顧客データとは?分析方法や活用事例をご紹介
現代ビジネスにおいて、「顧客データ」が大きな役割を果たすことは誰もが認識しています。しかしながら、その本質や扱い方、具体的な分析方法や活用事例まで具体的に理解しているビジネスパーソンはまだ少ないのが実情です。
本記事では、「顧客データとは何か」から始めて、その収集方法、分析の手法、さらには具体的な活用事例を詳しくご紹介していきます。データを活用したビジネス展開が成功への鍵を握る現代において、この情報を武器に、ビジネスの可能性を最大限に引き出してください。
顧客データとは
顧客データとは、具体的には、顧客の姓名、連絡先、購入経歴などから、どのようなルートで商品やサービスに到達したかまで、様々な詳細情報を指します。これらの情報は製品開発やマーケティング戦略作成、販売活動に欠かせないものであり、ビジネスにおける有価な情報源と考えることができます。
例えば、購入履歴を析出することで、顧客一人一人の購買行動や趣味を読み解き、それに基づくカスタムサービスや提案が可能となります。また、顧客がどのような手段で製品やサービスに辿り着いたかの情報を分析することで、有効な広告チャネルや新たなマーケティングの可能性を調査することができます。
顧客データは、企業が顧客像を具体化し理解する際に必要不可欠な情報であり、定量データと定性データの二つに大別することができます。
定量データとは
定量データは、数値情報であり、特定の量または数値を通じて明確に策定できます。これは、具体的な数値を生成し、その数値を分析することで詳細な解釈が可能なデータ型です。
顧客の住所、性別、年齢、年収、家族構成などの顧客属性情報、顧客の購買履歴データ、そしてウェブサイトへのアクセスログなどの行動履歴データがこれに該当します。
データは統計分析により、情報を抽出し、解釈し、未来を予測するなどの目的で利用できます。これらの情報は、調査や研究で利用される主要な2つのデータ形式である定量データと定性データの中で、客観的かつ処理が容易な情報源として求められます。
定性データとは
定性データは、数値に変換することが難しい特性を持つデータで、その内心や経験を詳細に学び取るための独特な手法とも言えます。ユーザーのインタビューやディスカッションを通じて得た意見や感情も定性データの一部で、それらは数値化や統計化することなく理解されます。
例えば、新製品が市場に出たとき、顧客に尋ねる「どんな感じがしましたか?」や「どの機能が気に入りましたか?」などの問いは、顧客の心を掴むための定性的なアンケート調査になります。そういった情報は製品改良の参考になり、顧客の意識や要望に対する洞察を提供する手がかりとなります。
カスタマーサービスやSNSなどに上がる顧客の声も定性データの一例で、これにより顧客の要望や感じ方の理解が深まり、商品やサービス向上につながります。
顧客データを収集する方法とは
顧客データの収集方法について詳しく見ていきましょう。
定量データの収集方法とは
定量データ収集の手法の例は多岐にわたります。
例えば、一般的なアンケートにて商品評価や顧客の思考を一定の基準で評価し、その結果を数値化して分析します。
ウェブ活動分析を使って訪問者数やユーザーの行動歴などの定量データを収集することも一例です。
その外、実験や観察、調査等から得られるデータも定量データ収集に含まれます。市場調査では、顧客の買い物行動やブランドに対する評価等、様々な要素を数値化して取り扱います。
定性データの収集方法とは
定性データの採取手段として主要なものには、インタビュー、観察、そして文書分析があります。
インタビューは、収集対象者の直接的な意見や感想を取り入れ、それぞれの視点や経験を詳しく探る手法となります。
観察は特定の現象や行動を分析し、その結果やパターンを記録することで客観的な情報を得ることができます。
文書分析は過去の記録や資料からの情報を探る手法で、歴史的視点や背景を解析するのに有用です。これらの手段は組み合わせたり、他の手段を使用したりすることで多角的に情報を収集します。
定性データ収集法を利用することで、定量データのみでは分からない深い理解を得ることができます。
顧客データの分析手法とは
顧客データの分析によく利用される手法をご紹介します。
セグメント分析
セグメント分析とは、それぞれの顧客がもつ特徴や属性を基にして、似た傾向を示す顧客群を分ける分類技術を指します。顧客の年齢や性別、収入、購入履歴、趣味といった多様な属性を用いて、具体的な顧客グループを確認し、それに対応したマーケティング戦略を練り上げます。
例えば、特定の商品が20代の男性から高い支持を得ているとすれば、この情報をもとに20代の男性をターゲットとしたマーケティング戦略を展開することができます。もしくは、別の商品が高齢者から好評を博しているなら、その商品を強調したマーケティングアプローチへとシフトすることが可能です。
セグメント分析によって、企業は自社の顧客層を深く把握し、それぞれの顧客の特徴にマッチしたより効率的なマーケティング戦略を展開することが可能となります。これにより、企業の売上向上だけではなく、顧客満足度の向上にも寄与します。
