グリーンスチールとは?必要な理由や事例を解説
「スマートグリッド」「ブルーエネルギー」など、エコロジーとテクノロジーが融合した新たな用語が常に生まれています。その中でも最近注目されているのが「グリーンスチール」です。
このフレーズが何を表しているのか、興味を持った方も多いのではないでしょうか。今回はあまり聞き慣れない「グリーンスチール」の概念について総合的に解説し、なぜそれが重要なのか、どんな具体的な事例があるのかについて探ります。
この先の持続可能性との関わりや、新たな環境対策としての可能性について一緒に考えてみましょう。
グリーンスチールとは
グリーンスチールという名の新型鋼材製造法についてみなさんはご存知でしょうか? これは工業用製品作成過程で炭素の排出を減らすことを目指す一つの革新的な手法で、製鋼時のCO2排出を5から30%またはそれ以上削減する可能性を秘めています。
この方法を可能にする主な技術は、水素による製鉄です。
燃焼時にCO2を出さない水素は、製鉄に求められる高い温度獲得のための燃料として最適で、製鉄スラグの改良と捕獲したCO2との結合により人工石灰石を作り出す手法も存在します。
多くの鋼鉄企業がこのグリーンスチール生産に力を入れており、新たな工業的進歩が製鋼業界に持続可能な、そしてより環境に優しい変革をもたらそうとしている兆しを見せています。
しかし、現段階ではグリーンスチールの生産はコストがかかり、大量生産に必要な課題が残されていることも事実です。
そこで注目されるのが、この分野への政府や企業からの研究開発の支援です。
これらの支持が増えることで、更なる企業がグリーンスチール生産に乗り出し、より広範囲にこの新型鋼材が広まることで、我々が目指す炭素排出削減に大いに貢献する可能性があります。
グリーンスチールが必要な理由とは
グリーンスチールやグリーンメタルが必要とされている理由をご紹介します。
温室効果ガスの削減
「グリーンスチール」――この言葉は今日の地球環境問題に新たな光を与えています。
ここでは、エコフレンドリーな鋼材を通じて地球の未来を創造する試みを紹介します。
温暖化や気候変動問題に取り組む全世界、特に我が国日本では、各種の政策や支援を行っています。その主軸となるのが、「温室効果ガスの削減」です。
とりわけ鉄鋼製品の製造は、温室効果ガス――特に二酸化炭素(CO2)の発生源となっており、自動車、造船、工作機械など幅広い業界での大量使用によりその排出量は増大しています。
この二酸化炭素の排出抑制が、気候変動問題改善のカギとなります。ここで注目されているのが「グリーンスチール」です。
エコフレンドリーな製鋼技術により、再生可能エネルギーを活用した製鋼法や、水素を用いた高効率な製鋼法を駆使し、大幅な CO2排出抑制を実現しているのです。
私たちの社会にとって、これは産業界の持続可能な成長と自然環境の保全を可能にする勝負手とも言えます。身近な自動車業界や建設業界への感銘は深いでしょう。
まだまだ課題は多いにせよ、「グリーンスチール」の活用は避けられない選択となっています。
国内の二酸化炭素排出量
鉄鋼業は、日本国内で排出される二酸化炭素の40%以上を占め、さらに日本は鉄鋼生産量で世界第3位。
これにより、我々の国では毎日大量の二酸化炭素が排出されています。
したがって、日本が2050年のカーボンニュートラル達成目標に向けて前進するためには、脱炭素化への取り組みを加速する必要があります。
その一環として、製鉄プロセスで石炭を水素に置き換えることにより二酸化炭素を排出しないグリーンスチール技術の普及が注目されています。これにより、鉄鋼生産からの二酸化炭素排出を大幅に削減し、カーボンニュートラル達成に道筋をつけることが可能となります。
鉄鋼業界でも、既にこのグリーンスチールや同様の”グリーンメタル”への取り組みが始まっています。そして、これらの取り組みが経済的競争力を保つ一方で、持続可能な社会の実現にも大きく寄与することでしょう。
グリーンスチールの製造方法とは
グリーンスチールは、スチール製造の新たな方法として注目を集めています。その名の通り「グリーン」を具象化したような製造プロセスが特徴で、従来のスチール製造法よりもCO2排出量を大幅に削減できるのです。
