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ロータリエンコーダの仕組みと選び方|インクリメンタル型から最新技術まで完全解説

ロータリエンコーダの仕組みと選び方|インクリメンタル型から最新技術まで完全解説

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工作機械やロボット制御に不可欠なロータリエンコーダ。回転角度や回転数を電気信号に変換するこの重要なセンサについて、インクリメンタル型やアブソリュート型の仕組み、選定のポイント、トラブルシューティングまで、基礎から実践的な活用方法まで解説します。

1. ロータリエンコーダの基本

1.1 ロータリエンコーダの定義と役割

ロータリエンコーダは、回転角度や回転数を電気信号に変換する電子部品です。主に工作機械やモーターの位置制御、速度制御に使用される重要なセンサとして知られています。回転軸に取り付けられた格子円盤の回転を検出し、デジタル信号として出力することで、精密な位置制御や速度制御を可能にします。

特に産業用機器において、ロータリエンコーダは回転方向や回転量を正確に把握するために不可欠な存在となっています。エンコーダの基本的な役割は以下の3つです。

回転角度の検出

回転方向の判別

回転速度の測定

1.2 動作の基本原理

ロータリエンコーダの動作原理は、入力軸の回転に応じて、光や磁気を用いた検出方式により信号を生成することです。最も一般的な光学式エンコーダでは、光電素子とスリットを組み合わせた構造が採用されています。

格子円盤には多数のスリットが等間隔で配置されており、光源からの光をこのスリットを通して受光素子で検出します。円盤が回転すると、スリットを通過する光が周期的に変化し、これをパルス信号として出力します。

1.3 主な構成要素

ロータリエンコーダの主要な構成要素は以下の通りです。

格子円盤:スリットや磁気パターンが刻まれた円盤

検出部:光電素子や磁気センサなど

信号処理回路:検出信号を適切な出力形式に変換

ハウジング:各部品を保護する筐体

2. ロータリエンコーダの種類と特徴

2.1 インクリメンタル型の仕組みと特徴

インクリメンタル型エンコーダは、回転量を相対的な位置情報として出力する方式です。A相とB相の2つの出力信号を用いて、回転方向と移動量を検出します。インクリメンタル形の特徴として、構造がシンプルで小型化が容易であり、高分解能が得られやすいことが挙げられます。

ただし、電源投入時には必ず原点復帰が必要となり、瞬時の絶対位置は把握できないという特徴があります。主な用途としては、モーターの速度制御や位置制御などがあります。

2.2 アブソリュート型の仕組みと特徴

アブソリュート形エンコーダは、回転位置を絶対値として出力する方式です。複数のトラックに配置されたバイナリコードパターンにより、電源投入直後から現在位置を把握することができます。位置情報が失われる心配がないため、高い信頼性が求められるシステムで使用されています。

2.3 検出方式による分類(光学式/磁気式)

検出方式は大きく光学式と磁気式に分類されます。光学式エンコーダは、LEDなどの光源と受光素子を使用し、スリットを通過する光量の変化を検出します。高い分解能と精度が特徴ですが、環境の影響を受けやすい面があります。

一方、磁気式エンコーダは、永久磁石と磁気センサを組み合わせて回転を検出します。耐環境性に優れており、粉塵や水滴の影響を受けにくいという利点があります。

3. 出力信号と検出方式

3.1 A相・B相の信号出力

ロータリエンコーダの基本的な出力信号は、A相とB相の2つの矩形波で構成されています。これらの信号は90度の位相差を持ち、この位相差により回転方向を判別することができます。信号の1周期は回転角度の最小単位となり、分解能を決定する重要な要素となっています。

3.2 オープンコレクタ出力の特徴

オープンコレクタ出力は、シンプルな回路構成で実現できる出力方式です。電源電圧に応じて柔軟に対応できる利点がありますが、ノイズの影響を受けやすく、高速回転時の信号品質に注意が必要です。

3.3 ラインドライバ出力の特徴

ラインドライバ出力は、差動信号を用いることでノイズに強い特性を持ちます。電圧出力の安定性が高く、長距離配線時でも信号の劣化が少ないため、高精度な位置制御が必要なシステムで多く採用されています。

4. 性能指標と仕様

4.1 分解能と精度

ロータリエンコーダの性能を示す重要な指標の一つが分解能です。分解能は1回転あたりのパルス数で表され、より高い分解能を持つエンコーダほど、より細かな角度の検出が可能となります。工作機械などの精密な位置制御が必要な用途では、高分解能のエンコーダが選択されます。

