コラム

電子帳簿保存法とは?2024年完全義務化の要件と実務対応のポイントを詳しく解説

電子帳簿保存法とは?2024年完全義務化の要件と実務対応のポイントを詳しく解説

2025年3月7日

会計

デジタル化 法改正対応 電子帳簿保存法

電子帳簿保存法は、企業の帳簿や書類を電子データで保存するための法律です。2024年1月からは電子取引データの保存が完全義務化され、多くの企業で対応が迫られています。本記事では、電子帳簿保存法の基礎知識から、スキャナ保存の要件、システム導入のポイント、さらには実務での運用方法まで、企業が知っておくべき重要なポイントを解説します。

1. 電子帳簿保存法の基礎知識

1.1 電子帳簿保存法の定義と目的

電子帳簿保存法は、正式名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といい、帳簿や書類を電子データで保存するための法律です。この法律により、企業は帳簿や書類を電子的に保存することが認められています。 電子帳簿保存法は大きく分けて3つの保存制度で構成されています。1つ目は電子帳簿等保存制度、2つ目はスキャナ保存制度、3つ目は電子取引データの保存制度です。これらの制度により、企業は紙の保管スペースの削減や、業務効率の向上を実現できるようになりました。

1.2 なぜ今、電子化が必要なのか

デジタル化が進む現代のビジネス環境において、帳簿や書類の電子化は避けられない流れとなっています。特に2024年1月からは、電子取引データの保存が完全に義務化されることになり、企業は電子帳簿保存法への対応を迫られています。 電子化のメリットとして、検索性の向上や保管コストの削減、テレワーク環境での業務効率化などが挙げられます。また、電子データとして保存することで、災害時のバックアップ対策にもなります。

1.3 法改正の経緯と重要なポイント

電子帳簿保存法は1998年に施行されて以来、several度の改正が行われてきました。2022年1月の改正では、電子取引データの保存義務化や要件の緩和が実施されました。特に重要な改正点として、スキャナ保存における事前承認制度の廃止や、タイムスタンプ要件の緩和が挙げられます。

2. 2024年1月からの完全義務化について

2.1 電子取引データの保存義務化とは

2024年1月からは、電子取引で受け取った請求書やレシートなどを、電子データのまま保存することが完全に義務化されます。これは、一時的に認められていた紙での保存が認められなくなることを意味します。企業は電子データの保存要件を満たすシステムやワークフローを整備する必要があります。

2.2 具体的に何が変わるのか

2024年1月以降は、メールやWebサイトで受け取った請求書、クラウドサービスで発行された領収書などを、電子データのまま保存することが求められます。具体的には、タイムスタンプの付与や検索機能の確保など、真実性と可視性の確保のための要件を満たす必要があります。

2.3 猶予期間終了による影響

2024年1月までは経過措置として、電子取引データを印刷して紙で保存することが認められていました。しかし、この猶予期間が終了することで、多くの企業で保存方法の見直しが必要となります。特に中小企業においては、システム導入や業務フローの変更に伴うコストや労力が課題となっています。

3. 電子帳簿保存法の対象範囲

3.1 対象となる書類と取引の種類

電子帳簿保存法の対象となる書類は、国税関係帳簿書類と電子取引データに大別されます。具体的には、仕訳帳、総勘定元帳などの帳簿や、契約書、請求書、領収書などの書類が含まれます。また、EDI取引やインターネットバンキング、クレジットカードの利用明細なども対象となります。

3.2 保存が必要な電子データの具体例

保存が必要な電子データには、請求書や領収書のPDFファイル、メールで受信した注文書、クラウドサービスで発行された支払い明細などが含まれます。これらのデータは、改ざん防止措置やタイムスタンプの付与など、所定の要件を満たした形で保存する必要があります。

3.3 対象外となるケース

電子帳簿保存法の対象外となるケースもあります。例えば、個人事業主で前々年の売上高が1,000万円以下の場合や、一定の要件を満たす小規模企業者などは、申請により電子データ保存の義務化の対象外となることがあります。ただし、この場合でも、自主的に電子保存を選択することは可能です。

4. 具体的な対応方法と要件

4.1 電子データの保存方法

電子帳簿保存法に対応するためには、電子データの適切な保存方法を確立する必要があります。データの保存にあたっては、真実性の確保と可視性の確保という2つの要件を満たすことが求められます。具体的には、改ざん防止措置やバックアップ体制の整備、検索機能の実装などが必要となります。 電子データの保存には、自社でサーバーを構築する方法と、クラウドサービスを利用する方法があります。特に中小企業では、導入コストや運用の容易さから、クラウドサービスを選択するケースが増えています。

4.2 スキャナ保存の要件と手順

スキャナ保存制度を利用する場合、一定の要件を満たす必要があります。具体的には、解像度や階調の基準を満たすスキャナでの読み取り、タイムスタンプの付与、適正事務処理要件の順守などが求められます。 スキャナ保存の手順としては、受領した書類を速やかにスキャンし、画質や解像度を確認した上で、タイムスタンプを付与します。その後、原本との照合を行い、電子データとして保存します。なお、2022年の法改正により、事前承認制度が廃止され、より柔軟な運用が可能となりました。