RFM分析
RFMとは、「直近の購入日(Recency)」「購入頻度(Frequency)」「購入金額(Monetary)」の頭文字をとったものです。
これらの要素を分析することにより、顧客毎の適切な接触手法や効果的なマーケティング戦略を編み出すことが可能です。
直近の購入日(Recency)は、いつ顧客が最後に商品を購入したかを示し、新規性が高いほど顧客の関心度も高いです。
購入頻度(Frequency)は、特定の期間に顧客が何回購入行動をしたかを示し、頻度が高いほど再購入の可能性も大きいといえます。
購入金額(Monetary)は、顧客の購入による利益を示し、これが大きいほどその顧客の価値は大きいと判断されます。
これらのRFM分析を用いていくと、顧客の行動傾向が可視化可能となり、具体的なマーケティング施策に反映させることが可能になります。例えば、購入日が最近で頻度も多く、購入金額も大きなロイヤル顧客に対しては、特別セールの招待など特別感を感じさせる施策を考えます。
一方、かつては頻繁に購入していたものの、最近は購入が途絶えている休眠顧客に対しては、新商品紹介やキャンペーン情報をメールやSNSで送るといった接点を増やす取り組みが有効です。
バスケット分析
「バスケット分析」とは、その名の通り、顧客が購入する商品の組み合わせを研究するマーケティング手法の一つです。特定の製品やサービスが同時にお客様から選ばれるパターンを分析し、消費行動や尚好を紐解くことがこの方法の目的であり、それが「特定の製品を選択する顧客は別の特定の製品を選択しやすい」などのパターンを発見する鍵となります。
例えば、オンラインショップの運営者は、「この製品を見た顧客はこの製品も興味を持つことが多い」や、「この製品を購入した顧客はこれも購入する傾向がある」などの推奨を提示するために、バスケット分析を駆使することが可能です。
実際の店舗では、バスケット分析の結果をもとに商品の配置場所を決定することで、商品を見つけやすくし、購買を促すことが可能となります。
バスケット分析は、各種ビジネスにとって価値ある顧客データの解剖法といえます。その結果を活用することで、より有効なキャンペーンの展開や店内レイアウトの改善など、さまざまな施策を策定することが可能となります。
デシル分析
デシル分析とは、購買データを細分化して全体像を把握する一手法です。
具体的には、購入してくれた全顧客のデータを売上げ金額の順に並べ、その情報を10等分(デシル1から10)までに分け、その結果をリストアップします。デシル分析により各区分が全顧客売上げの何割を占めているのかを瞬時に把握することが可能になります。
デシル分析の具体例を挙げると、顧客データが1,000名であった場合、10等分することで各グループは100名ずつになります。その各グループがもたらす売上げは必ずしも均等ではないため、ある特定のグループが売上全体のどれくらいを担っているのか、その結果を明らかにします。
ここから具体的な戦略を考えていきましょう。仮に、1から3位のグループ300名が全体の売上の90%を占めているとしたら、これらの顧客にフォーカスすべきであることが分かります。このような売上げ貢献度の高い顧客に対して、優待クーポンを提供したり、キャンペーンを実施したりすることで、リピーターの増加や売上向上が見込めるでしょう。
全体の顧客データから大切な傾向や戦略を見つけ出す上で、デシル分析は非常に便利な技術の一つと言えます。
顧客データの活用で実現できることとは
顧客データの活用で実現できることをいくつかご紹介します。
LTVの増大
顧客データ分析の活用は、ビジネスにおける重要な戦略の一部です。特に、顧客一人あたりに対して企業が得る全体の利益を示す指標である、LTV(Life Time Value、または、顧客生涯価値)を高めるためには、避けて通れません。
顧客データは、個々の顧客情報、つまりは氏名や住所、購入履歴など相対的にウェイトの乏しい情報から構成されています。しかし、これらの情報群を集約し、分析することで、顧客の購買行動や趣向を明らかにし、個別の顧客に対するパーソナルなマーケティング手法が実行可能となります。これにより、顧客満足度の向上に役立ち、リピーターの増加やLTVの拡大を実現することができます。
さらに、顧客データは新製品の開発や広告の戦略立案時にも活用可能です。顧客の嗜好を理解し、それに見合った商品やサービスを提供することで、より精緻な顧客プロフィールを創出し、売上の向上につながります。
カスタマーサクセスの推進
カスタマーサクセスは、「顧客の成功」を意味します。これは、顧客があなたの商品やサービスを通じて良好な結果を得て、それによって満足度と忠誠度を向上させることを目指す概念です。
顧客データ分析の活用により、顧客一人ひとりが求める価値を把握し、それを満たす高品質なエクスペリエンスを提供できるのです。