精度は、実際の回転角度と出力信号との誤差を示す指標です。インクリメンタルエンコーダでは、スリットの加工精度や光電素子の配置精度が、最終的な測定精度に大きく影響を与えます。

4.2 最大回転数

ロータリエンコーダの回転数は、機械的な耐久性と電気的な応答性の両面から制限されます。特に高速回転時には、以下の点に注意が必要です。

機械的な制限:軸受けの耐久性、回転バランス

電気的な制限:信号処理回路の応答速度

温度上昇:継続的な高速回転による発熱

4.3 電源電圧と出力形式

電源電圧は一般的に5V、12V、24Vなどが使用されます。システムの電源電圧に合わせて適切な製品を選択する必要があります。出力形式には、オープンコレクタ出力やラインドライバ出力があり、ノイズ環境や配線距離に応じて選択します。

5. 具体的な応用例

5.1 工作機械での使用例

工作機械では、位置制御と速度制御の両面でロータリエンコーダが活用されています。主軸の回転速度制御や、送り軸の位置決めなど、高精度な制御が必要な場面で重要な役割を果たします。特に以下のような用途で使用されています。

マシニングセンタの主軸制御

NC旋盤のツールポスト位置決め

研削盤の砥石回転制御

5.2 ロボット制御での活用

産業用ロボットの各関節部分には、位置検出用のエンコーダが搭載されています。インクリメンタル形エンコーダは、その高分解能と応答性の高さから、ロボットアームの精密な位置制御に適しています。

特に複雑な動作を行う多関節ロボットでは、各軸の角度を正確に検出することが重要です。ロータリエンコーダにより、以下のような制御が可能となります。

アーム位置の高精度制御

動作速度の最適化

位置のフィードバック制御

5.3 各種産業機器での利用

ロータリエンコーダは様々な産業機器で使用されています。その応用範囲は広く、以下のような機器で活用されています。

エレベーターの位置検出

コンベアシステムの速度制御

印刷機の紙送り制御

包装機械の同期制御

6. 選定・導入のポイント

6.1 用途に応じた種類の選択

ロータリエンコーダの選定には、使用環境や要求仕様を十分に考慮する必要があります。以下のような要素を検討します。

必要な分解能

動作環境(温度、湿度、振動など)

信号出力形式の選択

取り付けスペースの制約

6.2 分解能の決定方法

分解能は制御精度に直接影響を与える重要な要素です。必要な分解能は、以下の要素を考慮して決定します。

必要な位置決め精度

制御システムの応答性能

コストとのバランス

6.3 取り付け方法の検討

エンコーダの取り付けには、機械的な精度が重要です。以下の点に注意が必要です。

軸心の一致

取り付け時の応力

振動対策

配線スペースの確保

特に光学式エンコーダでは、取り付け時の軸ずれや振動が測定精度に大きく影響するため、慎重な取り付け作業が求められます。また、磁気式エンコーダを使用する場合は、周囲の磁気の影響を考慮した設置位置の選定が必要です。

7. トラブルシューティング

7.1 よくある故障と原因

ロータリエンコーダの故障は、システム全体の動作に重大な影響を及ぼす可能性があります。主な故障の原因として、以下のような要因が挙げられます。

機械的振動による軸受けの摩耗

過度の回転による発熱

埃や水分の侵入による光学系の劣化

配線の断線やノイズによる信号異常

特に光学式エンコーダでは、スリットや光電素子の汚れが測定精度に影響を与えることがあります。また、インクリメンタル型エンコーダでは、ノイズによる誤カウントが発生する可能性があります。