4.3 タイムスタンプと検索機能の確保

電子データの保存において、タイムスタンプの付与は重要な要件の一つです。タイムスタンプにより、データの作成時期や非改ざん性を証明することができます。また、保存した電子データには、取引年月日、取引金額、取引先などで検索できる機能を持たせる必要があります。

5. 実務での運用ポイント

5.1 社内規程の整備

電子帳簿保存法への対応には、適切な社内規程の整備が不可欠です。具体的には、電子データの保存方法、スキャナ保存の手順、各担当者の役割と責任などを明確に定める必要があります。また、不正や誤りを防ぐためのチェック体制も規程に含める必要があります。

5.2 業務フローの見直し

電子データ保存に対応するため、既存の業務フローの見直しが必要となります。特に、請求書や領収書の受領から保存までの一連の流れを、電子化に適した形に再構築する必要があります。また、電子取引データの即時保存や、タイムスタンプの付与などの新たな作業を、既存の業務フローに組み込む必要があります。

5.3 従業員教育のポイント

電子帳簿保存法への対応を確実なものとするためには、従業員教育が重要です。特に、電子データの保存要件や具体的な操作方法、不正防止のための注意点などについて、定期的な研修や勉強会を実施することが推奨されます。

6. システム導入と選定

6.1 必要なシステムの機能要件

電子帳簿保存法に対応するシステムには、データの真実性を確保するための機能と、可視性を確保するための機能が必要です。具体的には、タイムスタンプの自動付与機能、検索機能、アクセス権限管理機能などが求められます。また、データのバックアップ機能や、システムの安定性も重要な要件となります。

6.2 おすすめのソリューション比較

市場には様々な電子帳簿保存法対応システムが存在します。選定にあたっては、自社の規模や業務内容、予算などを考慮する必要があります。特に、既存の会計システムとの連携や、操作性の良さ、サポート体制の充実度などが重要な判断基準となります。

6.3 導入時の注意点

システム導入時には、十分なテスト期間を設けることが重要です。また、段階的な導入を行うことで、リスクを最小限に抑えることができます。さらに、導入後のサポート体制や、将来的なシステムの拡張性についても考慮する必要があります。システムの選定から導入までは、専門家のアドバイスを受けることも検討すべきです。

7. コンプライアンスと監査対応

7.1 内部統制の整備

電子帳簿保存法への対応において、適切な内部統制の整備は不可欠です。電子データの保存に関する社内規程の整備、責任者の明確化、定期的なモニタリング体制の構築などが求められます。特に、電子取引データの保存においては、取引の発生から保存までの一連のプロセスを適切に管理する必要があります。

7.2 税務調査での対応方法

税務調査において、電子データで保存している帳簿や書類の提示を求められた場合、速やかに対応できる体制を整えておく必要があります。具体的には、検索機能を活用したデータの抽出や、タイムスタンプによる真実性の証明、電子データの閲覧環境の提供などが求められます。

7.3 違反した場合のリスク

電子帳簿保存法の要件を満たさない場合、重大な影響が生じる可能性があります。特に電子取引データを紙で保存するなど、法令に違反した場合、青色申告の承認取消しや重加算税の対象となる可能性があります。また、社会的信用の低下にもつながりかねません。

8. よくある課題と解決方法

8.1 実務での困りごとQ&A

電子帳簿保存法への対応において、多くの企業が直面する課題があります。例えば、大量の紙の請求書や領収書のスキャナ保存への移行や、電子取引データの適切な保存方法の確立などです。これらの課題に対しては、段階的な移行計画の策定や、専門家への相談が有効です。

8.2 トラブル事例と対処法

実務において発生しやすいトラブルとしては、電子データの保存要件を満たしていないケースや、システム障害によるデータ消失などが挙げられます。これらのトラブルを防ぐためには、定期的なバックアップの実施や、システムの二重化などの対策が重要です。

8.3 効率的な運用のためのヒント

電子帳簿保存法に効率的に対応するためには、業務プロセスの最適化が重要です。例えば、受領した請求書や領収書を即座にスキャンする習慣づけや、電子取引データを自動で保存するシステムの活用などが効果的です。また、定期的な社内研修を通じて、従業員の意識向上を図ることも重要です。

9. 今後の展望と対策

9.1 さらなる法改正の可能性

デジタル化の進展に伴い、電子帳簿保存法もさらなる改正が予想されます。特に、電子インボイス制度の導入や、より高度なデータ保存要件の設定など、新たな要件が追加される可能性があります。企業は、これらの変更に柔軟に対応できる体制を整えておく必要があります。

9.2 デジタル化への準備

今後、ビジネスのデジタル化はさらに加速することが予想されます。電子帳簿保存法への対応は、単なる法令順守にとどまらず、業務効率化やペーパーレス化を推進する好機となります。クラウドサービスの活用や、業務プロセスのデジタル化を積極的に検討することが重要です。

9.3 長期的な対応戦略

電子帳簿保存法への対応は、長期的な視点で取り組む必要があります。システムの定期的な見直しや、新技術への対応、従業員教育の継続的な実施などが求められます。また、取引先とのデジタルコミュニケーションの促進や、業務プロセス全体のデジタル化を視野に入れた戦略の策定が重要です。

よくある質問と回答

電子帳簿保存法で最低限やるべきことは何ですか?