購入履歴、利用パターン、質問内容などから顧客の傾向や要求を分析することで、最適なタイミングと方法で商品やサービスを提案し、顧客体験の向上を促します。単に商品やサービスを押し売りするのではなく、顧客との深い関係を築く過程なのです。
データドリブンマーケティングの実現
これまで眠っていたような顧客データを活性化し、その分析に基づくマーケティング戦略を行うことが求められています。
これは、様々な情報源から得られる大量のデータ、例えばソーシャルメディアの情報やオンラインでの購買行動、様々な統計データなどを解析し、顧客の行動パターンや好みを把握することで、よりパーソナライズされたマーケティング戦略を進めることを可能にします。
具体的には、顧客向けのメッセージの最適化、新規顧客の購買傾向の予測、ロイヤリティの向上、そしてより個々に合わせたプロモーションの提案などが可能となります。これにより、企業のマーケティング活動の効率向上を可能にし、常に進化し続けるビジネス環境に対応する力を持つことができます。
One to Oneマーケティング
One to Oneマーケティングは、それぞれの顧客の個性や好みを理解し、それに基づいた個別化されたマーケティングを展開するという考え方です。
個別のデータを有効に活用することにより、より個々に対応した提案やサービスを提供でき、顧客との信頼関係を確固たるものにし、ブランドへの忠誠心を高めることが期待できます。具体的には、顧客の興味・趣向にマッチした商品の推奨、購入後の独自のフォローアップ、特記すべき日に特別な提案をするなど、顧客の個々の需求に応えるマーケティングが可能となります。
顧客データ分析の活用事例とは
分析した顧客データ分析の活用事例を確認しておきましょう。
商品の位置を工夫することによる売り上げアップ
多くのビジネスが顧客データ分析により商品配置や販売戦略を最適化し、結果を出しています。
例として、飲料メーカーのヤクルトがオランダでの売上を15〜20%向上させた事例をご紹介します。
データ分析を有効活用した結果、ヤクルトでは自社の各商品が別々の消費者層にヒットしていることが明確となりました。
この発見は、同じカテゴリ内に100〜150点もの商品が存在するヤクルトにとって、販売戦略の見直しのきっかけとなりました。
事実、同社の成果の背後には、あるアナリティクスパッケージの導入がありました。
従業員がそれぞれの商品について持っていたばらばらなデータを、「Spotfire」というツールで一元管理・分析することにより、新たな視点からの商品配置改善を実現しました。
例えば、通常サイズのヤクルトの7本パックと15本パックを並べて販売したところ、それぞれの商品が異なる客層から支持されることが分かり、双方の売上がアップしました。
また、女性は少量を頻繁に、男性は大量にまとめて購入するという購買行動の違いを理解することで、より一層の売上げ増を図ることができました。
運転適性に応じた最適な自動車保険の提供
顧客データ分析の成功事例として注目されているのが、運転データを基にした個別の自動車保険です。ある海外の保険会社では、顧客の自動車に通信デバイスを取り付け、運転の日時や場所、速度、急ブレーキの頻度などをリアルタイムで把握・分析しています。
この分析結果を基に、安全な運転をされる顧客には割引を適用した保険プランを、リスクの高い運転をされる顧客にはピッタリの補償内容のプランを提供しています。これにより、「安全な運転=保険料の割引」というカスタマーサクセスが実現されています。
日本国内でも同様の試みがなされています。一部のカーシェアリングサービスでは、急加速や急減速の頻度に応じてポイントを付与し、そのポイントに応じた割引プランや特典を提供するシステムが稼働しています。
これらは、デジタル革新の一環である顧客データ分析が引き金となり、ビジネスにおけるパーソナライズを進化させている一例にすぎません。データをもとにした最適なサービス提供は、顧客満足度の向上とビジネスの成長の両輪となることを示しています。
まとめ
本記事で顧客データ分析の本質、分析方法、活用事例を学び、データ利用の視点を持つことで、ビジネスへの新たなアプローチを可能にします。
デジタル時代の成功はデータの理解・活用が鍵となります。
よくある質問
顧客データにはどんな種類がありますか?
顧客データには、主に属性データと行動データの2つのカテゴリがあります。 属性データは、顧客の氏名、メールアドレス、性別など、個々の顧客が持つ特定の属性や特徴に関する情報です。 一方、行動データは、顧客のウェブ閲覧履歴や購買履歴など、顧客が行った様々な活動や行動を時間の経過とともに記録したデータです。
デシル分析の目的は何ですか?
デシル分析の主な目的は、顧客層を優良から劣る層に分類し、特に高い価値を持つ優良顧客を特定し、マーケティング戦略をその層に集中させることです。例えば、100人の顧客を購買金額が高い順に10の等分に分け、各グループの購買金額が全体のどの程度を占めるかを算出します。その結果から、各グループの購買金額が全体に占める割合を知ることができます。