7.2 メンテナンス方法

エンコーダの性能を維持するためには、定期的なメンテナンスが重要です。基本的なメンテナンス項目には以下のようなものがあります。

定期的な清掃と点検

軸受部の潤滑

信号波形の確認

取付部の緩みチェック

7.3 予防保全のポイント

トラブルを未然に防ぐための予防保全として、以下の点に注意を払う必要があります。

使用環境の温度管理

振動対策の実施

適切な設置場所の選定

定期的な性能チェック

8. 最新技術動向

8.1 高分解能化の進展

ロータリエンコーダの技術革新は、より高い分解能を実現する方向に進んでいます。最新の技術では、以下のような進展が見られます。

光学式エンコーダの高精度化

磁気式エンコーダの性能向上

信号処理技術の発展

特に工作機械やロボット制御の分野では、ナノメートル単位の位置制御が求められるようになっており、それに対応した高分解能エンコーダの開発が進められています。

8.2 小型・軽量化の動き

産業機器の小型化に伴い、ロータリエンコーダにも小型化・軽量化が求められています。最新の開発動向として、以下のような特徴があります。

部品の集積度向上

新素材の採用

製造プロセスの改善

8.3 新しい検出方式の開発

従来の光学式や磁気式に加えて、新しい検出方式の研究開発が進められています。主な開発方向として以下が挙げられます。

複合センサーの活用

デジタル信号処理の高度化

ワイヤレス技術の導入

9. まとめ

9.1 導入時の注意点

ロータリエンコーダの導入に際しては、以下の点に特に注意が必要です。

使用環境に適した種類の選択

必要な分解能の見極め

適切な取り付け方法の確保

定期的なメンテナンス計画の策定

特にインクリメンタル型エンコーダを選択する場合は、原点復帰の必要性や、システム全体での位置管理方法について十分な検討が必要です。

9.2 将来の展望

ロータリエンコーダの技術は、産業のデジタル化やIoTの進展に伴い、さらなる発展が期待されています。今後の展望として、以下のような方向性が考えられます。

AI技術との融合

自己診断機能の強化

環境負荷の低減

コストパフォーマンスの向上

特に位置制御や速度制御の精度向上は、製造業の自動化やロボット技術の発展に不可欠な要素となっています。ロータリエンコーダは、これからも産業の発展を支える重要なセンサとして進化を続けていくでしょう。

よくある質問と回答

ロータリエンコーダとは何ですか?

ロータリエンコーダは、回転角度や回転数を電気信号に変換する電子部品です。工作機械やモーターの位置制御、速度制御に使用される重要なセンサです。回転軸の動きを検出し、デジタル信号として出力することで、精密な制御を可能にします。

インクリメンタル型とアブソリュート型の違いは何ですか?

インクリメンタル型は相対的な位置情報を出力し、電源投入時に原点復帰が必要です。一方、アブソリュート型は絶対位置を出力し、電源を切っても位置情報が失われません。インクリメンタル型は構造がシンプルで高分解能が得られやすく、アブソリュート型は信頼性が高いという特徴があります。

光学式と磁気式はどう違いますか?

光学式は光電素子とスリットを使用し、高精度な測定が可能ですが環境の影響を受けやすいです。磁気式は永久磁石と磁気センサを使用し、耐環境性に優れていますが、一般的に光学式より分解能が低くなります。

分解能とは何ですか?

分解能は1回転あたりのパルス数を表し、より高い分解能を持つエンコーダほど、より細かな角度の検出が可能になります。例えば、1000パルス/回転の場合、0.36度単位での角度検出が可能です。

主な用途は何ですか?

工作機械の位置決め制御、産業用ロボットの関節制御、エレベーターの位置検出、印刷機の紙送り制御など、様々な産業機器で使用されています。特に精密な位置制御や速度制御が必要な場面で重要な役割を果たしています。

ロータリエンコーダの概要ページはどこで確認できますか?

製品の技術仕様や基本情報は、メーカーの公式カタログページで確認できます。特に重要な項目として、分解能、出力方式、電源仕様、使用環境条件などが記載されています。製品選定の際は、これらの仕様を確認することが重要です。

位置速度の検出はどのように行われますか?

ロータリエンコーダは、内部のディスクの回転を検出して位置情報を生成します。この位置情報の時間変化から速度を算出することができます。高精度な位置速度制御が必要なアプリケーションでは、適切な分解能と応答性を持つエンコーダの選択が重要になります。

直線変位の測定にも使用できますか?

ロータリエンコーダを使用して直線変位を測定することも可能です。ラックアンドピニオンやプーリーなどの機構を組み合わせることで、直線運動を回転運動に変換し、その変位量を測定できます。この方式は、工作機械のテーブル位置検出などに活用されています。

図で見る構造と動作原理を教えてください

ロータリエンコーダの基本構造は、光源、スリット付きディスク、受光素子から構成されています。ディスクが回転すると、スリットを通過する光が断続的に変化し、これを受光素子で検出することでパルス信号が生成されます。この信号パターンから回転量や方向を検出します。