最低限必要な対応として、電子取引データの保存があります。具体的には、メールやWebサイトで受け取った請求書、領収書などを電子データのまま保存する必要があります。また、保存したデータには検索機能を確保し、改ざん防止のためのタイムスタンプを付与することが求められます。

紙のレシートは紙のまま保存していいですか?

2024年1月以降、電子取引で受け取った書類は電子データのまま保存する必要があります。ただし、紙で受け取ったレシートについては、従来通り紙での保存が認められています。ただし、スキャナ保存制度を利用して電子化することも可能です。

電子帳簿保存法の対象外となるのはどんな場合ですか?

個人事業主で前々年の売上高が1,000万円以下の場合や、一定の要件を満たす小規模企業者は、申請により電子データ保存の義務化の対象外となることがあります。ただし、自主的に電子保存を選択することは可能です。

スキャナ保存の要件は何ですか?

スキャナ保存には、解像度や階調の基準を満たすスキャナでの読み取り、タイムスタンプの付与、適正事務処理要件の順守などが必要です。2022年の法改正により事前承認制度が廃止され、要件が緩和されました。

電子帳簿保存法違反のリスクは何ですか?

要件を満たさない場合、青色申告の承認取消しや重加算税の対象となる可能性があります。また、税務調査において電子データの提示ができない場合、追徴課税などのペナルティを受ける可能性があります。

電子帳簿保存法とは簡単に言うと何ですか?

電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿書類を電子データで保存することを認める法律です。正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といいます。一般的に電帳法とも略されます。この法律は、帳簿や請求書などの書類を紙ではなく電子データのまま保存することを認めるもので、企業のペーパーレス化や業務効率化を促進する目的があります。わかりやすく解説すると、企業の税務関連書類の保存方法について、従来の紙での保存に加えて電子データでの保存も認めるための法律です。保存法の改正により、2022年から電子取引の電子保存が義務化され、2024年1月からは猶予期間が終了し完全義務化となりました。

2024年の電子帳簿保存法改正で何が変わりましたか?

2024年1月からの電子帳簿保存法改正の主な変更点は、電子取引データの保存義務化の猶予期間が終了したことです。2022年から2023年までは経過措置として紙での保存も認められていましたが、2024年1月以降は電子データのまま保存することが完全義務化されました。改正電子帳簿保存によって、メールやWebで受領した請求書や領収書は必ず電子データで保存する必要があります。また、帳簿保存法の改正内容として、優良な電子帳簿の要件を満たす場合、青色申告特別控除の上乗せや過少申告加算税の軽減措置が適用されるようになりました。スキャナ保存・電子取引においても、タイムスタンプ要件の緩和や検索要件の緩和など、実務対応しやすい方向への見直しがされています。電子データ保存が原則となる時代に対応するため、企業は早急に社内体制の整備が求められています。

優良な電子帳簿として認められるための要件は何ですか?

優良な電子帳簿として認められるためには、「真実性の確保」と「可視性の確保」の両面から要件を満たす必要があります。真実性の確保としては、システム概要書の備付け、入力者情報の確認、訂正・削除履歴の保存などが求められます。可視性の確保としては、電子データの見読可能性の維持や検索機能の確保が必要です。具体的には、取引年月日、取引金額、取引先名称などで検索できる機能を備え、7年間の保存期間中にデータの完全性を保つことが求められます。電子帳簿保存法分かりやすく説明すると、国税関係帳簿を適正に保存するための厳格な基準を満たした電子データ保存システムを導入し、運用することで「優良な電子帳簿」として認められ、税制上の恩恵を受けることができます。正規の簿記の原則に従った記録保持と、電子データの真実性・可視性を担保することが重要です。

電子取引の保存方法にはどのような選択肢がありますか?

電子取引の保存方法には主に3つの選択肢があります。1つ目は自社のサーバーやクラウドストレージを活用し、検索機能やタイムスタンプなどの要件を満たす形で電子データを保存する方法です。2つ目は、電子帳簿保存法対応のクラウドサービスを利用する方法で、各種要件への対応が自動化されているため導入が比較的容易です。3つ目は、自社開発システムで対応する方法ですが、開発コストと保守の負担が発生します。わかりやすく解説すると、電子取引の保存においては、ただ単にPDFをフォルダに保存するだけでは不十分で、タイムスタンプによる改ざん防止措置や、帳簿保存法が定める検索要件を満たす必要があります。特に中小企業の場合は、専用のクラウドサービスを利用することで、電帳法への対応負担を軽減することができるでしょう。

法の対象書類にはどのようなものがありますか?

電子帳簿保存法の対象書類は大きく「国税関係帳簿」と「国税関係書類」に分けられます。国税関係帳簿には、仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛金元帳、固定資産台帳などの会計帳簿が含まれます。国税関係書

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