高いため注意が必要です。また、タイムスタンプの付与漏れや、検索機能の不備なども重要な問題となります。

6.2. 税務調査対応のポイント

税務調査の際には、保存している電子データの完全性を証明できる体制が必要です。具体的には、電子帳簿保存の承認申請の記録、運用規程、システムの操作履歴などを適切に保管しておくことが重要です。また、電子データの検索・表示が速やかにできる環境を整備し、調査官からの要請に迅速に対応できる体制を整えることが求められます。

6.3. システムトラブル時の対応

システム障害やデータ破損時の対応手順を事前に定めておくことが重要です。特に、電子データの保存に支障が生じた場合の代替手段や、復旧手順について明確な規定を設けておく必要があります。また、システムベンダーとの連携体制や、緊急時の連絡網なども整備しておくことが推奨されます。

6.4. バックアップ体制の整備

電子データの消失リスクに備え、適切なバックアップ体制を整備することが不可欠です。定期的なバックアップの実施はもちろん、バックアップデータの保管場所や保管期間、復元手順なども明確に定めておく必要があります。特に重要な電子取引データについては、複数の保存媒体を使用するなど、より慎重な対応が求められます。

よくある質問(FAQ)

電子帳簿保存法で最低限やるべきことは何ですか?

電子帳簿保存法で最低限必要な対応は以下の3点です: 1. 電子取引データ(メールやPDFの請求書など)は電子データのまま保存 2. 検索機能の確保(日付、金額、取引先での検索が可能な状態) 3. 改ざん防止措置(タイムスタンプの付与や履歴管理など)の実施

2024年1月からの電子帳簿保存法の変更点は何ですか?

2024年1月からの主な変更点は: 1. 電子取引データの保存要件の緩和 2. スキャナ保存における要件の見直し 3. 検索機能の要件の明確化 特に、中小企業への配慮として、より実務に即した運用が可能となりました。

電子帳簿保存法の対象となる書類は具体的に何ですか?

対象となる主な書類は: 1. 仕訳帳、総勘定元帳などの帳簿類 2. 契約書、請求書、領収書などの証憑書類 3. 電子的に受け取った請求書やインボイス 4. 給与関係書類や取引関係書類 ただし、社内での打ち合わせメモなど、税務上重要でない書類は対象外です。

レシートは紙のまま保存してもよいですか?

紙のレシートについては、以下の条件で対応が可能です: 1. 電子データとして受け取った場合は電子保存が必須 2. 紙のレシートは、スキャナ保存か紙での保存を選択可能 3. 小規模事業者の場合、一定の条件下で紙での保存が認められる ただし、将来的な管理効率化のため、可能な限り電子化することを推奨します。

電子帳簿保存法の対象外となる人・企業はありますか?

以下のような場合は対象外となります: 1. 個人事業主で青色申告を行っていない方 2. 法人税や消費税の申告義務がない団体 3. 事業規模が極めて小さい事業者(一定の条件あり) ただし、デジタル化の流れを考慮すると、対象外でも自主的な対応を検討することをお勧めします。

電子帳簿保存法とは何ですか?分かりやすく説明してください

電子帳簿保存法(電帳法)は、法人の帳簿や書類を電子データで保存することが認められている法律です。2022年1月から電子取引のデータ保存が原則として義務化されており、帳簿等保存の要件を満たすことで、紙の原本を破棄することができます。

電子帳簿保存法の改正内容について教えてください

帳簿保存法の改正内容として、電子データ保存が大幅に緩和されました。特に電子取引の保存方法や、スキャナ保存の要件について見直しが行われ、より実務に即した運用が認められています。

帳簿書類の電子化で最低限しなければならないことは何ですか?

帳簿等保存スキャナの利用に際して、以下を行っておきましょう: 1. タイムスタンプを付与すること 2. 検索機能を確保すること 3. 改ざん防止措置を実施すること これらの基本要件を満たすことが必要です。

法の対象書類はどのようなものがありますか?

電子帳簿保存法が対象とする書類には、帳簿類(仕訳帳、総勘定元帳など)と、取引関係書類(請求書、領収書など)があります。電子取引で受け取った書類は、電子データのまま保存しなければなりません。

帳簿保存法を導入する際の注意点は何ですか?

電子データ保存が認められていても、適切な保存要件を満たさないと税務調査等で否認されるリスクがあります。スキャナ保存電子取引を行った際は、検索機能の確保や原本性の担保など、法定要件を確実に満たすようにしましょう。

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