スチールを製造する際、一般的には間接還元法が用いられ、鉄鉱石とコークスを組み合わせて酸素を除去します。しかし、このプロセスでは大量の二酸化炭素を放出します。それに対し、グリーンスチールの製造には直接還元法が採用され、酸化鉄と水素ガスを反応させて鉄を作ります。
直接還元法の真価は、水素ガス生成時に再生可能エネルギーを使用する点にあります。これにより、年間数百万トンものCO2排出量を抑制することが可能になります。さらに、製鉄所が必要とする電力を再生可能エネルギー源から供給することで、グリーンスチールの製造は総合的に温室効果ガスの排出量を大きく削減します。
ただし、グリーンスチールはその製造コストや生産効率の問題から、まだ全面的な普及には至っていません。現在のところは一部の地域や企業での導入が目立ちます。しかしながら、再生可能エネルギー技術の進歩と共に、今後より多くのメーカーがグリーンスチールの採用を検討する可能性は高まっています。
これらの努力が結実すれば、スチール産業は地球温暖化の緩和に対する大きな一翼を担うことができるでしょう。
グリーンスチールの事例とは
グリーンスチールの事例をご紹介します。
日本製鉄
日本製鉄は、持続可能な社会貢献を目指し、2023年9月より自動車メーカーなどへのグリーン鋼材供給を開始する予定です。その多大な評価は、鉄鋼生産におけるCO2排出削減と再利用可能な資源利用の推進によるものです。
日本製鉄は、鉄鋼生産に使われるコークス炉ガスのCO2排出を抑えるために、高効率の製鉄プロセスを開発。高炉を電炉に置き換えることで、初年度には30万t(トン)の供給が可能とされています。
また、地球環境の保護に貢献するために、新規鉱石の採掘を抑え、スクラップといった再利用資源の活用を進めています。同社常務執行役員で薄板事業部長の遠藤 悟氏は、「材料コストは高くなるが、グリーン鋼材の需要はある」と見込んでいます。
さらに、廃棄物量削減の観点から鉄鋼製品のライフサイクル全体における再利用・リサイクルも視野に入れており、さらなる環境負荷軽減に取り組んでいます。
アルセロール・ミタル
ヨーロッパ最大の鉄鋼メーカー アルセロール・ミタルは、環境に配慮した新型の製鉄方式である「グリーンスチール」を主導しています。
化石燃料に頼らず再生可能エネルギーを活用して鉄を製造する「直接還元技術」を開発し、二酸化炭素の排出を抑制する取り組みを進めています。
さらに、既存の製鉄プラントを環境配慮型に改造し、CO2排出量を50%減らすという目標も達成。この先進的なアプローチは、他の製鉄企業にも示唆を与え、製鉄業界全体の持続可能な未来への道筋を示しています。
アルセロール・ミタルはまた、水素を使った直接還元法を取り入れた新たな製鉄所をドイツに建設中。2025年末までに稼働すべく、このプロジェクトは製鉄業界の脱炭素化への大きな一歩となるでしょう。
このような取り組みはヨーロッパ全体で進行中です。
SSAB
スウェーデンの鉄鋼メーカーSSABもアルセロール・ミタルと似たような方向性を示しています。
SSABは鉄鋼メーカーのLKABやエネルギー企業Vattenfallとの共同プロジェクトとして、HYBRITパイロットプラントを設立。
そこでは水素ガスから鉄鉱石の還元および製鉄に関する研究を進めています。
環境問題に対するこのような真摯な取り組みが、2025年の商用生産を見据えた新型製鉄方式の進化につながることが期待されています。
まとめ
「グリーンスチール」とは、再生可能エネルギーを用いて製鉄を行う環境に優しい生産手法のことです。
化石燃料依存の現行製鉄法からの脱却を目指し、地球環境保全と産業発展を同時に達成する手段として注目されています。
スウェーデンのSSAB社が既に実証実験を成功させており、グリーンスチールは地球温暖化防止の一端を担う可能性を秘めています。
よくある質問
鉄鋼業の4大メーカーは?
鉄鋼メーカーは、鉄鉱石や原料炭、鉄クズなどを使用して製鋼や鋼材製品を製造する企業を指します。主に高炉メーカーと電炉メーカーの2つに分類されますが、その中で高炉メーカーに属する日本製鉄、JFEホールディングス、神戸製鋼所、日鉄日新製鋼の4社を指して4大鉄鋼メーカーと呼称しています。